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雨ならラッキー!
東海道4日目の朝、宿の窓から覗くとけっこう雨が降っている。ラッキーだ。
いや、雨が嬉しいわけじゃないが、それでも雪にならなきゃ儲けモン……と考えるのが真冬のチキンライダーというものだ。前夜、関東に大雪予報が出ていただけに安堵もひとしお。宿を走り出して磐田市街をさらに西へ、浜松をめざす。
昨日はフューエルメーターの最後の一目盛りがピコピコしたまま丸一日走ってたから、さすがに今日はすぐにもガス欠するだろう。
編集のヒゲ山田モジャオくんは、「ガス欠地点の名物なら経費で食っていい」と言ってくれている。冬だからあんまウナギ気分は盛り上がらないが、とっとと浜名湖あたりでガス欠してもらい、ウナギを食って帰りたい。
国道1号浜松バイパスで天竜川を西へ越え、県道312号へ。これが東海道とほぼ重なる旧国道1号で、松並木などの江戸の街道の面影をそこかしこに残している。
雨のガス欠、フィナーレはおあつらえ向きに
突然、わずかにスロットルレスポンスが鈍くなった。パーシャルを保っていたスロットルを脊髄反射的にガバ開けしたが、エンジンは反応しない。ぽてぽてぽてと気のぬけた音をたてて減速が始まった。カタカタ、ストンとエンジンが止まるまでの距離はほんの100mほど。不快な振動もなく、なかなかエレガントなガス欠ぶりだった。
日本橋から4日間の長旅は、雨の浜松市街でフィナーレ。トリップメーターは293.0kmを指していた。最終日の走行はわずか14.2km。フューエルタンク容量が5.6lだから、東京・日本橋からの通算燃費は約52.3km/lということになる。
目の前にあったガソリンスタンドへバイクを引きずり込んでそのまま給油。
カタログで燃費の数値をみればわかること、誰もが知ってるつまらない事実のはずなのに、実際に自分の手で小さなフューエルタンクを満たし、わずかな油代を支払うと、たったこれっぽっちの臭い油だけで、これだけの長距離を、これだけのスピードで、人と荷物を運べるガソリンエンジンの逞しさにあらためて驚かされた。
無事にガス欠もしたことだし、なにしろ寒くて狂いそうだし、とっとと東京に帰りたいが、かといって、ガス欠地点の名物が食える権利をむざむざ放棄するのももったいない。
浜松市内にはウナギの店が多いが、あいにくこの時間帯にはどこも開いていない。その代わり、ガソスタの近所に「うなぎいも」という謎の芋を食わせるカフェがあると聞きつけ、そこで何かしらウナギ感のあるものを食って帰ることにした。
浜松の新名物「うなぎいも」とナカタジマート
訪れたのは浜松市南区卸本町にあるナカタジマート。ショップ内にカフェを構え、テイクアウトやオンライン販売にも対応している。
浜松あたりは古くからさつま芋を名産としてきた土地だ。最近では、養殖の盛んなうなぎの骨や頭など、それまで捨てていた部分を肥料に使って作ったさつま芋を「うなぎいも」として売り出している。
ナカタジマートのイチオシも、やはりうなぎいものスイーツ。暖かい店内で焼きいもを食べて腹がふくれると、ど~してもソフトクリームを食べたくなって、芋ソフトクリームにもトライ。間違いなくうまかったが、そっちはやはりめちゃくちゃ寒かった。
東海道ガス欠チャレンジ、モンキー125編は、浜松の新名物、ねっとり甘いうなぎいもで無事めでたく閉幕。タカハシはただちに雨の浜松を発ち、東京をめざした。ところが帰りの道中は、さらに激サムで超過酷、じつは往路よりだいぶキツかったくらいだが、それはまた、別の話。