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ガスガス・EC300……1,274,000円(消費税10%を含む)
世界のハードエンデューロで活躍しているガスガスのモデル。その中でも2サイクルエンジンを搭載した上級モデルがこのEC300である。
この2サイクルエンジン、セルスタートは勿論のこと、電子制御式燃料噴射、そしてエンジンオイルは分離給油となっている。2サイクルでの燃料噴射はトライアルマシンでも増えてきているし、キャブレターよりも正確に細かい制御が可能で排気ガスもクリーンとなる。
機械式のキャブレターと違い、電子制御なので当然と言えばその通り。電気なのでトラブルとどうしようもないが、信頼性と耐久性はもう問題なくなっているわけだ。そして2サイクルのレーサーでは混合が当たり前だったのだが、低回転ではオイルが多い状態だし、カーボンも発生しやすい。しかし分離給油では回転数や負荷に応じてオイル量を制御できるので、エンジンにとっては最適な燃焼を得られるというわけだ。
オイルポンプなど部品点数は増えるので、トラブル箇所が多くなったり重量増となる、と考えることもできるけれど、それも性能アップが得られる方が重視された結果。勿論信頼性や耐久性には問題無し。混合燃料を作る手間も省けるし、ライダーにとっては良いこと尽くめとなるわけだ。
さて軽やかにスタートすると、2サイクルの300ccのトルクは非常に高く、あっという間にブレーキングという感じ。その吹け上がりはシャープなものだが、モトクロッサーのものとは違いシャープな中にもフラットな上昇となる。つまりいきなり吹け上がってフロントがまくれてくるような事は無く、落ち着いてアクセルを開けられるもの。最近の2サイクルトライアル車の吹け上がりの、一段速くしたようなと言えば分かってもらえるか?
そして2サイクル特有のある回転から一気に吹ける事はなく、4サイクルの様にアクセル開度に忠実なのだ。アクセル一定だと勝手に吹けてしまう2サイクルではなく、一定回転を維持してくれるわけ。惰性で回転が上がらず、あくまでもアクセル操作と一致している。これは燃料噴射のお陰なのだろう。
ライダーの意思通りに走ってくれるから、結果乗りやすいんです。ただし、そうは言っても2サイクルの300ccなので、そりゃパワーもトルクも強大で活かせるライダーには高い戦闘力を発揮するけど、そうでないライダーには暴れ馬になる可能性がある。サスペンション、セッティングの違いなのかエンジン特性の違いが影響しているのか、なぜか他の機種よりも硬く感じず細かいショックが腕に来なかった。決して柔らかい訳では無いんだが、扱いやすく感じられてより乗っていて楽しめた。
タイヤのタイヤのグリップも良くエンジン回転低めでも粘るので、ヌルヌルと滑りやすい斜面でもスルスルと登ってくれたし、斜面にある丸太を超えるのも楽にできた。勿論他のマシンでも可能なのだけど、自分にたまたま合っていたのかもしれないが。このEC300、仕様は2022年モデルと変わっていないとはいえこの扱いやすさは大きな魅力。次期モデルがどうなるのか興味津々であった。
車重は半乾燥105.8kg(装備で112kgくらいか)は軽いのではあるが、それでもKTMの同じモデルよりは重い。むむ軽さではKTMに劣るが、走り出すと全く気になる事は無いので気にする必要は無い。
値段は127万4000円と他メーカーよりだいぶお値頃となっており、内容からしたら超お買得だ。レースには出ないけど、楽しく遊びたいライダー、レースでガンガン走りたいライダーにもお薦めのマシンでした。
足つき性チェック
ディテール解説
足つき性チェック(ライダー身長172cm/体重85kg)
ガスガス・EC300 主要諸元
エンジン :水冷2ストローク単気筒 総排気量 :293.2 cc 始動方式 :セルスターター式 変速機 :6速 燃料供給方式 :Dell’Orto 製 EFI(TPI)スロットルボディ 39 mm Fフォーク :WP 製 XPLOR 48 倒立フォーク Φ48 mm Rショック :WP 製 XACT リンク式 モノショック タイヤF/R :90/90-21” / 140/80-18” 車輌重量 :約 105.8kg(半乾燥) ※競技専用車輌
ライダー紹介
村岡 力
1956年生。
70年代スタントマンから雑誌業界へ入り、ずっとフリーランスのライター&カメラマン。2輪メインですが4輪もし時々航空関係も。モータースポーツは長年トライアル1本で元国際B級。現在は172cm85kgの重量級。業界ではジッタのアダ名で通ってます。