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スズキ・SV650 ABS……738,720円
優美なフォルムで欧州市場でも好評だった“グラディウス”から「バック・トゥ・オリジン」をテーマに“SV”のネーミングが復活したのは、2016年のことでした。もともとスズキはVツインスポーツに積極的で、1000ccスポーツにも90度V型2気筒を積む「TL1000S」を1997年に発売しました。
その背景には、4気筒なら750ccまで、3気筒なら900ccまで、2気筒ならば1000ccまでOKという当時の市販車レースでのレギュレーションがあったのですが、“直4”で勝負するヤマハやカワサキに対し、スズキは不等間隔爆発を生むVツインはトラクション性能に優れ、なおかつ軽量スリムという利点を早くから見出し、ストリートにもフィードバックしてきたのでした。
「TL1000S」のストリート向けバイクとしてエンジンをダウンサウンジングし、1998年に登場したのが“SV”です。欧州仕様は650ccエンジンを積み、国内向けには400ccを設定。スズキは初モノを手がけるのが昔から得意ですが、楕円断面アルミトラスフレームもクラス初で、贅沢なアルミ製スイングアームまで備えていたから驚きます。ハーフカウルを装着する“S”もありました。
しかし日本では、スポーツバイクといえば“4発”で、Vツインスポーツは理解されにくい存在でした。その点、2気筒エンジンやトラスフレームは欧州では馴染みあるもので「SV650」は人気を集めました。
「エレガント&スポーティ」をコンセプトととして、2009年にフルモデルチェンジし“GLADIUS(グラディウス)”に。この頃は2006年から登場した「GSR600」や「GSR400」もあったので、4気筒派には“GSR”も選べ、2本立てになっています。
トレンドを追わない、バイク本来のスタイルの良さ
シンプルで軽量なVツインスポーツとして原点回帰を果たし、フレームやエンジンを刷新。車名も“SV”に戻したのは2016年のことでした。この時点で、初期型からの累計で全世界で約41万台生産したという実績があり、筆者の取材メモにはチーフエンジニア(開発責任者)の言葉が残っています。
「我々にとってとても信頼のできるエンジンで、長所も弱点も知り尽くしています。このVツインエンジンの長所をいかすことで、バイクに乗る楽しさ、ワクワク感を多くの人に伝えたい。そう考え、今回の開発・発売に至りました」
流行やトレンドを追いかけるのはもう辞めよう、オートバイ本来のスタイリングの良さを表現しようと、ヘッドライトは異形をやめて丸型に。フューエルタンクカバーと同色のラジエターシュラウドも取り外されました。
跨ってまず感じるのは、400オーバーのバイクとは思えない圧倒的なスリムさと足着き性の良さ。シート高785mmは「グラディウス650」と同じ値ですが、跨ぎ幅という点からフレーム幅が極限まで狭められ、同じシート高でも足着きの良さが一段と良くなっています。
また、ニーグリップがしやすいのも付け加えておきましょう。ライダーが触れる燃料タンク部の収まりが良く、スリムな形状になっているからです。
両足を出しても、カカトまで地面に届き、足着き性に優れます。ビギナーや女性、小柄なライダーにも安心ですし、取り回しで苦労しないでしょう。ライディングポジションもアップライトでゆとりがあるのですが、コンパクトです。