電動自転車? いいえ、エンジン付き自転車です。|26インチビーチクルーザー試乗記|フキプランニング FK310 LAⅢ classic

モペッドとはヨーロッパで人気の、49ccエンジンを搭載したペダル付きミニバイクのこと。写真は自社製の自転車風フレームに、軽量コンパクトな国内設計・国内生産の空冷2ストローク31.7ccエンジン「BE30」を搭載した、欧州製モペッドとはコンセプトの異なる新感覚のシティコミューター「FK310 LAⅢ classic」。製造発売する「フキプランニング」は国内某超大手メーカーのレース用ファクトリーバイクの委託設計製作を請け負う等々、生粋のモーターサイクルのエキスパート。FK310シリーズは北は北海道から南は沖縄まで、全国各地に代理店を展開中。欧州のモペッド、電動バイク、電動アシスト付き自転車とは異なる、独自の構造と乗り味を実現した超個性派のシティコミューターに試乗した。
REPORT●北 秀昭(KITA Hideaki)
PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
取材協力●フキプランニング http://www.fuki.co.jp/

フキプランニング FK310 LAⅢ classic……14万8500円(税込)

26インチ自転車に2スト31.7ccの0.8馬力エンジン搭載!①エンジンのみ②エンジン+ペダルアシスト③ペダルのみの3パターン公道走行OK

写真はオプションの「LAⅢシリーズ専用アルミフロントキャリア ブラック(5000円/税込)」装着車。荷物搭載に便利な専用リアキャリア(6600円/税込)もあり。
購入時、車両はフロントタイヤ、ハンドル、ペダルを取り外した状態で配送される。組み立ては慣れていれば15分程度で完了。詳しい組み立て説明書付属。納期は早い時で3~4日、遅い時で半月が目安(モデルや仕様により異なる)。
大径26インチの前後タイヤはオシャレなホワイトウォール仕様。パターンはワイルドなブロックパターン。サイズは前後とも26×2.125のワイドタイプ。
サイズは全長1,750mm×全幅670mm(ハンドル)/460mm(ペダル)×全高1,050mm。重量は30kg(ミッションオイル250cc含む)。
形状にこだわったアルミ製の燃料タンクや、BE30エンジンを上手くレイアウトした美しい取り回しのフレームワークに注目。
フロントブレーキはVブレーキ、リアブレーキはShimanoハイパーINTER Mを採用。どちらも自転車用の定番アイテム。

レースマシン製作のノウハウを駆使した高強度・低コストの自社フレームを採用

神奈川県横浜市に本社を置く「フキプランニング」が製造販売する新感覚のシティコミューター・FK310シリーズ。同社の事業内容は、FK310シリーズの製造販売に加え、自社ポケットバイクの製造販売、レースマシンの委託設計製作や各種試作設計製作、スピードスケート用シューズの製作、遊園地用乗り物の委託開発製造など多岐に渡る。

フキプランニングは世界的な大手メーカーのロードレース用バイクの設計・製作を請け負うなど、知る人ぞ知るモーターサイクルのエキスパート。「スタンダードな商品を、リーズナブルな価格で提供したい」という理念の元、1999年にFK310シリーズの第一号となる原動機付自転車「FK310STD」の製造販売を開始した。

「アルゴン溶接」を駆使して高強度と低コスト化を実現。

フレームはすべて自社で設計・製作したもの。国内の自転車は、フレームの接合に昔ながらの「ロウ付け(ハンダ付けに似た溶接手法)」を使用するのが定番。一方、フキプランニングはレースマシン製作のノウハウを駆使し、現在では自転車製作の世界的主流である「アルゴン溶接」を採用。これにより高強度を保ちつつ、大幅な低コスト化を実現した。

「BE30」と呼ばれるFK310シリーズ専用設計のエンジンは、国内で開発・製造された空冷2ストローク単気筒31.7cc。最高出力は0.8ps/4500rpm~5500rpmで、2ストエンジンならではの優れた加速性や登坂性を発揮。エンジンはシンプルな設計のため、点検も容易。吸気系はキャブレターを採用している。

「BE30」と呼ばれるFK310シリーズ専用のエンジン。シリンダーは放熱性に優れたアルミ製。腰下部分にはヘッドライト点灯用のジェネレーター(アウターローター/発電機)も導入。

ペイントは傷が付きにくく耐久性も高い「粉体塗装」を採用

傷が付きにくく耐久性も高い粉体塗装を実施。普通自転車に汎用されるシマノ製3段ギアも導入済み。

FK310シリーズは外観デザイン、フレーム形状、ホイール径などを変更し、目的や用途に合わせたモデルを各種ラインナップ。写真は大径の26インチタイヤを採用し、シマノ製3段ギア、センター両立スタンド、専用ハンドル、専用バックミラーを装備した「FK310 LAⅢ classic」というモデル。

フレーム・チェーンカバー・リアフェンダーを新色のボルドーに。フロントフェンダー・ガソリンタンク・テールランプケースをピアノブラックにペイント。ペイントは自社工場にて「粉体塗装」を実施。粉体塗装とはパウダー状の塗料を金属に直接付着させて加熱し、乾燥させて固めることで塗膜とする手法。地球環境にも優しい粉体塗装は密着性が高く、乾燥後は硬くて傷が付きにくく、耐久性も高いのが特徴。

「FK310 LAⅢ」は写真のclassicのほか、ステンレス製前後フェンダー等を装備したリーズナブルな「スタンダード版(11万8800円/税込)」。スポーティなローハンドルを装備した「SportSp(14万8500円/税込)」。ロシアと戦争中のウクライナの子供たちを支援(売り上げの20%を公益財団法人日本ユニセフ協会に寄付)するために製作したブルーとイエロー(ウクライナの国旗色をイメージ)の限定モデル「classic Blue/Yellow(15万4000円/税込)」もラインナップ中だ。

燃料は白煙や臭いが出にくいガソリン50:オイル1の「混合燃料」を使用

2ストロークエンジンを搭載したFK310シリーズは、ガソリン50:オイル1に混ぜ合わせ、メインフレームに搭載された燃料タンクに補給する混合式を採用。混合式のメリットは、かつて市販車に多用されていた分離式とは異なり、マフラーから白煙が出にくいこと。

今回の試乗では、マフラーエンドから白煙を吹くこともなく、「このエンジンは2ストではなく4ストなんじゃない?」と感じさせた。また2ストエンジン独特のオイルが燃える臭いもなし。アイドリングや走行時の排気音も非常に静かで、住宅街での走行も気兼ねなく行えた。

写真左は草刈り機やチェーンソーにも使用できるガソリン50:オイル1の比率であらかじめミックスされた2ストエンジン用混合燃料(1L)。ホームセンターなどで購入可能なお手軽燃料だ。写真右はガソリンに混ぜて使用する2ストエンジン用のゼノア純正エンジンオイル(1L)。

公道の制限速度は時速20km/hだが……31ccエンジンのポテンシャルは?

FK310シリーズは合法的に一般公道の走行が可能。原動機付自転車となるため、公道走行には原付免許(普通自動車免許でもOK)が必要。ウインカーの装備されていないFK310シリーズは道路交通法上、公道での最高速度が20㎞/h未満に制限される。

ペダル付きのFK310シリーズの走行方法は、①エンジンのみ ②急な上り坂で有効的なエンジン+ペダルでのアシスト ③ペダルのみ、以上の3パターンあり。

燃料コックをONにし、センタースタンドを掛けた状態で左右のペダルを吹き込めば、エンジンは簡単に始動。センタースタンドを払い、またがってみた最初の感想は、想像以上に車体が軽い!ということ。軽量コンパクトな空冷2ストローク単気筒31.7ccのBE30エンジンは、見た目以上に重量が軽い模様で、「自転車にエンジンが乗っている」という感覚がまったくない。

ウインカーの装備されていないFK310シリーズは道路交通法上、公道での最高速度が20㎞/h未満に制限。しかし法律を踏まえた上では、足漕ぎペダルでアシストする場合に限り、20㎞/hを超えて走行しても大丈夫という。

FK310シリーズは原動機付自転車となるため、公道走行時はヘルメットの着用が必要。

大径の26インチタイヤを装備したFK310 LAⅢを私有地でテスト走行したところ、最高速度はメーター読みで時速40㎞/hに到達。2ストのBE30エンジンはスポーティで、体感的には最高出力0.8馬力という数値以上のパワフルさを発揮。

BE30エンジンはメーカーによってかなりデチューンされている模様で、その潜在能力は極めて高いと推測(製作時のテスト走行では時速60km/hに達したとの噂あり)。チャンバー装着+メインジェットの番手変更、またキャブレターの大径化で、眠ったままのポテンシャルはさらに引き出せそうだ。

レバー型のスロットルは右グリップ側に設置されており、親指で操作するしくみ。平坦路はもちろん、傾斜の緩やかな一般的な坂道ならば、足漕ぎのペダル補助がなくてもスムーズに走行してくれる。

シマノ製3段ギアはペダルのみの走行時はもちろん、エンジンのみの走行時にも活躍。右手親指でスロットルを開けながらスピードを上げつつ、左グリップにあるシマノ製ギアを回転させて2速~3速へとシフトアップすれば、スクーターのごとくスムーズに加速していく。

前後ブレーキは自転車用だが、時速20㎞/hの制限速度内では制動力は十分。またフレームや足周りの強度もまったく問題なし。ハンドルのブレやフレームの捻じれもなく、安全に楽しくライディング可能だ。

シマノ製3段ギア+大径26インチタイヤでペダルのみの走行もスムーズ

エンジン左側に設置された、オイルキャップのような丸くて黒い凸状のツマミを指で回転させれば、エンジン走行からペダルのみの走行に切り替え可能。
エンジンを搭載したFK310シリーズは原動機付自転車であるため、エンジンを停止し、ペダルのみで自力走行を行う時もヘルメットの着用が必要。またエンジンを停止し、ペダルのみで自走を行う時も歩道や普通自転車専用道路の走行は不可。

今度はペダルのみで走行してみる。エンジン走行からペダルのみの走行の切り替えは、エンジン左側に設置された、オイルキャップのような丸くて黒い凸状のツマミを指で回転させればOK。FK310 LAⅢ classicの車体重量は30kg。この軽さはペダルのみの自力走行時にも発揮する。

自転車として利用する自力走行でも、車体のセンター下部にレイアウトされた軽量コンパクトなBE30エンジンは、“重さ”をまったく感じさせない。急激な小回りや急停車時も挙動を崩すことなく、バランスの良い走りを実現。

FK310 LAⅢ classicには自転車用のシマノ製3段ギアが搭載されており、走り出しから巡行までスムーズに走行可能。通常の26インチサイクルと変わることなく、快適にライディングできた。

※注:エンジンを搭載したFK310シリーズは原動機付自転車であるため、エンジンを停止し、ペダルのみで自走を行う時もヘルメットの着用が必要。またエンジンを停止し、ペダルのみで自走を行う時も歩道や普通自転車専用道路の走行は不可。

リッター43kmの低燃費。FK310シリーズには高額モデルにはない、大人の魅力あり

人気急上昇中の電動バイクや電動アシスト付自転車は、電動モーターやバッテリーの搭載で、どうしても車体重量が重くなりがち。航続距離もエンジン車ほど伸びないのがネックとなる。

一方、FK310シリーズは通常走行時で1リッター43km(メーカーカタログ値)の低燃費性能を発揮。また、エンジン搭載車ながら驚くほどの軽量さと軽快感を実現。加えて自転車としての優れた機動性や駐輪性の良さも確保している。

FK310シリーズの購入層は、「手軽にバイクを楽しみたい」「現代のバイクは高性能だけど価格が……」と感じる50代以上がメイン。FK310シリーズは北は北海道から南は沖縄まで、全国各地に代理店を展開中。

モペッド・電動バイク・電動アシスト付自転車のどれとも異なる、新感覚のシティコミューターのFK310シリーズ。電動化が進む中、FK310シリーズは内燃機の良さを今一度じっくりと吟味したい大人の一台といえる。

ディテール

フレームはすべて自社で設計し、自社工場で製作。フレーム・チェーンカバー・リアフェンダーは新色のボルドーにペイント。傷が付きにくく耐久性も高い粉体塗装を実施。
LEDフロント砲弾ライトはエンジン始動時、アウターローターにて発電・点灯。FK310シリーズはすべて法定速度20km/h未満の仕様なので前後のウインカーとリアのストップランプは非装着。
日没後にエンジンを切って自力走行する場合は、フロントタイヤ接触型の発電機でヘッドライトを点灯させるしくみ。
オプションの「LAⅢシリーズ専用アルミフロントキャリア ブラック(5000円/税込)」装着車。荷物搭載に便利な専用リアキャリアもラインナップ。
鍵付きタンクキャップを採用した燃料タンク本体はアルミ製。容量は約1.8L。燃費は43km/L(カタログ値)なので、満タンならば80km前後走行可能。
新色のボルドーにペイントされたリアフェンダー。傷が付きにくく耐久性も高い粉体塗装を採用。
スプリングを導入した肉厚のサドルシート。座り心地が良く、疲労感も軽減。シート高は800mm~1,050mmに調整可能。
大径26インチの前後タイヤはホワイトウォールタイプ。前後とも26×2.125のワイドサイズで、ワイルドなブロックパターンを採用。
スリムで美しいマフラー。排気孔は地面方向にレイアウト。
街乗りしやすいワイドな専用ハンドルに、小ぶりな専用バックミラーーを組み合わせ。前後ブレーキ(左レバーはリアブレーキ・右レバーはフロントブレーキ)は自転車用を採用。
ASSIZEの液晶デジタル式スピードメーターを装備。右側の黒いボタンはエンジン停止用のキルスイッチ。
左グリップの根元を回して変速させるシマノ製3段ギアを装備。奥の黒いレバーは、冬場のエンジン始動時等に重宝するチョークレバー。
右グリップ側に固定されたスロットルレバーは右手親指で操作するしくみ。

FK310シリーズと各車の主な違い

カテゴリー必要な運転免許ナンバープレートヘルメットの着用義務法定速度
FK310シリーズ原動機付自転車原付免許必要あり時速20km/h 
モペッド(トモスなどのペダル付バイク)原動機付自転車原付免許必要あり時速30km/h
電動バイク(定格出力0.6kW以下)原動機付自転車原付免許必要あり時速30km/h
ペダル付電動バイク(定格出力0.6kW以下)原動機付自転車原付免許必要あり時速30km/h
電動アシスト付自転車普通自転車必要なし不要なしアシスト機能は時速24kmまで
※足漕ぎペダルでアシストする場合は20㎞/hを超えて走行可能

フキプランニング FK310 LAⅢ classic 主要スペック

全長×全幅×全高1,750mm×670mm(ハンドル)/460mm(ペダル)×1,050mm
重量30kg(ミッションオイル250cc含む)
シート高800mm~1,050mm
エンジン(BE30)空冷2ストローク単気筒ピストンバルブ式 フキプランニングオリジナル
排気量31.7cc
吸気系キャブレター
最大出力0.8PS/4,500 ~ 5,500rpm
最大トルク0.15Kgm/3,500 ~ 4,500rpm
最大速度20km/h
燃費1Lあたり43km (通常走行)
燃料タンク容量およそ1.8L(タンクキャップにいたずら防止用鍵付き)
始動方法ペダルスタート
フレーム材質ハイテンスティール
変速機内装3段ギア
前ブレーキVブレーキ
後ブレーキShimanoハイパーINTER M
前後タイヤサイズ26”×2.125”
スタンドセンター両立スタンド
ヘッドライトLEDフロント砲弾ライト
スピードメーターASSIZEデジタルスピードメーター
価格148,800円(消費税込み)

キーワードで検索する

著者プロフィール

北 秀昭 近影

北 秀昭