ロングランを通して気づいた、ホンダ・ダックス125の美点と欠点 1000kmガチ試乗3/3 

シリーズ屈指の気軽さとフレンドリーさを実現したダックス125。もっともその一方でツーリングやタンデムという視点で見ると、いくつかの気になる点が発覚した。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

ホンダ・ダックス125……440.000円

かつてのダックスST50/70シリーズとは異なり、ダックス125のスタンドはサイドのみで、センタースタンドは純正アクセサリーパーツの設定もナシ。

ライディングポジション ★★★★★

昨今のホンダが展開するクラシクウイングマークシリーズのライポジは、どのモデルも至って真っ当で、身長182cm・体重74kgの筆者が乗っても、違和感や窮屈さは一切ナシ。なお既存のシリーズの中で、ライポジがダックス125に最も近いのはモンキー125だが、ハンドルの絞りが少なめで、ステップがやや前方に設置されているためか、ダックス125のほうが大らかな印象。

モンキー125との差は1mmしかないけれど、シート高はシリーズの中で最も低い775mm(スーパーカブC125は780mmで、CT125ハンターカブは800mm)だから、小柄ならライダーでも足つき性に大きな不満は感じないはず。アップマフラーは万全の発熱対策が施されているので、メインライダーもタンデムライダーもヤケドの心配は不要。

タンデムライディング ★★☆☆☆

タンデムをウリのひとつとしているダックス125だが、僕と富樫カメラマンの評価は芳しくなかった。メインライダーの僕が気になったのは、着座位置の自由度が奪われ、前方に座らざるを得ない状況になること。一方でタンデムライダーを務めた富樫カメラマン(身長173cm・体重55kg)は、座面の小ささや中途半端な位置のグラブバー&ステップが気になったそうだ。「どうにも落ち着きが悪いし、加減速に対応しづらいんだよね。メインのライダーに身体をぴったり密着させれば、問題はある程度解消できるけど、小柄な女性や子供でも、1時間以上はツラいんじゃないかな。個人的には、オプションのタンデムシートを付けたCT125のほうが快適だった気がする」(富樫カメラマン)

取りまわし ★★★★★

ワイドなアップハンドルとスリムで軽量な車体のおかげで、取り回しは楽々。ちなみに最小回転半径は2.0mで、この数値はダックス125よりホイールベースが55mmも長いCT125とまったく同じ。不思議に思って調べてみたら、倒立式フォークを採用したからだろうか、ダックス125のハンドル切れ角はCT125より3度少ない42度だった。

ハンドル/メーターまわり ★★★☆☆

前述したように、ハンドルバーの絞り角はモンキー125より少な目で、それが第2回目で述べたスーパーモタードテイストに貢献している……気がしないでもない。バックミラーの視認性は非常に良好。液晶メーターはモンキー125と共通で、コストを考えれば止むを得ないのかもしれないが、時計とギアポジションインケーターが存在しないことはやっぱり残念(クラシックウイングマークシリーズで装備するのはC125のみ。ただし、スーパーカブ110とクロスカブ110は2022年型から採用)。

左右スイッチ/レバー ★★★☆☆

左右スイッチボックスは、CT125やモンキー125などと同じかと思いきや、なぜか右側のキルスッチが省略されている。これもコストダウンの一環なのだろうか? やや太目の感があるグリップラバーはモンキー125と共通。

メッキ仕上げのバーエンドウェイトは新規開発品。なおホンダは十数年前から、左側のウインカースイッチを最下段に設置し、当初はその構成に賛否両論があったものの、最近は異論の声はほとんど聞こえなくなった。

燃料タンク/シート/ステップまわり ★★★★★

エアクリーナーボックスやバッテリー、レギュレーターなどと“陣取り合戦”を繰り広げながらも、シート下に収まるガソリンタンクは3.8ℓの容量を確保。座面がフラットで前後に長いシートは、タンデムを意識して形状を決定したようだが、僕としてはソロで使った際の着座位置の自由度の高さに大いに感心。個人的には、ウレタン厚が+20mmくらいのハイシートを設定して欲しい。

シフトペダルはC125やCT125と同様のシーソー式。前後共用のステッププレートは、グロムとちょっと似ているけれど、ダックス125用の新規開発。余談だが、C125とCT125のタンデムステップは、プレートを介さず、スイングアームに装着されている。

積載性 ★★☆☆☆

荷かけフックの類は存在しないものの、リアショックの上側取り付け部とグラブバーを使用すれば、シートバッグ(写真はタナックスのWデッキシートバッグ)の搭載は可能。もっとも着座位置の自由度は少々阻害されるので、このバイクをツーリングに使うなら、純正アクセサリー/アフターマーケット製のリアキャリアを検討するべきだろう。

ブレーキ ★★★★★

フロント:φ220mmディスク+片押し式2ピストンキャリパー、リヤ:φ190mmディスク+片押し式1ピストンキャリパーのブレーキは、既存のクラシックウイングマークシリーズと同じく、非常に扱いやすかった。なおフロントのみに備わるABSの制御に、ダックス125はシリーズ初の3軸IMUを採用しているが、残念ながらその効能は把握できず……。

サスペンション ★★★★☆

見るからに剛性が高そうなφ31mm倒立式フロントフォークと、タンデムを念頭に置いて設計されたリアショックに対して、試乗前の僕はソロでまったり走ると硬さを感じるんじゃないか……と心配していたものの、そういった気配は一切なく、乗り心地も踏ん張り感も絶妙だった。なお足まわりパーツの多くはグロムからの流用。

車載工具 ★★☆☆☆

L型六角棒レンチとヘルメットホルダー用ワイヤだけではなく、差し替え式ドライバーとヒューズホルダーが入っているので、他のクラシックウイングマークシリーズよりマシではあるけれど、車載工具は寂しい限り。

燃費 ★★★★★

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①~③はモトチャンプの仕事で行ったツーリング。①②の燃費がいまひとつ奮わない理由は、まだ僕がダックス125の特性に慣れていなかったためで、マッタリ走行に徹した③では大台をマーク。①②⑤の給油タイミングがギリギリではなかったことを考えると、実際のガソリンタンク容量は公称値の3.8+0.5ℓくらいだろうか? なお取り扱い説明書を見ると、メーター内のガソリン警告灯は残量が0.6ℓになった時点で点滅開始、と記されている。

1200mmのホイールベースはグロムと共通。ただしキャスター角/トレールは、グロム:25度/81mm、ダックス125:24度54分/84mmと、各車各様の数値を採用している。

主要諸元

車名:ダックス125
型式:8BJ-JB04
全長×全幅×全高:1760mm×760mm×1020m
軸間距離:1200mm
最低地上高:180
シート高:775
キャスター/トレール:24°54′/84mm
エンジン形式:空冷4ストローク単気筒
弁形式:OHC2バルブ
総排気量:123cc
内径×行程:50.0mm×63.1mm
圧縮比:10.0
最高出力:6.9kW(9.4PS)/7000rpm
最大トルク:11N・m(1.1kgf・m)/5000rpm
始動方式:セルフ式
点火方式:フルトランジスタ点火
潤滑方式:ウェットサンプ
燃料供給方式:フューエルインジェクション
トランスミッション形式:常時噛合式4段リターン
クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング
ギヤ・レシオ
 1速:2.500
 2速:1.550
 3速:1.150
 4速:0.923
1・2次減速比:3.421・2.266
フレーム形式:バックボーン
懸架方式前:テレスコピック倒立式φ31mm
懸架方式後:スイングアーム・ツインショック
タイヤサイズ前:120/70-12
タイヤサイズ後:130/70-12
ブレーキ形式前:油圧式シングルディスク
ブレーキ形式後:油圧式シングルディスク
車両重量:107kg
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン
燃料タンク容量:3.8L
乗車定員:2名
燃料消費率国交省届出値:55.0km/L(2名乗車時)
燃料消費率WMTCモード値・クラス1:65.7km/L(1名乗車時)

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…