キャンプツーリングに最適なのはアドベンチャースクーターかもしれない! アプリリアSR GT200が気づかせてくれました。

シティコミューターでありながら、ダートの匂いやタフさを感じさせるアドベンチャースタイルのスクーターが人気となっていますが、イタリアンスクーターという選択肢も忘れてはなりません。魅了されてやまないのは、筆者が長らく“ルーツモデル”を所有していたから、というのも理由のひとつにあると考えられます。ストリートにオフロードテイスト、これに惹かれるのです。

REPORT●青木タカオ(AOKI Takao)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)

アプリリア SR GT200……550,000円(消費税込み)

 かつて筆者は、少しマニアックなスクーターに乗っていたことがあります。アプリリアの『ラリー50』という1990年代半ばに製造されたモデルで、心臓部は空冷2ストロークエンジン。倒立フォークが備わり、リヤサスもストロークが長い。前後10インチの太いタイヤはセミブロックパターンで、車名が示す通り多少の悪路も走れる予感をさせるものでした。

 いま思えば、30年近く前から“アドベンチャー系スクーター”なる異端なモデルをアプリリアは提案していたことがわかります。

 現代版の軽二輪モデルには『SR GT200』があります。ロングトラベルのサスペンションを持ち、同ブランドの『トゥアレグ660』のようなアウトドアでのアクティビティを楽しみ、新たな道を開拓するアドベンチャーバイクの世界感を彷彿とさせ、日常における小さな冒険が楽しめる“アーバンアドベンチャースクーター”として、より進化しているではありませんか。

SR GT200スポーツ 605,000円(写真はSTREETGOLD)

 ピアッジオグループの公式ホームページで「アプリリア」を選び、車両紹介ページを見ると、価格とカラーバリエーションが記載されているのは大きな「a」のエンブレムが入り、赤くペイントされたホイールを履く上級仕様『SR GT200スポーツ』だけで、筆者が試乗したスタンダードモデルは詳細がありません。

 もしや取り扱いが終了したのかもしれません。なんせ遅筆で、記事の公開が遅くなってしまいました。車輌をお借りしたピアッジオグループジャパン様と編集部に、まずはお詫びしなければなりません。誠に申し訳ございません。

 繰り返しになりますが、ここで紹介するのは『SR GT200』(スタンダード版)で、車体色はストリートグレー。ホームページから取り寄せたカタログにはしっかりと掲載されており、車体カラーは他にアプリリアブラックとインフィニティブルーがあることがわかります。

 ハイウィンドスクリーンやトップケースは純正オプション。ほかにもサイドバーやフォグランプなど、ラインナップが充実していることがカタログを見るとわかります。

 エッジの効いたデザインで、スタイリッシュなところはさすがのイタリアンスクーター。ヘッドライトなど灯火器類をフルLEDにしているのも先進的かつスポーティさを強調しています。

 フロント14/リヤ13インチの足まわりにはトレールパターンのタイヤが備わり、前後サスペンションはSHOWA。フロントフォークはインナーチューブ径33mmでトラベル量122mm、ツインショックのリヤサスは102mmのトラベル量を確保し、5段階のプリロード調整を可能としています。

最低地上高175mm! しかし足つき性に不安なし

 身長175cm/体重65kgのライダーがまたがると写真のようなライディングポジション。最低地上高は175mmと、スクーターとしてはトップレベルに高い仕様ですが、シート高は799mmで足つき性が悪いといった印象はありません。

 センタートンネルで見るからにスポーティにですが、それは着座した瞬間にも感じます。ストロークの長いサスのおかげで、スポーティな走りを予感させてくれるのです。

 両足が地面にかかとまで届き、またがったまま押し引きするときもしっかりと踏ん張れるから、取り回しも軽い。車両重量は148kgです。

 足つき性が良好であることに加え、ハンドル・グリップ位置もライダー寄りの近い位置にあることが肘の曲がりでおわかりでしょう。ゆとりあるライポジとしています。

強力なダッシュが味わえ、車体は安定感がある

 走りは俊敏で、SOHC4バルブ水冷単気筒エンジンは元気ハツラツとした出力特性。最高出力17.4PS/8500rpm、最大トルク16.5Nm/7,000 rpmを発揮し、加速も鋭い。

 高張力スチール製のパイプフレームはダブルクレードル構造で、シャシーも剛性が高く安定性に優れます。なんといってもサス・ストロークに余裕があり、走りはアグレッシブに。

 260mmウェーブディスクのフロントブレーキはタッチや制動力に申し分なしで、スポーツバイクのようにコントローラブルです。

 欧州の石畳などデコボコ道も想定されているので、走破性が高い。身のこなしが軽いから市街地をぐいぐい走れ、クルマの流れの速い幹線道路も落ち着いて流すことができます。オプションのトールスクリーンの恩恵もあって、クルージング性能は200クラスとは思えません。

多用途にフル稼働してくれそう

 シート下にも広いトランクがあるものの、30リットル以上の容量を持つ純正オプションのトップケースを追加しているから積載力は抜群に良くなっています。

 郊外へ足を伸ばし、キャンプツーリングというのもすぐに想像がつきます。高速道路も走れる軽二輪登録ですから、行動範囲は広くなるでしょう。

SR GT200 ディテール解説

 さすがはスポーツバイクブランドであるアプリリア。ハンドルクランプなど剛性の高いパーツが用いられ、スポーティな走りに対応しています。

フルデジタルメーターで、ディスプレイも美しい。「アプリリアMIA通信システム」がオプション設定され、追加装備すれば、スマートフォンとのBluetooth接続が可能となります。

 シートもライダー着座位置の後端に段差を設け、加速に耐えられる形状に。シート表皮に使われるテクスチャーも欧州ブランドらしく高級感があります。

アイドリングストップ機構を持ち、ハンドル左にON/OFFスイッチを備えます。

 シート下のトランクからすぐにバッテリーやヒューズボックスへアクセスできるなど、整備性も考慮されています。

■主要諸元

エンジン 4 ストローク 水冷単気筒 SOHC 4 バルブ
総排気量 174 cc
ボア × ストローク 61.5 mm × 58.7 mm
最高出力 13kW(17.4HP)/8,500rpm
最大トルク 16.5Nm / 7,000rpm
燃料供給方式 電子制御燃料噴射システム
潤滑方式 ウェットサンプ
始動方式 セルフ式
トランスミッション オートマチック(CVT)
クラッチ 自動遠心クラッチ
フレーム ダブルクレードル 高張力スチールパイプフレーム
サスペンション(F) Φ33 mm 油圧テレスコピックフォーク ホイールトラベル 120mm
サスペンション(R) スプリングプリロード調整式 油圧ツインショックアブソーバー ホイールトラベル 102mm
ブレーキ(F) 油圧式Φ260 mm ウェーブディスクブレーキ、ABS
ブレーキ(R) 油圧式Φ220 mm ディスクブレーキ
タイヤ(F) 110/80-14 チューブレス
タイヤ(R) 130/70-13 チューブレス
全長 1,920mm
全幅 765mm
全高 1,295mm
シート高 799 mm
ホイールベース 1,350 mm
車両重量 148Kg
燃料タンク容量 9 L

生産国:ベトナム

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著者プロフィール

青木タカオ 近影

青木タカオ

バイク専門誌編集部員を経て、二輪ジャーナリストに転身。最新バイク情報をビギナーの目線に絶えず立ち返…