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ヤマハNMAX155 ABS…….407,000円(消費税10%を含む)
マットダークブルーイッシュグレーメタリック4 (マットダークグリーン)
ヤマハ・NMAX(125cc)がフルモデルチェンジされたのは2021年5月のこと。それから約1年を経て、兄貴分の155も同様に新モデルへと刷新。今回試乗撮影したマットダークグリーンは2022年7月25日に発売開始されたものだ。
スーパースポーツスクーターを謳うTMAXを筆頭にヤマハはMAXシリーズ四兄弟をラインアップ。今回のNMAX155 ABSは三男坊に位置している。基本的には末弟のNMAX(125cc)と共通で前後に13インチホイールを履くスポーティな本格派スクーターである。
下側リンク式エンジン懸架で搭載されたSOHC4バルブ水冷単気筒のシリンダーボアはNMAXの52mmに対して6mmサイズアップ。ボア・ストロークは58×58.7mmとなり、排気量が155ccへ拡大されている。
ちなみにこのBLUE COREエンジンは、シグナスグリフィスやトリシティ、X FORCEにも採用。“走りの楽しさ”と燃費・環境性能の両立を高次元で具現化するエンジン設計思想の採用を総称している。その内容は、高効率燃焼と高い冷却性、そしてロス低減を徹底追求したのが特徴。具体的には、オフセットされたDiASil(メッキレス・オールアルミ製)シリンダーの採用を始め、鍛造ピストンやVVA(可変バルブ)機構が使われている。
従来型より既にセルモーターは廃止されており、発電機を使って直接クランキングすることでエンジン始動するSmart Motor Generatorを搭載。それを活用したStop & Start System(アイドルストップ機構)も採用されている。また、シリンダーヘッドが一新されて圧縮比は従来モデルの10.5対1から11.6対1へと高められ、吸気バルブはφ20.5mmに拡大。冷却効率も熟成されている。平成32年排出ガス規制に適合しながらも走りの性能を落としたくない開発陣の想いを込めた熟成進化が施されたのである。
その他装備面で新しいトピックは、スマートフォン用の専用アプリに対応するCCU(Communication Control Unit)を新搭載。これにより「Y-Connect」と呼ばれる専用アプリケーションをインストールしたスマートフォンとペアリングすることが可能となり、様々な車両情報の確認や、メーター表示機能の拡張、整備時期のお知らせ等に活用できるという優れ物である。
例えば電話やメールの着信がメーターに通知されアイコンの点灯でそれがわかる。スマホのバッテリー残量も表示。メーター内の時計は自動的に正しく時刻合わせされる。
また下の写真に示すAはスマホ画面上にエコ運転状況を表示。Bはエンジンオイル交換時期や車両バッテリーのコンディションを表示。Cは燃費率データを日別や月別でチェックできる。Dは何らかの車両故障等が検出された時にその情報などを表示。予め設定したメールアドレスに時間や位置情報も含めて自動送信することもできる。そしてEは駐車場などで自車の最終駐車位置をスマホで確認することができる。
アプリは開発途上にあるので、機能はさらに多彩になることが期待できそう。いずれにせよスマホとの連携機能を搭載したことは、新時代の到来を告げるに相応しいチャームポイントとなるだろう。
素直な操縦性と優雅な乗り味が印象的
試乗車を目前にすると、スポーツスクーターとしての本格的なサイズ感と車体を跨いで乗るシッカリした剛性感を醸すスタイリングが印象的。アンダーボーンタイプの外観は125と共通だが、なかなかのボリューム感があり、その佇まいは立派である。
競合モデルと比較するとホンダ・PCXはキャラクターラインで作られた前から後方への流れがシュッとスマートに表現されている。対するNMAXはラインの角が丸められておりマットな外装色もあって、全体に落ち着きがある。艶ありの左右化粧カバーと組みあわせた外観デザインはドッシリと落ち着いている。 フロントカウル部分にボリューム感がありスクリーンの傾斜も立てられ、全高が高くホイールベースが長い事も影響してか、少し格上な大人びた雰囲気がある。もっとも全長と全幅とシート高はほぼ同じで車両重量は131kg。PCXより2kg軽く仕上げられている。
シートに跨がると、足つき性は次の写真のとおり両足の踵が少し浮く。PCXではギリギリだが踵が着地していた記憶がある。その違いはNMAXの車体幅が広い所に起因している。 股が広がり膝も曲がった状態で地面を捉える関係で片足で支える場合でも踵が浮き、いくらか支え辛い感じ。このタイプのスクーターでは皆同様だが、地面に対する足の接地圧が軽くなるので、浮き砂利など滑りやすい路面で支える時は気をつける必要があるだろう。
ライディングポジションはピタリと決まり左右にセパレートされたフロアボードに行儀良く足を立てるか、斜めに立ち上がる前方部分に踏ん張るかが選べる。急ブレーキ時にライダーの姿勢安定を図る上でも絶妙だ。
またシートが長く高身長の人でも無難に対応できる感じ。乗車フィーリングは感覚的にゆったりはしていないが、多くの体格に適応する柔軟性は万全である。
ジェネレーターに通電することでモーターとしても活用するスターター(SMG)は、クランク軸に直接回転力を加えるので、始動は至ってスムーズ。特に新しい手法ではないが、メカニカルな騒音が発生することなくスルッとエンジンが始動する様はやはり心地よい。またアイドリングストップ機構も、エンジン停止及び再発進の制御具合が絶妙で、レスポンスに関するストレスは皆無である。
発進加速はスタート直後からスロットルレスポンスに十分な太さを感じさせてくれる。トルク感が豊かで穏やかな雰囲気の中に強かな加速力を発揮する。常用速度域でのエンジン回転も低く抑えられている感じだ。あえてライバル比較を語るならPCX160はエンジンの吹け上がりと伸び具合に軽快感がある。パフォーマンスに大差はないが、ショートストロークタイプらしい出力特性が感じられる。排気音も含めて、落ち着きのある大人びた乗り味を好むならNMAX155の方が相応しいだろう。
高速走行も同様。NMAX155は100km/クルージングでもゆったり感があり快適。決してパワフルではないが、余裕で流れに乗っていられる様な雰囲気があり、より大きな排気量のスクーターに乗っているかのような気分になれる。
もちろんポテンシャルはそれなりのレベルであり、例えば120km/h制限の速い流れに乗ることはできない。とはいえ、高速道路を走ることができるミニマムコミューターとしての実用性能は十分な仕上がりである。
直進性も優れており高速での車線変更も素直に扱え、しっかりした安定感を覚える。高さの低いスクリーンも前方からライダーに加わる風圧が緩和されている。
峠道を駆け抜ける場面でも操縦性はとても素直。スクーターであることを忘れてついついスポーティな走りをしても不安なく応えてくれる安定性はなかなかのレベルだ。踝や脛の内側と車体との接触具合がフィットしライダーの姿勢安定を保ちやすいのも良い。
路面の荒れた場所でも前後共に衝撃吸収性が良く総合性能として乗り心地が良いのも好印象である。前後ブレーキも微妙な制動力操作が扱いやすかった。
時に高速も走り、快適かつ落ち着きのある大人びた乗り味を好むユーザーにはお薦めできる仕上がりである。
なおスマホとの連携機能については今回試してみなかった。将来的にナビゲーション機能がリンクしてくる事への期待値は大きい。Apple CarPlay やAndroid Autoが使えるようになる事が実用性を大きく向上するチャームポイントとなることは間違いないからだ。
足つき性チェック(身長168cm/体重52kg)
シート高は765mm。決して高くは無いが、車体がワイドなぶん、膝が曲がり両足の着地位置も幅広くなって、ご覧の通り踵は少し浮いてしまう。バイクの支えやすさに難はないが、路面の浮き砂などで足を滑らさないように注意(慣れ)は必要。