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ヤマハ・MT-07 ABS…….814,000円
MT-07の初代デビューは2014年8月。スタイリッシュなフォルムは当時の次世代モデルとして新鮮な輝きを放っていた。
何よりも衝撃的だったのは、ミドルクラスの魅力を遺憾なく発揮した軽量で扱いやすい乗り味。そして70万円を切る親しみやすい価格設定にあったと記憶している。
現在の価格は流石に80万円を超えたが、ABSが標準装備。カラーリング変更等を受けつつ熟成される中、今回はMT-09と共通イメージのコンパクトフェイスに一新された。
いわゆる第3世代MTシリーズ一連のキャラクターデザインを採用。プロジェクターLED式ヘッドランプと両脇のポジションランプが組み込まれた前照灯周辺は、エアロカバーとして前方から受ける走行風をタンク両脇に張り出したエアダクトに導く機能的デザインが考慮されていると言う。
またハンドルバーが変更され、シルバーのアルミ製テーパードパイプは、左右幅が32mm広くなり高さも12mmアップ。諸元上の全幅は745〜780mmに、全高は1,090〜1,105mmに変わっている。
前後ディスクローターも一新され、フロントブレーキはディスク径がφ282〜φ298mmにサイズアップ。リヤのディスク径はφ245mmを採用。ブレーキ力が向上されたのも見逃せないところである。
そして、ミシュラン製の前後タイヤもウェット性能が高められた新ラジアルを装着。その他メーターも一新されている。
ダイヤモンド式フレームや前後サスペンションは基本的に共通。オフセットされた270度位相クランク採用の水冷DOHC4バルブ直(並)列2気筒エンジンも同じショートストロークタイプの688cc。吸排気系やインジェクション制御の熟成で低速域でもより扱いやすいトルク特性が追求されている。
傑出した出来の良さ、冴えてる快速ミドルスポーツ
試乗は、フルモデルチェンジされた兄貴分のMT-09やTRACER 9 GTと共に開催された発表会。走行場所は袖ヶ浦フォレストレースウェイに限られた事を先ずはお断りしておきたい。
ホイール共々青いカラーリングの試乗車に跨がると、先ずはピタリと自分に程良いサイズ感が好印象。バイクを引き起こす動作や、車庫から出し入れする様な取り回しが軽快。何不自由なく気軽に扱える優しい感触はとてもフレンドリーである。
シート高は805mmで筆者の両足は丁度良くベッタリと地面を捉える事ができ、184kgの車重を支える事にもまるで不安は感じられない。
ザックリとした表現で恐縮だが、昔国内マーケットで人気だった400ccスポーツ並に気軽な乗り味が魅力的。
前モデルより上体の起きた自然体で乗れるライディングポジションも気楽に馴染め、操舵フィーリングもさらに軽快な印象である。バイクに股がったまま車両を前後させる扱いも容易だった。
豊かなトルクフィーリングを誇るツインエンジンは、ショートストロークらしい軽快な吹き上がりと共に、中低速域から粘り強い実に柔軟で扱いやすい出力特性を発揮。
操作の軽いクラッチをリリースした瞬間から、何不足のない適度に図太いトルクフィーリングでスタートダッシュは軽々と決まる。
跨がった時の軽快感や車体サイズの割に排気量がより大きいのではないかと思える程の豪快な加速フィーリングが楽しめる一方、サラリと余裕のあるクールな走りに徹することも自由自在。操縦性は実に柔軟で扱いやすい。
右手をワイドオープンすると、後輪が確実に地面を蹴りだす逞しさをキープしたまま、エンジン回転はレッドゾーンの始まる10,000rpmへと難なく伸び上がって行く。不足の無いハイパフォーマンスと伸びの良い爽快感はとても気持ち良いのである。
スポーティーなグッドハンドリングと扱いやすく十分に強力なブレーキ性能とのバランスも良く、サーキットを攻めるエキサイティングな走りも、気分良く平然と楽しめる。
ステップが接地する程のコーナリングも車体の安定感が高く、激しい走りも安心。ブレーキングしながらの倒し込みからアクセルをワイドオープンする立ち上がりに至る途中のライン変更も容易。
実際、ホームストレートでの加速力を除けばMT-09を追いかけ回せる実力に驚かされた。もちろん直線の加速力では及ばないが、ホームストレッチ400m区間での到達速度は175km/h程度を安定してマーク。
ちなみにローギヤでエンジンを5,000rpm回した時のスピードはメーター読みで42Km/h。6速トップ100Km/hクルージング時のエンジン回転数は4,200rpmほど。
日常の足代わりから、それこそ今回の様なサーキット走行まで、オールマイティに、なおかつ何不自由無く楽しめる豊かなパフォーマンスは優秀。全てに親しみやすい仕上がりは、改めて「傑作」と思える大きな魅力が感じられたのである。