モペッドや電動バイクとは異なる感覚。ほぼチャリンコのFK310シリーズ!エントリーモデルはメチャ安の8万円台

モペッドとはヨーロッパで人気の、49ccエンジンを搭載したペダル付きミニバイクのこと。写真は自社製の自転車風フレームに、軽量コンパクトな国内設計・国内生産の空冷2ストローク31.7ccエンジンを搭載した、欧州製モペッドとはコンセプトの異なる新感覚のシティコミューター「FK310シリーズ」。製造発売するのは横浜市の本社を置く「フキプランニング」。フキプランニングは国内某超大手メーカーのレース用ファクトリーバイクの委託設計製作を請け負う等々、知る人ぞ知る生粋のエキスパート。欧州のモペッド、電動バイク、電動アシスト付き自転車とは異なる、独自の構造と乗り味を実現した超個性派のシティコミューターに注目してみた。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●フキプランニング http://www.fuki.co.jp/

欧州のモペッドは、ペダルの足漕ぎのみで自力走行できるけれど

日本でも人気のイタリア製モペッド「トモス」。国内では「ホノラリー」が正規輸入代理店として発売中。写真は「トモス クラシック1(25万800円/税込)」という伝統的なモデル。

足漕ぎ用のペダルを装備したミニバイクは、国内では一般的に「モペッド」と呼ばれる。日本で昔から人気なのは、イタリアから輸入された「トモス」や「チャオ」。

写真のトモスは、燃料タンクを兼ねた太くてワイドなフレームに、空冷2ストローク単気筒49ccエンジンを搭載。ミッションは2速オートマチックを採用。前後ホイールは16インチに設定。重量は48kg。

トモスは自転車のような足漕ぎ用ペダルを装備しているが、エンジン停止時、自転車のように足で漕ぎながら走行する人はほぼ皆無(これまで筆者は見たことがない)。

もしもアナタが脚力にたけた体育会系ならば、しばく人力走行することもできるだろう。しかし基本的にモペッドはペダルがメチャクチャ重いため、一般人は恐らく数m走ったところであきらめるだろう(モデルにより異なる)。

筆者はかつて、欧州製モペッドの人力走行にチャレンジしたことがある(車種は不明)。しかし想像以上にペダルが重かったこと。左右のペダルのストロークが自力走行に適していなかったこと(全般的にストロークが短い気がした)。ギアチェンジが付いていないため、走りがギクシャクしたこと。車体がやや重く感じられ、バランスが取りにくかったたこと。以上の理由により、「モペッドは足漕ぎペダルによる自力走行には向いていない」と感じた。

モペッドにおけるペダルの存在意義は、まずペダルを漕いでのエンジン始動。次にスタート時・加速時・坂道走行時など、プラスαの動力が必要な折に足で漕いで補助すること。電動アシスト付自転車ならぬ、「ペダルによる自走アシスト」のような役割を果たすイメージだ。

※注:上記はあくまでも筆者の体験及び感想であり、モデルにより異なる場合あり。

FK310シリーズは、軽量な2スト31.7ccエンジンを搭載! 自転車並の取り回しの良さも実現

前後に大径の26インチタイヤを採用した「FK310 LAⅢ classic」。重量は30kg。価格は14万8500円(税込)。ナンバープレートを取得すれば合法的に公道走行可能。
前後に20インチタイヤを採用した「FK310 bb20」。重量は28kg。価格は12万9800円(税込)。こちらもナンバープレートを取得sいて公道走行可能。

かつて筆者が乗車したヨーロッパのモペッドと、今回試乗したFK310シリーズの大きな違いは、ペダルのみの走行(足漕ぎでの走行)も手軽に行えたこと。FK310シリーズは空冷2ストローク単気筒31.7ccエンジンを搭載。ウインカーの装備されていないFK310シリーズは道路交通法上、公道での最高速度が20㎞/hに制限される。

試しに26インチタイヤを採用した「FK310 LAⅢ classic」を使い、私有地でテスト走行したところ、最高速度はメーター読みで時速40㎞/hに到達。チューニング次第では、さらなるポテンシャルを発揮しそうなこのエンジン。体感的にその潜在能力は、実はもっと高いと推測される。

FK310シリーズは公道での最高速度規制が20㎞/h。しかし法律を踏まえた上では、足漕ぎペダルでアシストする場合に限り、20㎞/hを超えても走行することは問題ない。

レバー型のスロットルは右グリップ側に設置されており、親指で操作するしくみ。最高出力は0.8馬力。平坦路はもちろん、傾斜の緩やかな上り坂ならば、足漕ぎのペダル補助がなくてもスムーズに走行してくれる。

FK310シリーズのフレームは自社による専用設計で、すべて横浜市にある自社工場にて製作。エンジン走行→ペダルのみの走行・ペダルのみの走行→エンジン走行への切り替えは、エンジン左側に設置された黒いツマミを操作するだけで、至極簡単に変更可能だ。

価格に驚愕! 電動バイク・電動アシスト付自転車との違い

両車とも走行は①エンジンのみ ②急な上り坂で有効的なエンジン+ペダルでのアシスト ③ペダルのみ、以上の3パターン。すべてのパターンにおいて、エンジンの重みを感じさせない軽快な走りを発揮。写真は26インチタイヤの「FK310 LAⅢ classic(14万8500円/税込)」。

FK310シリーズ最大のポイントは、エンジン搭載車とは思えないほどの軽快さ。20インチタイヤを採用した「FK310 bb20(12万9800円/税込)」の重量は28kg、26インチタイヤの「FK310 LAⅢ classic(14万8500円/税込)」は30kg。この軽さはペダルのみの自力走行時にも発揮。

車体のセンター下部にレイアウトされた軽量コンパクトなエンジンは、驚くほど“重さ”を感じさせない。急激な小回りや急停車時も挙動を崩すことなく、バランスの良い走りを実現。両車には自転車用のシマノ製3段ギアも搭載されており、走り出しから巡行まで実にスムーズだ。

シマノ製3段ギアはペダルのみの走行時はもちろん、エンジンのみの走行時にも強みを発揮。右手親指でスロットルを開けながらスピードを上げつつ、左グリップにあるシマノ製ギアを回転させて2速~3速へとシフトアップすれば、スクーターのごとくスムーズに加速してゆく。

20インチタイヤの「FK310 bb20(12万9800円/税込)」をペダルのみで走行中。シマノ製3段ギアも搭載されており、エンジン搭載車ながら通常の自転車と変わりなくスムーズに走行OK。

電動バイクや電動アシスト付自転車は、電動モーターやバッテリーの搭載で、どうしても重量が重くなりがち。また航続距離もエンジン車ほど伸びないのがネック。一方、FK310シリーズはエンジン搭載車ながら驚くほどの軽快感を獲得。また、燃費は通常走行時で1リッター43kmの低燃費性能を発揮。加えて自転車としての優れた機動性や駐輪性の良さも確保している(※注)

2ストロークエンジンを搭載したFK310シリーズは、ガソリン50:オイル1に混ぜ合わせて燃料タンクに補給する混合給油式を採用。混合式のメリットは、市販車に採用されていた分離式とは異なり、白煙が出にくいこと。実際、今回の試乗時では2台ともマフラーエンドから白煙を吹くことは一切なし。また「このエンジンは2ストではなく4ストなの?」と感じさせるほど、2ストエンジン独特のオイルが燃える臭いを周囲にまき散らすこともなかった。

FK310シリーズはモペッドとも電動バイクとも電動アシスト付自転車とも異なる、新感覚のシティコミューター。ちょっとした移動や近所の買い物などでは、電動バイクや電動アシスト付自転車とは一線を画す、軽快で優れた利便性を秘めている。

※注:エンジンを搭載したFK310シリーズは原動機付自転車であるため、エンジンを停止し、ペダルのみで自走を行う時もヘルメットの着用が必要。またエンジンを停止し、ペダルのみで自走を行う時も歩道や普通自転車専用道路の走行は不可。

各車の主な違い

カテゴリー必要な運転免許ナンバープレートヘルメットの着用義務法定速度
FK310シリーズ原動機付自転車原付免許必要あり時速20km/h 
モペッド(トモスなどのペダル付バイク)原動機付自転車原付免許必要あり時速30km/h
電動バイク(定格出力0.6kW以下)原動機付自転車原付免許必要あり時速30km/h
ペダル付電動バイク(定格出力0.6kW以下)原動機付自転車原付免許必要あり時速30km/h
電動アシスト付自転車普通自転車必要なし不要なしアシスト機能は時速24kmまで
※足漕ぎペダルでアシストする場合は20㎞/hを超えても大丈夫

FK310シリーズを製造販売する「フキプランニング」とは?

1999年に発売開始されたFK310シリーズの初号機「FK310STD」。ロングセラーモデルである同車の価格は発売以来変わらない、超バーゲンプライスの8万5580円(消費税込み)。

今回試乗した「FK310シリーズ」は、神奈川県横浜市に本社を置く「フキプランニング」が製造販売する新感覚のシティコミューター。フキプランニングの事業内容は、FK310シリーズの製造販売に加え、自社ポケットバイクの製造販売、レーシングカーの委託設計製作や各種試作設計製作、スピードスケート用シューズの製作、遊園地用乗り物の委託開発製造など多岐に渡る。

フキプランニングは超大手メーカーのロードレース用バイクパーツの設計・製作を手掛けるなど、モーターサイクルを知り尽くした生粋のエキスパート。同社は「スタンダードな商品を、リーズナブルな価格で提供したい」という理念の元、1999年にFK310シリーズの第一号となる原動機付自転車「FK310STD」の製造販売を開始。

FK310シリーズのポイントは、国内で設計・開発・製造した空冷2ストローク単気筒31.7ccエンジン「BE30」を搭載していること。外観デザイン、フレーム形状、ホイール径などを変更し、目的や用途に合わせたモデルを各種ラインナップ。

FK310シリーズは北は北海道から南は沖縄まで、全国各地に代理店を展開。アフターサービスも万全の態勢が整えられている。大径の26インチタイヤを採用した「FK310 LAⅢ classic」、20インチタイヤを採用した「FK310 bb20」の詳細や試乗インプレッションは、別途レポートします!

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