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スズキ アヴェニス125……284,900円(2022年10月21日発売)
アヴェニス125専用ECUでスロットル開け始めが元気良し!
インドでは2019年12月から販売されているアドレス125(インドではアクセス125)は、欧州での最量販車である。これをベースにスポーティなボディを与えたのがアヴェニス125だ。インドでは2022年1月にリリースされ、日本では同年10月21日に発売された。
シャシーは、大径の丸パイプで構成されたアドレス125のアンダーボーンフレームをベースに、スポーティなスタイリングに合わせて一部を変更。ホイールはフロント12インチ、リヤ10インチで、標準装着タイヤの銘柄までアドレス125と共通だ。
エンジンは、生産終了となったスウィッシュとボア×ストロークが共通の124cc空冷SOHC2バルブ単気筒で、最新の排ガス規制をクリアしながら最高出力は8.7psを公称する。ちなみに、通勤快速の名を欲しいままにしたアドレスV125がデビュー時に11.4psだったことを考えると、度重なる規制強化でスズキの原付二種4ストスクーターのパワーは約24%もダウンしたことになる。
まずはそのエンジンから。最高出力や最大トルク、それらの発生回転数はアドレス125と共通だが、「加速性能にこだわったセッティング」とするため、ECUはアヴェニス125専用とされている。今回、アドレス125と同日に乗り比べることができたのだが、その説明を聞いたのは全ての撮影が終わったあとのことで、試乗中はアヴェニス125の方がスロットル開け始めのレスポンスが若干いいな、と感じていたのだ。
発進加速については、同じ原付二種スクーターでもパワフルな水冷勢に大きく遅れを取るかと思いきや、車重が107kgと軽いので、8.7psというイメージから受ける印象以上に元気がいい。サイレントカムチェーンを採用しているとはいえ、特にスロットルを大きく開けている際はやや騒々しく感じるが、これはすぐに慣れるだろう。動力性能としては十分以上であり、交通量の多いバイパスや勾配のきつい峠道でもあまり不足は感じなかった。
フロントタイヤの指定空気圧まで変えてアドレスと差別化
先にも記したとおり、今回の試乗はアドレス125と同日に行ったのだが、エンジンの差よりも驚いたのが両車のハンドリングの違いだ。
まず、リヤホイールが10インチと小径なのは、シート下のトランクスペースや燃料タンク容量を確保するためだろう。そして、実際に走らせてみると、他の原付二種スクーターよりも明らかに低重心なことに気付く。スズキはおそらく、操縦安定性も含めてリヤ10インチを選択したに違いない。
こうしたベースとなる部分はアヴェニス125、アドレス125とも共通であり、そのうえで前者の方が明らかに前輪荷重の高いスポーティなハンドリングとなっているのだ。アドレス125はというと舵角の付き方がわずかに穏やかで、操縦性はイージーと言えるだろう。果たしてこの差はどこから生まれるのか。キャスター角26°30′、トレール89mm、ホイールベース1265mmは両車共通であり、タイヤ銘柄も同じ。となると、10mm違いのシート高と、着座位置(座面がフラットなアドレス125に対し、アヴェニス125は中央にストッパーあり)の差、そしておそらくサスセッティングなどが影響していそうだ。
なお、フロントタイヤの指定空気圧が両車で微妙に異なる(アヴェニス125が175kPa、アドレス125が150kPa)ことに気付いたので、試しにアドレス125の方を175kPaまで上げてみたが、アヴェニス125のようなスポーティなハンドリングに近付くことはなかった。とはいえ、指定空気圧を変えてまで乗り心地や操安性で差別化を図ってきたことに感心しきりだ。
ブレーキは、フロントがφ190mmソリッドディスクとニッシン製シングルピストンキャリパーの組み合わせで、リヤはφ120mmのドラムだ。左レバーを引くと前後が連動するシステムを導入しており、左レバーにはロック機構がある(アドレス125にはない)。制動力やコントロール性はこのジャンルとしては平均的で、ハーフウェットの路面でも安心して減速することができた。
国内メーカーの原付二種スクーター、アンダー30万円という条件の中で最もスポーティな現行モデルがこのアヴェニス125である。USB電源ソケットが標準装備されていたり、フル液晶メーターの多機能ぶりなどを鑑みると、コストパフォーマンスの高さも見逃せない。