パワフルさを備えた”コンパクト系”ビッグスクーター

【試乗レポ】かわいい、軽い、速いで選ぶなら車重160kgのベスパ・GTSスーパー300

ベスパ伝統のスチールモノコックボディに、278.3 ccのピアジオクォーサーエンジンを搭載。国産車と比べて格段に軽い160kgという車重は、市街地走行で有利なのはもちろん、ハイスピードでの巡航もそつなくこなせる実力を備える。(REPORT:近田 茂/PHOTO:山田俊輔)

※2018年02月02日に掲載した記事を再編集したものです。
価格やカラーバリエーションが現在とは異なる場合があります。

Vespa GTS Super 300 Quasar……698,000円

ピアジオグループが展開するイタリアのベスパ。その中で最もスポーティな存在として君臨するのがこのGTS スーパー300 である。先日鮮やかなグリーンの150 ccモデルについて試乗レポートを報告済みだが、こちらはその兄貴分というわけ。つまり、よりアクグレッシブな存在としての個性を主張できる1 台なのである。
細かい事を言わなければ、スタイルも大きさも同じ、エンジンの排気量だけが異なると思っても良いだろう。より新しいのはi-get エンジン搭載の150 の方。GTS スーパー300 は従来からあるQuasarエンジンの制御系に新デバイス(ASR トラクションコントロールシステム)が取り付けられているのが特徴。ちなみにスタート&ストップ(アイドルストップ)機能は搭載されておらず、150のみの装備となる。

ジェラシーイエローをまとった試乗車は、クロームのリヤラックと、小さめなフライスクリーンが装備されていたが、これらはオプション装備。なので、外観デザインは150 と全く共通といえる。150 ではスペランツァグリーンの鮮やかな色合いが魅力的だったが、今回のGTS スーパー300のボディカラーはジェラシーイエロー。クリアで艶を出さず、あえて細かな凹凸感を残した艶消し処理で、国産車ではあまり見かけない色ではあるが、さすがイタリア人のセンス。不思議と都会の街並みにも馴染んでしまう。ちなみにカラーバリエーションは例のスペランツァグリーンとモンテホワイト、チタングレー(受注生産)の4タイプだ。

基本的なデザインは150 と共通と書いたが、細かい点まで着目すると異なる部分はいくつもある。その一つがマフラーである。それぞれの排気量に合わせた専用の内部構造となっているのはもちろんだが、クロームのヒートガードデザインも違うので、一目で区別はできる。
また車格感はほぼ一緒だが、触れた瞬間に気づくのはGTS スーパー300 の方が重い取り回しであるということ。150 は軽量化も徹底された新設計エンジンを搭載しているが、300 はそれとは別物でエンジンそのものが重いのである。燃料タンク容量も7Lの150 に対して300 は8.5Lと大きく、乾燥車重は160kg と20kg増。……と聞くと重くてマイナスな印象にとられがちだが、じつは20kg増程度で抑えているのがすごいところ。国産250ccクラス(いずれも装備重量)の相場が180kg〜210kgであることからも別格の軽さに仕上げられている。この軽量ボディこそがGTS スーパー300の専売特許と言えるのだ。

そしてこの軽量ボディを最大限に活かすのが、ピアジオ・ベスパブランドの250 /300ccクラスの車体に搭載されるクオーサーエンジンである。
吸排気効率の最適化やフリクションの低減などを測ったインジェクション仕様の278.3 cc4バルブ単気筒エンジンは、21HPの最高出力(GTS スーパー150は14.4HP)を7750rpmで発揮。最大トルクは22Nm/5000 rpm。右手をひと捻りした時の俊敏な加速性能は痛快そのものだ。

混合交通のなかで走ると、自分の前方には常に安全に走れるスペースを確保し続けたいわけだが、好都合なポジションへと瞬時に移動していける動力性能の高さはとても有り難い。高速道路での100km /h巡行に必死な小排気量車とはランクの異なる余裕が感じられ、長距離でも快適なクルージングを可能としている。それはタンデムランでも頼れる存在であることは間違いない。

ディテール解説

ベスパの伝統と言える片支持ホイール。道が悪くパンクが多発した時代には、スペアとの交換作業が楽に行えるメリットを誇った。
フロントは油圧モノショックを採用したリンクアームサスペンション。いわゆるトレーリングリンク式だ。
クォーサーエンジンに採用されているマフラー。メッキ製ヒートガードも300専用のデザイン。
とても上質なアルミ製ピリオンステップ。リンクを介して支持されボディ面に綺麗に格納される。
オプション設定のフライスクリーン。ミニサイズながらプロテクション効果はなかなか。大きなウインドスクリーンもある。
ヒップコンシャスなデザインはベスパならでは。オーソドックスな優しいフォルムには親しみを覚える。緑枠ナンバーは自動二輪車の証。
シンプルで見やすいアナログ表示のスピードメーター。内側の目盛り(オレンジ色)はマイル計。時計や燃料計等は液晶デジタル表示。 
上がASR 、左下がモード切替スイッチ。若干握りの太いグリップラバーにはベスパのマークが刻まれている。
容量は小さいが使いやすい位置にあるフロントボックス。車載工具の収納や、USB 給電ポートもある。
シート下収納はヨーロッパ車に多い浅めの作り。一般的なジェットヘルメットは入らないものが多いが、日常的な携行品を収納するには使いやすかった。

足つきチェック(ライダー身長170cm)

シート高は790mm 。ご覧の通り両足の踵は浮く。フットボードの幅もそれなりにあるがスリムなシート形状のお蔭で足着き性はそれほど悪くない印象。
【SPECIFICATIONS】
●ENGINE
エンジン Quasar 4ストローク水冷単気筒 SOHC 4バルブ
総排気量 278cc
最高出力 21HP(15.6kW)/7,750rpm
最大トルク 13.5Nm/6,750rpm 【22Nm/5,000rpm】
燃料供給方式 電子制御式燃料噴射システム
冷却方式 水冷
トランスミッション 自動無段階変速(CVT)

●CHASSIS
サスペンション(前) 片持ちリンクアーム油圧式サスペンション
サスペンション(後) プリロードアジャスタブル デュアルアクション ツインショックアブソーバー
ブレーキシステム 2チャンネル ABS
ブレーキ(前) 油圧式 220mm ディスクブレーキ
ブレーキ(後) 油圧式 220mm ディスクブレーキ
タイヤ(前) 120/70-12"
タイヤ(後) 130/70-12"

●DIMENSIONS
全長 / 全幅 / 全高 1,950mm /755mm/ 1,190mm
ホイールベース 1,375mm
シート高 790mm
燃料タンク容量 8.5(±0.5)L
車両重量 160kg

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著者プロフィール

近田 茂 近影

近田 茂

1953年東京生まれ。1976年日本大学法学部卒業、株式会社三栄書房(現・三栄)に入社しモト・ライダー誌の…