進化を続けるアライヘルメット、その快適性の理由を聞いてみた。 【動画・モトチャンプTV】

安全性や快適性、さらには空力特性など進化を止めることがないヘルメット。最新ヘルメットの実力や使い勝手を調べるため、アライ本社へ突撃して最新事情を聞いてみた。

乗車時に必ず着用するヘルメットはライダーの安全と快適性を左右する最重要あいてむの一つ。それだけに日々進化していると言っても過言でないほど、各社さまざまな新技術やデザインを盛り込んで新作ヘルメットをリリースしている。またヘルメットには耐用年数があるため、定期的な買い替えも必要になる。新しいヘルメットの選び方について、今回はアライヘルメットの最新作からヒントを学んでみよう。

最新モデルのVZ-RAMを例に解説してもらう。
転倒時の衝撃を和らげるため帽体の側面部分を見直した。

今回もYouTubeで無料配信しているモトチャンプTVの中から「最新ヘルメットの快適性を徹底解説!」という動画をダイジェストにすることで進化の度合いを推測ってみたい。この動画で解説&インタビュアーを務めるのはジャーナリストのノア・セレンで、お相手はアライの広報担当である上(かみ)さん。最新作としてジェットタイプのVZ-RAMを例に解説してもらった。

新しいシールドシステム

側面の見直しによりシールドの位置を下げることに成功。
シールドの動きに工夫を加え全開時でもシールドは当たらない。

注目したいのが帽体のサイド部分。アライ流には「かわす性能」と表現している部分で、転倒時にサイドの出っ張りが少なければ少ないほど頭部への衝撃が低くなる。そこでVZ-RAMには「VAS-Zシールドシステム」を開発して導入している。具体的にはサイドの面を滑らかにするため、シールドを15mmほど低く装着しているのだ。ただシールド基部を下げるとシールドを持ち上げた時に帽体と接触してしまう。そこでシールドアクションを2段階にすることでシールド開閉時の弊害を除外しているのだ。

シールド脱着方法

脱着についても見直され容易になった。

新しいVAS-Zシールドシステムではシールドの交換を容易にする新たな技術も盛り込まれている。アライではシールドを消耗品と考えているため、定期的な交換を推奨。交換時の作業性についても進化を果たしているのだ。まずシールドを外すには持ち上げた時に基部の下に見えるツマミを矢印の方向に動かすとロックが解除される。そのまま持ち上げるとシールドが外れる。

はめ直す時は下のラインをサイドと合わせるようにして上から被せる。
シールドを最後まで下ろすと自動的にロックされる。

シールドを取り付けるには外した時に見えた矢印のあるツマミの上にあるラインとシールドの下側のラインを合わせるようにして上から被せる。そのままではロックされないので、シールドを下げ切ることでロックされる。たったこれだけのことで交換作業を終わらせることができるのだ。若干コツは必要かもしれないが、取扱説明書やアライで公開している動画を参照するといいだろう。

快適性を向上させた内装

脱着式の内装にも進化が加わり快適性をアップした。

以前から内装を脱着可能として洗濯できることが特徴だったが、最新のVZ-RAMでも内装を取り外して清潔に保つことができる。注目したいのは内装に使われている素材の進化。特にメインの骨格とも言える頭頂部付近に2本あるフレームに最新の柔軟性ある素材を用いているのだ。また頭頂部の内装デザインを変更してある。従来モデルでは通気性確保のため中央がくり抜かれたような形状となっていた。そのためヘルメットを脱いだ時に髪型が内装材のような形になってしまうという声が多かった。最新モデルでは頭頂部の内装デザインを変更して、ヘルメットを脱いだ時にライダーの髪型が妙なことにならないよう配慮されている。もちろん通気性は従来モデル同様に確保されている。

メインの骨格部に従来モデル(左)は樹脂を使い最新モデル(右)はフエルト状の素材に変更した。

上写真のように従来モデル(左)と見比べてみるとわかりやすい。従来モデルではフレームに硬めの樹脂を採用していたが、最新モデルではフエルトのように柔らかな素材へ進化させているのだ。強度的に従来モデルより向上しているのはもちろんだが、被った時の疲労度を低減する効果が期待できるだろう。またこのフレームは前後に位置を調整することができる。さまざまな頭部形状に対応するため、ミリ単位で位置を変更できるのだ。もちろん調整にはアライのプロショップで専門スタッフが行うことになる。

サイド部は内装材を外して調整ができる。

サイドについてはライダー自らが調整することもできる。上写真のように1枚ある布の裏にあるスポンジを本体から切り離すことで、サイドに余裕を持たせることができるのだ。ただ一度取り外してしまうと再使用するのは難しく、できるだけ優しく剥がすことが推奨されている。

シールド本体も進化

標準装備のシールド色はライトスモークになる。
ジェットタイプでもバイザーの装着が可能。
曇り止めのを装着することも可能。

消耗品と捉えられているシールド自体も進化を続けている。例えばVZ-RAMに標準装備されているのはライトスモークのシールドになるが、さらに3色が設定され好みや乗り方に合わせて変更可能としている。

さらにプロシェードシステムがジェットタイプにも用意された。シールド上部に可変式のバイザーを装着したもので、日差しを避けたい時に下げると効果的な視界が確保される。夜間になったらバイザー部を上げて視界を確保できるし、上からの日差しを避けたい時にも上げて使うと庇のような効果が得られる。

また冬季などの信号待ちでシールドが曇ってしまった経験がないだろうか。アライでは曇りに対応するピンロックシートを開発しているが、フルフェイスはもちろんジェットタイプのヘルメットでも装着することが可能。注意点としては雨天時に直接雨が当たるような使い方をしないこと。というのもピンロックシートは本体そのものが吸湿性を備えるため、雨に濡れると水分を吸って曇り止め効果が薄れてしまうからだ。

Dリングの正しい装着法

アライ流Dリングの正しい使い方。

以上で最新ヘルメットの特徴は終了なのだが、ノア・セレンが初心者と思しきライダーの誤ったヘルメット装着法と先日遭遇したので、注意喚起のため正しい装着方法を解説している。アライではDリングと呼ばれる2本のリングに顎紐を通してキツさを調整しつつロックできる。ところが初心者ライダーはDリングに紐を通しただけで折り返さず、紐の先端にあるボタンを止めているだけだった。これでは転倒時にヘルメットが脱げてしまうので、写真のように紐を2本のリングに通した後、リングの間に紐を折り返して使おう。このまま紐を引っ張って首との間に指1本分入るかどうかのクリアランスで固定するのが推奨されている。

キーワードで検索する

著者プロフィール

増田満 近影

増田満

小学生時代にスーパーカーブームが巻き起こり後楽園球場へ足を運んだ世代。大学卒業後は自動車雑誌編集部…