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単なる配達専用機じゃなかった!? スーパーカブ110プロの実力試乗レポ|Motor-Fan Bikes[モータファンバイクス]
抜群の完成度に累計1億台も納得
のっけから結論を言ってしまうとスーパーカブの仕上がりは、50cc、110ccともに相変わらず素晴らしかった。
先月(2017年)、同車は世界累計生産台数でなんと1億台を達成。そのニュースは世界中を駆けめぐった。初代C100のデビューは1958年の事。既に1961年からは台湾でのノックダウン生産が始まり現在は世界15カ国16拠点で生産されている。来年は生誕60年。バイクに限らず、工業製品の中でこれほど尊敬の念を感じられる逸品はそう多くはない。
たくさんのユーザーを満足させる必要十分な機能的魅力と確固たる高い信頼性が培われて来たからこそ、今も変わらぬ人気を保ち続けていられる。世界のホンダブランドを支え続けるまさに傑作モデルなのだ。
丸型に戻ったヘッドライトが大好評
さて新型は、丸形ヘッドライト等往年のスーパーカブを彷彿とさせるデザインモチーフを随所に採用しながらも、全体的にはマイルドで優しい雰囲気。優美な流れを感じさせる微妙な三次元曲面を駆使したスタイリングは従来までのビジネスモデル然とした質実剛健ぶりとは一線を画す仕上がり。ヘッドライトがLED化されて新時代のモデルであることもハッキリと主張している。
それでも見た目の印象や押し歩いた時、跨がった時等の感触の全てがまぎれもないスーパーカブそのものである点に安心感を覚えた。決して大き過ぎない手頃な車格。乗り降りのし易さ、クッションにたっぷりとした容量を感じられ座り心地の良い落ち着けるシート。大荷物も難なく運べる堅牢で頼り甲斐のあるリヤキャリア。レッグシールドとフルチェーンケース。そして踏み返しのついたシーソー式チェンジペダルはビジネスシューズを痛めることなく、誰にでも簡単かつ気楽に乗れてしまえるのだ。
50と110の車重差はわずか3kg
スーパーカブ50とスーパーカブ110は基本的に車体一式が共通。タイヤサイズやギヤレシオ、排気量に違いがあり、車重も3 ㎏差で96と99㎏。水平近くまで前傾した、いわゆる横型のエンジンは空冷OHC。いずれもロングストロークタイプの単気筒で、電子制御式の燃料噴射装置がマッチされている。
各車の乗り味の違いは、タイヤの太さと絶対的トルクの差からもたらされるが、基本的には共通。転がりは軽く、前後17インチホイールの回転慣性が効果的に作用する直進安定性と素直な操縦性がとても気持ちよい。
絶対的に非力なスーパーカブ50はエンジンを高回転域まで使う傾向が多く、シフトチェンジで間合いを図らないとギクシャクすることもあるが、噴き上がりの伸びの良さは抜群。一方スーパーカブ110はトルクにユトリがある分、一般的な街中走行ではアクセルの開け加減もセーブされ、シフトもスムーズ。シフト頻度も少なく実際、おおらかかつ楽ちんな気分で走れてしまう。
筆者は以前スーパーカブ90を30年程愛用していたが、正直またコイツが欲しくなってしまった。なぜなら、高速に乗る必要がないなら何不自由のないパフォーマンスと快適な乗り味。その万能ぶりがとても魅力的だからである。
及川ルイ子’s Impression
「スーパーカブ50、スーパーカブ110ともに、走り始めてすぐに感じられたのは扱いやすさ。安定感があり、低い速度でもフラフラしない。渋滞でのストレスが大きく軽減されるので、タウンユースにはとても助かります。シートの座り心地がいいのもポイントです。お尻がピタッと安定して、少々の振動があっても姿勢が崩れることはありませんでした。余計な力が入ることもなく、体は常にリラックス。従来よりも滑らかになったという自動遠心クラッチの変速時のフィーリングは、『ガチャッ』から『カチャッ』」と衝撃が抑えられたような印象。排気量に余裕のあるスーパーカブ110で特に感じられ、伸びやかなエンジンと相まって快適はこの上なし。ツーリングユースも大いにありだな~と想像がムクムク膨らむばかり。身近な相棒として本気で手に入れたいと思った次第です」
カブ用マフラーでおなじみ、「BRD」代表びとっち’s Impression
「新型スーパーカブ110は『日本向けに作っているので気合いが入ってますよ!』と昔からミニバイクレースも楽しんでいるホンダの担当研究員が言う。走り出してすぐに感じるのはパワーとトルクは十分に従来モデルと同じように確保されていることだ。排気ガス規制が厳しくなって、パワーダウン方向にあるにも関わらずだ。しかもエンジンが静かでなめらかに回っていることも指摘しておきたい。ギヤチェンジのシフトフィーリングもいいタッチになっている。気が付きにくいことかもしれないが、ハンドリングが軽快になっている! 従来のスーパーカブ110を通勤に使うわたしには、よ~くわかるよ(笑)。メーターパネルやハンドルカバー形状から小型になって軽量化されたからかなと思ったが、実はフロントフェンダーやフォークカバーには整流効果を増す整形がされているという。その効果は40~50km/hくらいでも体感できるものだそうだ。スーパーカブ独特の大きなレッグシールドもレーシングマシンのカウリングと同じように風洞実験による整流テストで形状が決められるというほど重要なパーツだそうだ。日本向け専用モデルの「メイドインジャパン」の新型スーパーカブはデザインといい性能といい、本当の意味で日本人好みになったと思う」