ホンダ・ゴリラは1978年に発売されたモンキーの兄弟車で、最大の特徴が燃料タンクの大きさ。モンキーの5リッターに比べて9リッターもの大容量となり、大きくなったタンクのためスタイルもモンキーより逞しいものになっていた。モンキーは2017年まで生産され続けた大ヒット作だが、ゴリラは一足早い2007年に生産を終了している。そのためモンキーより台数が少なく一部に熱心な愛好家が存在する。また、多くのパーツがモンキーと共用なのでカスタムベースとしても最適。ということで一時期盛り上がった4MINIブームの頃にはカスタムシーンを牽引する存在でもあった。近年はスーパーカブ人気に押され気味だし新型コロナウイルスの影響により4MINIイベントも開催されなかったから姿を見る機会がめっきり減ったが、先日開催されたことをリポートしたモンキーミーティングの会場で久しぶりに可愛らしい姿を見ることができた。ある意味ゴリラカスタムの王道をいく参加車を紹介しよう。
ノーマルでも逞しいスタイルのゴリラだが、こちらのカスタム車はどことなく可愛らしく感じないだろうか。可愛く見える秘訣はメタリックグリーンに塗装され、ゴールドのストライプで彩られた外装にもあるが、それ以上に効果的なのが全長だ。実にフレームを10cmほど延長して安定感をもたらし、さらに純正比16cm長となるスイングアームを組み合わせて合計26cmも長くされているのだ。オーナーの諸川大和さんは「可愛くレトロな仕上げ」を目指したそうで、長さを強調することでバイクらしさを追求しつつゴリラのサイズ感を失うことないカスタムとしているのだ。長くなったスタイルにはさらに秘密がある。延長したフレーム先端のネック部分を寝かせているのだ。これにより立ち気味な純正のスタイルから大きく印象を変えることに成功している。
ネックを寝かせてフロントフォークの角度を変えると、フレームを10cm延長していることもあってハンドルが遠くなる。そこでダックス用のハンドルをセットすることで違和感ないポジションとしている。これには全高の低さを演出する意味もあり、絞った形状はレトロさも生み出している。足元には4J×10インチのホイールを組み合わせて、110/80-10と太いタイヤを履かせた。チューニングマシンであると感じさせるワイドタイヤだが、そのままにはせずホワイトレターを自ら筆さしで施した。これもレトロさを引き出す演出だ。
まるで原寸大のプラモデルを組み立てるかのように好みのカラーリングにした外装もポイント。サイズが小さなモンキー・ゴリラだと抵抗なくカラーを変更できるし、部品も豊富だからアルフィン風のサイドカバーを組み合わせて上級モデルのようにも見せられる。上級モデルらしさは16センチ延長となるスイングアームを装着して、ロングホイールベースとしたことでさらに強まる。クランクケースカバーをポリッシュ仕上げとしてアルミのスイングアームやメッキのリヤショックともども輝く下回りとしている。カスタム車らしい風情と上級モデルのように感じさせてくれるポイントだろう。
可愛らしさと迫力を備えたスタイルらしく、もちろんエンジンもチューニングしてある。CD90のエンジンをベースにSP武川のシリンダーとピストンを使って111ccにまでボアアップしてある。さらに吸気はケーヒンCR26キャブとされ、マフラーは抜けの良いファルコン製。排気量アップだけでなく吸排気系を見直すことでスロットルレスポンスやピークパワーの向上も実現してある。長くなった分だけ重くなる車両重量だが、倍以上への排気量アップだから重量増を補ってあまりある動力性能となっているのだ。これらのカスタム&チューニングを自ら行えるところも4MINIの魅力。まさにプラモデル感覚で外装から動力性能まで思いのままにカスタムできる。改めてモンキー・ゴリラの楽しみ方を教えてくれた。