バックステップはカッコだけ? 「ちょい下げて上げる」タイプが公道やサーキット走行まで幅広く対応できる訳

バックステップのすすめ
「ちょい下げて上げる」バックステップが公道やサーキット走行まで幅広く対応できる訳を紹介
愛車をレーシーなスタイルにしたり、スポーティなポジションへ変更できるなどで、昔からの定番カスタムパーツといえるのが「バックステップ」。スーパースポーツはもちろん、ネイキッドや原付などの小排気量ギア付きモデルまで、幅広い車種のユーザーに根強い人気を誇るアイテムだ。
特に、最近のバックッステップは、アルミ製やジュラルミン製など、軽量で高剛性な素材を使った製品も多く、質感もかなりいい。また、カラーも渋いブラックからアルマイト系のカラフルなタイプまで、多種多様。愛車のスタイルを好みなどに応じて、グッと引き立ててくれるものも多い。
また、調整範囲も、対応車種やメーカーなどにもよるが、20mm以上の大幅変更タイプから10mm程度の微調整も可能な製品まで幅広く、よりライダーの体格や好みに応じたポジションのセットアップを可能としてくれる。
そんなバックステップを、筆者も愛車のホンダ「CBR650R」に装着してみた。筆者の場合は、街乗りやツーリングといった公道走行から、サーキットのスポーツ走行も楽しんでいる。そのため、特に公道での乗りやすさも考慮し、純正ステップの位置からあまり大幅な変更は行わず、「やや後方、ちょっと上」といったポジションに変更した。だが、それでも効果は抜群。純正ステップで抱えていた問題を見事クリアできたのだ。

ここでは、そんな筆者の体験も交え、最新のバックステップがもたらす効果について考察してみる。

REPORT●平塚直樹
PHOTO●平塚直樹、山田俊輔、本田技研工業

バックステップとはどんなパーツ?

ご存じの通り、バックステップとは、ステップを純正品から交換することで、ステップ位置を後方や上方へ変更できるパーツのことだ。元々は、サーキットなどのレーシングマシン用に開発されたものだが、見た目がレーシーになることなどで、今では市販車向けのカスタムパーツも数多く販売されている。また、製品にもよるが、車検などにも対応することで、今では手軽なカスタム手法のひとつとして、大きな人気を博している。

筆者の愛車CBR650Rに対応するバックステップも、多くのアフターパーツメーカーからさまざまなタイプがリリースされているが、それらの中で筆者が選んだのは、カラーズインターナショナルが展開する「ストライカー(STRIKER)」ブランドの「スペシャル・ステップキット(SPECIAL STEP KIT)」という製品だ。

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ストライカー「スペシャル・ステップキット」の右側ステップ

主な特徴は、材質にジュラルミンを使うことで、軽量かつ高い強度を実現していること。カラーはブラックハードアルマイト、左右ペダルや専用ヒールガードも付属するなどで、全体的に渋くてレーシーな雰囲気を演出する。

調整範囲は、

・10mmバック/0mmアップ
・10mmバック/10mmアップ
・20mmバック/10mmアップ
・20mmバック/20mmアップ

といった4つのポジションを選ぶことが可能。ステップの表面には、切削で滑り止めのローレット加工も施されているため、例えば、雨天時の走行でステップ荷重する際も、足がツルンと滑ってしまうことはない。

また、ブレーキやシフトの各ペダルは高さ調整も可能で、細かいポジションのセットアップに対応する。なお、価格(税込)は、CBR650R用の場合で6万500円だ。

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ステップは軽量なジュラルミン製

付けた理由はステップとシフトペダルの位置関係

一般的に、バックステップのメリットといえば、例えば、身長が高いライダーなどが、純正ステップの位置ではポジション的に窮屈な場合に、ステップのマウント位置を後方へ移すなどで、乗りやすくできることが挙げられる。

ただし、筆者は身長165cm、体重59kgと比較的小柄だ。愛車CBR650Rの純正ステップでも、位置的にはあまり窮屈さを感じなかった。

もちろん、筆者はサーキットでスポーツ走行も楽しんでいるため、ステップ位置も後方にした方が前傾姿勢を取りやすくなるなどのメリットはある。だが、あまり大きく後方や上へ移動すると、ハンドルのマウント位置も下げるなどしないと、足が曲がりすぎることになり、逆に窮屈になる。特に、筆者は、長距離ツーリングなど公道でも同じ愛車に乗るため、あまり前傾がきつくなると長時間のライディングは疲れやすくなってしまう。

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バックステップ装着後も足の曲がりはさほどきつくない

では、なぜバックステップに変更したのか? 

理由はまず、左側ステップとシフトペダルの位置関係。純正では、ペダル位置が微妙に高く、つま先をペダルの上に載せると足首がやや上を向いてしまい、長時間の走行では辛くなっていたからだ。

もちろん、純正品でもペダルの高さは調整可能だが、最も下側へ移動させても、多少は解消はするものの、足首が上へ曲がる傾向は変わらない。また、シフトペダルを下げすぎると、シフトアップ時につま先をペダル下に入れづらくなるということもある。特に、ワインディングはもちろん、サーキット走行でも、素速くシフトチェンジをしたい場合は俊敏な操作がやりづらくなる。そんな理由で、ペダル位置をあまり下げられなかったのも事実だ。

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純正の右側ステップとブレーキペダル

サーキット走行でも悩みがあった

また、例えば、筑波サーキット(本コース)の第1コーナー、ヘアピンのようにきついRの右コーナーを曲がる際。純正ステップでは、ブレーキペダルの先端が路面にヒットすることが多かった(一緒にアンダーカウルも路面で削れていた)。

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サーキット走行で路面にヒットして削れた純正のブレーキペダル

ちなみに、市販車では、左右の純正ステップ下部にバー状のバンクセンサーが付いている。これは、「これ以上バンクさせると危ないですよ」といったことを知らせてくれるもので、当然CBR650Rにも付いていた。公道走行では非常に役立つものだが、コーナリング速度がより高いサーキット走行では、バンクセンサーが路面にヒットすると転倒の恐れもあるので、筆者は取り外して走行していた。

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バンクセンサーが装着されている純正ステップ

おそらく、バンクセンサーがないため、一般的な公道において、メーカーが担保する車両の許容バンク角を超えていることが分からず、ブレーキペダルやアンダーカウルを路面にヒットさせていたのだと思う。

元々CBR650Rは、あくまで公道をスポーティに楽しむ性格のモデル。そのため、サーキット走行をさほど考慮して作られていないことがうかがえる。そう考えると、ある程度は致し方ないことではあるのだが。

サーキットでブレーキペダルが路面にヒットすること自体は、リヤサスペンションのイニシャル調整機構を使い、スプリングを硬めに変更することでなんとか対応できた。だが、今度は、旋回中につま先が路面に擦れる場合もでてきた。

これについても、ブレーキやシフトチェンジの操作を終了させた直後に、ステップに載せるイン側の足を、土踏まずからつま先に載せ替えれば問題はない。いわゆる「つま先立ち状態」だ。だが、たまに、ペダル類の操作が遅れた場合などに足先の移動が遅れると、つま先が路面にあたってしまうこともある。そうした場合、最悪は転倒などの原因になりうることもあるので、ちょっと怖いこともあった。

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純正ステップでは、サーキット走行時に悩みがあった

ステップ位置は10mmバック/10mmアップを選択

今回のバックステップ装着は、こうした公道とサーキット、両方で抱えていた幾つかの問題を解消するために装着した。ストライカーの製品を選んだのは、まず、ブラックハードアルマイトのカラーが渋くて、レッドを基調に細部にブラックの差し色を入れた愛車の車体色にとてもマッチすると思ったからだ。他社製品には、レッドやイエローといったカラフルなアルマイトカラーなどもあるが、あまり目立ち過ぎず、さりげなくカスタムしている方が筆者の好みだ。

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右側ステップのリヤビュー

また、ステップ位置をあまり大きく変更すると、前述の通り、公道での走りに支障がでるため、微調整が可能なタイプにしたい、ということもあった。あくまで、ハンドルなどはノーマルのままにし、純正のポジションから大きく変更しなくてもいいモデルということも選んだポイントだ。

実際のセットアップでは、4タイプから選択できるポジションのうち「10mmバック/10mmアップ」を選択した。まさに、「ちょい後方、やや上」の位置だ。

装着後に、市街地を早速走ってみたが、この程度のステップ位置変更であれば、ポジションも純正ステップのときとさほど変わらず、違和感はほぼない。しかも、純正のステップやシフトペダルで抱えていた問題も解消。土踏まずをステップに載せ、つま先をペダルの上に置いても、ペダルの高さが丁度よくなり、足首が無理に上へ曲がり過ぎることもなくなった。特に、ロングツーリングの際は、より疲れにくくなったといえるだろう。

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ブレーキペダルの上につま先を乗せても足首の曲がりはきつくなくなった

サーキット走行でも効果を実感

一方のサーキット走行でも、ブレーキペダルやつま先が路面にヒットするようなことはなくなった。また、若干ではあるが、前傾姿勢が取りやすくなり、ストレートで上体を伏せやすくなったと思う。

ポジション自体を純正からさほど変えていないことで、コーナーで体重移動したり、減速時にフロントへ荷重をかけるために上体を起こすなどの動作も、以前と変わらずやりやすい。ちなみに、ステップとセットの専用ヒールガードも、ハングオフ時にカカトなどをホールドしやすく、とても使いやすいといえる。

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筆者の場合、サーキット走行時は、つま先立ちでコーナリングする

ちなみに、ストライカーの製品は、左右ペダルの軸受け部にボールベアリングを採用していることで、特にシフトペダルはスムーズな操作が可能。スコスコと気持ちいい操作感でシフトチェンジできることも好印象だ。

また、愛車CBR650Rには、クラッチ操作なしでシフトアップができる純正のクイックシフターを装着しているが、装着したスペシャル・ステップキットはこれにも対応している。加えて、純正のステップやシフトペダルでは不可能な逆シフトにも変更が可能。特に、サーキット走行でコーナーを脱出し加速する際、より素速いシフトアップを行えるようになった。

バックステップも適度な変更が「ちょうどいい」

ここで紹介した例は、あくまで筆者個人の感想だ。だが、そもそも純正ステップは、さまざまな体格や好みの万人向けに作られているため、自分の乗り方や体格、好みなどに、必ずしもマッチするとは限らないのも事実だ。そんな時、こうしたバックステップを活用すれば、筆者のように乗りやすくなったり、問題を解消できる場合もあるといえる。

ちなみに、バックステップの効果としては、ここで紹介した例のほかに、純正ステップだとニーグリップがしにくいとか、ステップ位置の都合で停車時に足を地面へ出しにくいなどといった問題を、解消できることも期待できる。

もちろん、サーキットなどをよりスポーティに走るために装着するという、このパーツ本来の使い方のために装着することも、効果はかなり高い。ポジションをより前傾姿勢にしたり、コーナリング中にステップが路面にヒットしにくくなることで、車両のバンク角をより大きくすることなどが期待できる。

ただし、あくまで私見だが、特に公道でのツーリングなどをメインとするライダーの場合、あまり大きくステップ位置を変更するのはおすすめしない。前述の通り、足が曲がり過ぎるなどで、逆にポジションが窮屈になってしまうからだ。

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バックステップ装着後もあまり純正とポジションは変わらない

市販車のポジションは、そのモデルの性格にもよるが、性能を可能な限り発揮させたり、乗りやすくするために、各メーカーが数多くのテストを重ねて決めたものだ。もちろん、バックステップは、よりスポーティなスタイルになるなど、見た目にカスタム感を出せることも魅力だ。だが、あまり過度な変更をする場合は、ハンドル位置やシートの高さなども含め、大がかりなセットアップが必要となるだろう。

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CBR650R(純正ステップ)のポジションやディメンション

筆者のように、ハンドルやシートはそのままで、ステップのみを変更するのであれば、今回のような「ちょい後方、やや上」といったライトなカスタムがおすすめだ。もちろん、ライダーの好みや体格にもよるが、それだけでも、十分に効果が出ることは筆者が十分に体感している。

ライディングポジションは、安全で楽しくバイクに乗るためには非常に重要なファクターのひとつ。バックステップは、それに深く関わるバーツだけに、あくまで愛車の性格や自分の体格、乗り方などに合わせた「ちょうどいいカスタム」にすることをおすすめする。

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著者プロフィール

平塚直樹 近影

平塚直樹

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなど…