2スト250と4スト400がしのぎを削る、TOTのZERO-2とZERO-4をじっくり解説|テイスト・オブ・ツクバ

全日本選手権のTT-F3や鈴鹿4耐など、1990年代以前のロードレースには2スト250と4スト400が混走するクラスが存在した。その現在進化形と言えるのが、TOT:テイスト・オブ・ツクバのZERO-2とZERO-4だ。

REPORT●中村友彦(NAKAMURA Tomohiko)
PHOTO●富樫秀明(TOGASHI Hideaki)

往年のTT-F3と鈴鹿4耐を思わせるレース

エンジン形式が異なる2ストロークと4ストロークが、各車各様の排気音を響かせながら、同じレースを戦う。昨今ではそういった状況は、エンデューロの特権になった感があるけれど、1980年代の全日本選手権TT-F3、1999年以前の鈴鹿4耐では、2スト250ツインと4スト400マルチが熾烈な戦いを繰り広げていた。そんな時代を想起させてくれるのが、日本最大のイベントレースであるTOT:テイスト・オブ・ツクバのZERO-2とZERO-4クラスだ。

まずはZERO-2の説明をすると、1991年から始まったこのクラスは、当初は1985年以前の2スト250と4スト400を主な対象としつつも、特例として当時の現行車だったゼファー400の参戦をOKとしていた。そして1990年代中盤になると、いったんは4スト水冷400ネイキッドがメインのレースに変貌したのだが、2003年秋からは初期の路線に回帰。一部のアルミフレーム車は参戦が認められているが、鉄フレームが主役というスタンスを維持している。

一方のZERO-4の主役は、1980年代中盤~後半に生産されたアルミフレームのレーサーレプリカ。ただし、ZERO-2では不可となった水冷並列4気筒+鉄フレームの400ccネイキッドの参戦も認められている。ちなみに2007年の創設当初は、気軽に始められる入門用レース……という雰囲気だったZERO-4だが、近年ではレベルが向上し、しかもレーサーレプリカ全般の中古車価格が高騰してしまっため、エントリーのハードルはかなり高くなったようだ。

2023年のTOTは、5月13/14日、11月4/5日に開催予定である。当記事を見てこのイベントに興味を持った方は、ぜひとも会場に足を運んでいただきたい。

ZERO-2の一番人気はヤマハ2ストツイン

ZERO-2で最も参戦台数が多いのは、1980~1990年代にヤマハが販売した2スト250パラレルツイン。中でも、生産台数が多く、現在でも世界中で数多くのリプロ/チューニングパーツが販売されているRZ250Rは、このクラスの創設当初から多数派を維持し続けている。それに次ぐのは1990~1999年に販売されたR1-Zで、TZR250と同じエンジンを搭載するこのモデルに限っては、エンジン内部の改造は不可という規定が存在。なおルールブックには、ホンダMVX250F、NS250R/F、スズキRG250Γ、カワサキKR250などの車名も記されているけれど、補修部品の入手と戦闘力の向上が難しいためか、昨今ではヤマハ以外の2ストは希少になりつつある。

佐野富三治選手+ヤマハRZ250R
高橋英裕選手+ヤマハRZ250R
三宅健司選手+ヤマハR1-Z
高橋 世史選手+ホンダNS250R
太田 毅選手+スズキRG250Γ

ZERO-2の4ストに関する規定は、1980年代以前、2気筒以上、241~590cc、スチールフレーム(例外として、アルミフレームの初代スズキGSX-R/GK71BとカワサキGPZ400RはOK)。となると、参戦できる車両は相当な数に上るのだが……。近年のこのクラスで活躍する4ストは、ホンダVF400Fとカワサキ・ゼファーのみ。2010年以前は、ホンダCBX400FやヤマハXJ400、スズキGSX400E/F、カワサキZ400FX、GPz400/Fなどがエントリーしていたものの、TOTで1980年代前半の4スト空冷400マルチを見る機会は、最近はわずかになってしまった。

立石数一選手+ホンダVF400F
小堀 哲選手+ホンダVF400F
浦部敏徳選手+カワサキ・ゼファー
馬場 隆選手+スズキGSX-R400

ZERO-4の主役はアルミフレームのレーサーレプリカ

クラスレコードを保持しているのはスズキRGV250Γだが、ZERO-4に参戦する2ストの主役はホンダNSR250R。その一番の理由は戦闘力の高さで、1990年代に生産された3/4代目=MC21/28や市販レーサーRS250用のパーツが流用できることも、NSRならではの美点だろう。それに次ぐのは、現役時代にNSRとガチンコ勝負を繰り広げたヤマハTZR250。ただしNSRと比較すると、初代1KTはパワー不足、2XTはエンジンの補修部品が入手しづらい、3MAは耐久性がいまひとつ、などという問題がある模様。

北岸亜斗夢選手+ホンダNSR250R
堀江壮一選手+ホンダNSR250R
加藤泰治選手+ヤマハTZR250
小沼文雄選手+ヤマハTZR250

ZERO-4に参戦する4ストの主役は、1989年の1年間のみしか生産されなかったカワサキZX-4。このモデルの美点は、後継車のZXR400/Rのパーツが流用できること、シリンダーにボアアップの余地が存在することで、現役時代のレプリカ市場で絶大な人気を獲得したホンダCBR400RRやVFR400R、ヤマハFZR400、スズキGSX-R400などで、チューンドZX-4を打ち負かすのは容易ではないようだ。

菊地貴博選手+カワサキZX-4
北市剛久選手+カワサキZX-4
亀作和哉選手+ヤマハFZR400
吉村 澄司選手+スズキGSX-R400
前道紀夫選手+ホンダVFR400R

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著者プロフィール

中村友彦 近影

中村友彦

1996~2003年にバイカーズステーション誌に在籍し、以後はフリーランスとして活動中。1900年代初頭の旧車…