目次
ホンダCT125・ハンターカブ……440,000円(2022年12月15日発売)
人気のグローイングレッドは新型も継続。ただしリヤキャリアは新色のマットアーマードシルバーメタリックと同じブラックに。また、メインパイプカバーにあるドロップシャドウの「HONDA」ロゴの色が、赤(白シャドウ)から白(黒シャドウ)へと変更されている。なお、2022年に追加され、2023年も継続されるパールオーガニックグリーンは、引き続き車体と同色のリヤキャリアを採用する。
モーターサイクル的は走りは健在、旅に誘う稀少な原付二種だ
平日と週末の別を問わず、見かける機会が非常に多いCT125・ハンターカブ。販売が絶好調であることは、数字を見なくても肌感覚で分かるほどで、レブル250と並んで近年を代表するモデルになっている。
CT125・ハンターカブの国内発売は2020年6月。4シーズン目を迎えた今年は、令和2年排出ガス規制への適合に伴い、よりロングストローク比となった新エンジンの搭載が大きなトピックだ。初の大掛かりなモデルチェンジとなったわけだが、外観はほとんど変わっておらず、エンジンを囲うアンダーカバーパイプに補強が加わったことが、数少ない判別ポイントの一つだ。
エンジンスペックについて。一段と厳しくなった新排ガス規制をクリアしながら、最高出力は8.8ps/7,000rpmから9.1ps/6,250rpmへと0.3psアップ。最大トルクは11Nmのまま、発生回転数は4,500rpmから4,750rpmへとわずかに高回転側へ移動した。なお、実燃費に近いと言われるWMTCモード値は、67.2km/ℓから63.7km/ℓへとわずかに低下。とはいえ、スクーターのPCX(125)は48.8km/ℓなので、相変わらず燃費の良さが光る。
圧縮比が9.3:1から10.0:1へと高められたエンジンは、遠心クラッチがつながった瞬間の低回転域から相変わらず元気がいい。そして、高回転域までフラットに伸びていくパワーフィールや、単気筒らしい路面を蹴り出すパルス感など、全体の印象は旧エンジンとほとんど変わらない。0.3ps、つまり3.4%のパワーアップについては、現行オーナーがじっくり乗り比べて分かるかどうかの差だろう。それよりも、排気量を上げずに新排ガス規制をクリアしたモデルの中には、吹け上がりの印象がわずかにおとなしくなるというか、トーンダウンしてしまう機種もあるが、CT125・ハンターカブについてはそうしたネガティブな印象は一切ない。おそらく、これを実現するためにわざわざ新エンジンを設計したのだろう。さすがはホンダと感心しきりだ。
ダート走行に誘われる車体フィーリングだが、無理や無茶は禁物
足周りでは、リヤショックにプリロードアジャスターが追加された。最近流行のキャンプツーリング用に選ばれることが多いモデルだけに、その対策という意味合いが大きいのだろう。そして、新旧のパーツリストを細かく調べていくと、標準装着タイヤの荷重指数と速度記号が44Pから50Pに変わっていたり(リヤのみ)、指定空気圧に2名乗車時の表記が加わるなど、アナウンスされていない部分も細かく見直されているのだ。
とはいえ、ハンドリングの印象については基本的に旧モデルから変わらない。スーパーカブC125ベースのバックボーンフレームながら、発生するピッチングや舵角の入り方は一般的なモーターサイクルに限りなく近く、フロント周りの剛性の高さもあって下りコーナーでも狙ったラインをトレースしやすい。乗り心地の印象も旧型から変わらず、今回は標準セッティングしか試さなかったが、突き上げ感が増えたなどのネガは全くない。
ハイマウント吸気ダクトやアップマフラーを採用するなど、トレッキング走行も視野に入れて開発されたハンターカブ。これまでに何度か試乗しているが、今回は初めて本格的な林道に足を踏み入れてみた。ガレた道では、さすがにホイールトラベル量の足りなさ(フロント110mm、リヤは不明)とフレームのねじれが露呈し、これがキャンプ道具フル積載ならかなり厳しそうと感じた。一方、凹凸の少ない土がメインの箇所はそこそこ楽しく進むことができるが、ぬかるんでくるとあまりブロックの高くない標準装着タイヤ(IRC製GP-5)がグリップを失い、上り勾配がきついと発進すら難しくなる。空気圧を落とせば少しはマシになるだろうが……。
以上のことから無理や無茶は禁物だが、とはいえカブシリーズの中では圧倒的に未舗装路を走りやすいのは確かで、すぐに足を着けるという心理的なハードルの低さも長所と言えるだろう。ブレーキについては、林道においてもコントロールしやすく、フロントのABSが不自然に介入することもなかった。
未だ納期未定という状況が続いているほど人気が衰えていないCT125・ハンターカブ。新型になっても時計やギヤポジションインジケーターがないのは少々不満だが、この唯一無二のスタイリングに惚れてしまった人には些細な問題だろう。待つ価値は十分にあると断言する。
ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)
上半身が直立するので視野が広く、膝の曲がりが緩やかなこと、またシートのクッション性が適切なので、長時間乗っていても疲れにくい。ダート走行ではニーグリップできないことがマイナス要素だが、ハンドル位置が高めなのでスタンディングしやすいほか、ハンドルのラバーグリップの凹凸が大きめだったり、ステップのラバーを外せばオフロードブーツに対応した歯が出てくるなど、そうした走りも想定していることは明白だ。