1982年ホンダ・リード｜”近所の足”から脱却した、 ホンダ初のGTスクーター！

注1）スポーツイメージと聞くと、DJ・1を思い出すが、同車は当初ファッションスクーターという打ち出しだった。また、G’の元となったパックスクラブは、元はカジュアルスクーターのイブであり、こちらも80年代後半にスポーツ路線に舵を切った経緯がある。

日常使いと走りを両立したスクーター界の「ＧＴ」

リードは1982年から現在までその名が続く、ホンダの代表ブランドだ。80〜00年代を通し、ラインナップのなかでは比較的大柄なモデルで、当初から一種（50㏄）、二種（80㏄〜）両方の設定があった。発売初めから90年代直前まで、リードはホンダスクーターのスポーツイメージを担ったモデルだった（注1）。

リードが世に出たのは82年。現在の10倍近い台数の原付モデルが出荷されていた、バイクブーム真っ只中の時代だ。ホンダのロードパル、ヤマハのパッソルが切り拓いたファミリーバイクカテゴリーに、ホンダはタクトを80年に投入。小型で軽量、ステップスルーで初心者でも扱いやすいタクトはすぐにホンダスクーターの屋台骨となった。一方で、より大柄で車体がしっかりしたモデルを求めるユーザーの声に応えて登場したのがリードである。

リードは当時のカジュアルラインであったタクト、イブ、パックスといった小型軽量エンジン（AF03Ｅ系統）搭載モデルとは違って、80㏄クラスと各部を共用する新エンジン（AF01Ｅ系統）を採用。初めからパワーアップに対する拡張性があり、80年代のホンダスクーターの中でも、トップクラスのパワーを発揮していたのだ。

当時のカタログ（初期型）を見てみると、人気テニスプレーヤーを起用し、スポーツイメージを強調しつつ、中距離移動も快適な「ＧＴ（グランツーリスモ）」的要素を持っているモデルであることをアピールしている。そのことからも、当時のホンダがカジュアルラインと違う路線を訴求していたことが分かる。

リリース翌年には、シリンダーポート形状や排気系を変更した「リードＳ」が登場。その後もリードSS、リードＲと、スポーツイメージを強調するかたちで進化を遂げ、89年に高級志向に大きく路線変更するまで、リードはホンダスクーターのスポーツイメージの一翼を担っていた。

だが、実際に乗ってみると現代のスポーツ性とはかなり異なるハンドリングに驚く。ハーレーのようなクルーザー的な乗り方というのだろうか、ハンドルに荷重をかけない乗り方がもっともハマる。ひらひらとコーナーをさばくというより、緩やかなコーナーを駆け抜けるほうが快適。重心は常に腰にあって積極的な体重移動しなくても曲がる仕様になっている（もちろんそれ以外の乗り方でも曲がるが）。ある意味乗用車っぽい操舵感ともいえ「車と一緒に所有しても違和感ないでしょ？」っていう、80年代にアピールしていた車とバイク両方を所有する「６輪生活」をフォローする乗り味に仕上がっている。

IMPRESSION

「車格は50ccと同じでシートとタイヤサイズが異なる。ステップも広く大柄な男性が乗ってもゆとりあるポジション。ハンドリングは、当時こそ安定感ある乗り味だったろうが、12インチさえ小径扱いとなった現代からすれば安定感よりもクイックさが際立つ印象。エンジンは、発進からグっと車体を押し出す力強いトルクが感じられ60km/h付近まで勾配問わず一定のトルクが淀みなく湧き出てくる。エンジン回転の上昇を待って加速するが、レスポンスが悪いと感じる場面は少なかった。最高速は75km/h程度」

SPECIFICATIONS

◀︎1983年リードR

最高出力をアップさせた「リードS」。エアロフィルムをより強調し、フロントディスクブレーキを採用。ホンダスクーターで初めて6psを超えた「リードSS」。さらに6.4psまでパワーアップしたエンジン、エア封入式ダンパー（フロント）などを採用した「リードR」が登場。80年代を通し、リード＝スポーツイメージだったのだ。

そうした当時のホンダが提案していた価値観や四輪ユーザーを意識したスポーツ性などを考えながら乗っていると、GTという言葉がピタリとはまってくる。ただ残念なことに欲しくても中古市場に出回ることはめったにない。

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