荷物を濡らさずに運べるデカい箱、雨の日に心強いスクリーン、キャンプ道具もありえないほど入る!  意外と楽しい変わり種系、ピアッジオ マイムーバー試乗

バイクブームと言われるなか、ビジネス用も着実にセールスを伸ばしています。石畳も残る欧州ではスリーホイーラーが根強くユーザーに支持され、ヨーロッパブランド「ピアッジオ」からは3輪の“働くバイク”がラインナップされています。日本の都市圏で使うと、どうでしょう。ホビーユースでも意外と楽しい気がしてくるではありませんか。

REPORT●青木タカオ(AOKI Takao)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

ピアッジオ Mymoover(マイムーバー)……913,000円

年末年始になると、稼働率が上がるフードデリバリー。そんなシーンにも大活躍してくれそうなのが、ピアッジオのMymoover(マイムーバー)です。

まず見てわかる通り、リヤに2つ、合計3つの車輪を持つスリーホイーラーとしているのが大きな特徴。

後ろ半分はほとんどが荷物を入れるトップボックスといった印象で、デリバリーバイクとして頼もしい“働き者”であることがわかります。

積載能力はトップボックスだけで261リットル、車体全体で60Kgを誇り、大きな荷物も収納可能としました。スポーツバッグも2つくらい入ってしまいそうです。

ラゲッジケースが肝心と言わんばかりに、もっと写真をお見せしましょう。ネットでスペースを区切れば、上下のスペースを有効に活用することもでき、使い勝手も良さそう。

上面から後部にかけてリッドが大きく開き、収納物の出し入れもしやすい。ダンパー機構も備わっているので、ゆっくりとリッドが開閉してくれるのも秀逸です。

二輪の域を超える積載力!

フロントにもラックがあり、最大積載量20Kgとまた結構な積載力。落ちないように両側面と後方車体側にラックも備わり、固定がしやすくなっています。

ビジネスユースをとことん追求しているのでしょう。さらに、レッグシールドにはA3サイズのセンターバッグが取り付け可能となっているから驚きを隠せません! シートに跨りながら、書類や伝票をさっと出し入れでき、利便性もよく考慮されているのです。

スマートフォンはもちろん、お仕事によっていろいろな端末を使うはず。USB充電ポートも備わっているから言うことありません。

良好な足つき性

足つき性が良いことも跨ってみるとわかりました。身長175cmの筆者だと、両足をおろしてもカカトまで地面に届きます。シート高は760mmと低く、車両重量は200kgジャスト。重い荷物を積んでも、両足で踏ん張れそうです。

信号待ちや一時停止などでは片足でスッと停まることができます。地面に出した足の方へ二輪のように車体がわずかに傾くので、なおさら足つき性が良くなります。

ホイール径はフロント16インチ、リヤ12インチ。大きなラゲッジケースが乗車中は背中に触れているものの、その収納力を考えればライディングポジションに不満はありません。今回、ビジネス用途としては若干長いと思われる片道30kmを走りましたが、トップボックスが背もたれにもなって疲労感が少なかったことも報告しておきます。

車体が傾き走りは軽やか!

ライダーが着座する車体側が傾斜し、旋回時は二輪のようにバンクさせて曲がることができるスイング機構を持つから走りも軽快です。バンク角は最大で片側45度と、ライディングも楽しいではありませんか!

肝心なことをまだ言っておりません。エンジンは水冷4ストロークSOHC4バルブの単気筒125㏄。ボア・ストロークは52×58.7mmのロングストローク設計とし、低速で力強く、積載時もしっかりと加速する頼もしい出力特性になっています。

オートマチックCVTは発進時も滑らかで、スロットルレスポンスがダルすぎて嫌になるなんてこともありません。交通量の多い国道も利用しましたが、クルマの流れにストレスなく乗って走行できましたので、動力性能も申し分なしです。

風防のおかげで快適

小雨も降る中、ウインドシールドに助けられ、コンフォート性も高い。前後240mmのディスクローターをシングルで装備するブレーキは連動式で、制動力やコントロール性に不満はありません。

車体が傾くチルト機構をロックするシステムとパーキングブレーキを備えているので、スタンドを使うことなく駐車させておくことができるのも非常に便利です。

郊外に出ると、このまま山の中へ入ってキャンプを楽しむのもいいかもしれないと予感させます。二輪車では持ち運べない装備で、より豪華にキャンプ重視というのも面白いかもしれません。ビジネス用途だけでなく、長距離ランナーにもなりかねないのです。

また、非常時に救援物資を運ぶのにも役立ちそうですし、変わり種の愛車とすれば、さまざまな場面で活躍しそうです!!

マイムーバー ディテール解説へ

大径16インチの10本スポークホイールに、240mmディスクローターと2ピストンキャリパーを組み合わせたフロントブレーキをセット。落ち着いた走りを実現しています。

ヘッドライトを低い位置に備え、フロントラックに荷物を積載しても被視認性を確保。ウインカーも同様に、見えやすくローアングルに構えました。

左に指針式のスピードメーター、右に液晶ディスプレイを配置したインストゥルパネル。バーグラフ式の燃料計や時計もあり、機能は充分です。

シンプルなスイッチボックスで、操作性は通常の国産スクーターとさほど変わりません。ハザードスイッチも備わっています。

スクーターとして使うなら欠かせないコンビニフックもあり、手提げ袋などを吊るすこともできます。

大きなトップケースがあるため乗車姿勢は限られてしまいますが、ラゲッジボックスが背もたれになり、窮屈ではありません。

キーロックを解除するとシートが開き、半分隠れていた給油キャップにアクセスできます。

大きな段差に乗り上げても、踏ん張りの効くリヤショックが衝撃を収めてくれました。

12インチのリヤホイールは見た目にも上質感があり、ビジネスユースでもオシャレでありたい企業やショップに選ばれそうです。

主要諸元

エンジン:4ストローク 水冷単気筒 SOHC 4バルブ
総排気量:124 cc
ボア × ストローク:52 mm × 58.7 mm
最高出力:8kW(10.7HP)/ 8,750rpm
最大トルク:10Nm / 5,250rpm
燃料供給方式:電子制御燃料噴射システム
始動方式:セルフ式
トランスミッション:オートマチック(CVT)
クラッチ:自動遠心クラッチ
フレーム:スチールパイプフレーム
ブレーキ(F):油圧式Φ240 mm ディスクブレーキ
ブレーキ(R):油圧式Φ200 mm ディスクブレーキ
タイヤ(F):90/80-16”
タイヤ(R):90/90-12”
全長:2,155mm
全幅:795mm
全高:1,690mm
シート高:760 mm
ホイールベース:1,380 mm
車両重量:200Kg
燃料タンク容量:10 L
乗車定員:1名
生産国:イタリア
最大積載量:トップボックス:60Kg、フロントラック:20Kg、レッグシールドバッグ:5Kg
※それぞれの数値は技術的に算出されたもので、車体合計の最大積載量は60Kgです。
メーカー希望小売価格:913,000円(消費税10%込)

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著者プロフィール

青木タカオ 近影

青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。最新バイク情報をビギナーの目線に絶えず立ち返…