目次
スズキ・バーグマンストリート125EX……317,900円(2023年3月27日発売)
ジェントルなSEP-αエンジン、スズキ初のアイドルストップも好印象
MT車を含む原付二種クラスにおいて、国内で最も売れているのがホンダのPCXだ。2022年の国内出荷台数ランキングを見ると、2位のCT125・ハンターカブより約6,000台も多く、またスペック的に直接のライバルと目されていたヤマハ・NMAXより10倍以上も売れているのだ。
そんなPCX圧勝状態の原付二種スクーター界にニューカマーがやってきた。アドレス125、アヴェニス125に続くスズキからの刺客、バーグマンストリート125EXだ。この3機種はプラットフォームを共有するが、バーグマンストリート125EXはスズキ二輪初となるアイドリングストップ機構や、スターターを兼用するジェネレーター(ホンダのACGスターター、ヤマハのスマートモータージェネレーターと同じ)を新採用。さらにリヤホイールを10インチから12インチに大径化するなどして、先の2機種とは大きく差別化を図っているのだ。
まずはそのエンジンから。SEP-αと名付けられた124cc空冷SOHC2バルブ単気筒は、サイレントスターターシステムによって「キュルルルッ」というギヤ鳴りを一切響かせず、その名のとおり静かに始動する。スズキ車ではお馴染みのイージースタートシステムも採用しているので、セルボタンをワンプッシュするだけで始動できるのもうれしい。
スロットルを開けると、低めの回転域から遠心クラッチがつながり、すぐに発進する。空冷ながらメカニカルノイズがほとんど耳に届かず、不快な微振動もなし。最高出力は8.3psで、PCXの12.5psより約34%も低いが、車重が21kg軽いこともあってか、スタートダッシュの印象にそこまでの開きは感じない。
急な上り勾配が続くワインディングロードでは非力さが露呈するが、街中や平坦路であれば交通の流れに乗ることはたやすい。また、スロットルレスポンスは急かされすぎずダルすぎずのちょうどよさで、ビギナーでもすぐに扱えるはずだ。注目のアイドリングストップについては、停止や再始動のタイミングは他メーカーと同様であり、特に不満は感じなかった。
インドという生産国のお国柄なのか、キック始動ができるというのも要注目ポイントの一つだ。バッテリーは日常点検における1項目であり、本来は適切なタイミングで交換すべきだが、とはいえ早朝にセルが回らなかったときの絶望感と言ったら……。ちなみにアドレス125とアヴェニス125にもキックペダルは付いており、スズキの良心が伝わってこよう。
タイヤが細いがゆえの軽快なハンドリング、車体の軽さもうれしい
写真を見てもお分かりのように、バーグマンストリート125EXのタイヤは前後とも非常に細い。具体的には、PCXよりもフロントで2サイズ、リヤで3サイズも細いのだ。
ゆえに、見た目にやや足周りが心許ないが、ハンドリングは非常にナチュラルであり、接地感も潤沢に伝わってくる。倒し込みや切り返しの軽さは、車重だけでなくこのタイヤサイズの設定も効いているはず。そして、峠道での下りでは想像以上に安心感があった。アンダーボーンというフレーム形状は、強めのブレーキングでヘッドパイプ付近に剛性不足を感じやすいが、バーグマンストリート125EXにそうした症状はほとんどなく、コーナーの進入から狙い通りのラインをトレースできる。インドの悪路で車体が鍛えられているからだろうか、基本設計は優秀と言えるだろう。
ブレーキは、フロントがφ190mmディスク、リヤがφ130mmドラムで、左レバーで前後が連動する。コントロール性、絶対制動力ともに不足はないが、アヴェニス125のようにリヤブレーキロックレバーあればなお良しと言ったところだ。
さて、ユーティリティ面について。シート下のトランクスペースはやや小さめで、コンパクトなジェットヘルなら入るかも、というレベル。収納力を高めたいのであれば、純正アクセサリーのトップケースなどを追加する必要があるだろう。フロントインナーボックスは左右にあり、リッド付きの左側にはスマホの充電に重宝するUSBソケットが備えられてる。右側はリッドがないのでペットボトルを出し入れしやすく、前後2か所のコンビニフックは買い物ユーザーにとって便利なことこの上ない。
試乗中、平均燃費計は常に40km/ℓ台中盤~後半の数値を表示しており、実燃費の良さを確認。ちなみにWMTCモード値はPCXを約15%も上回るのだ。燃料タンク容量はPCXの8.1ℓに対して5.5ℓと少なく、通勤通学ユーザーにとってはこれがネックとなりそうだが、フラットフロアによる乗り降りのしやすさや価格の安さは大きなアドバンテージとなるだろう。
ライディングポジション&足着き性(175cm/68kg)
シート高780mmはアヴェニス125と同値で、アドレス125より10mm高い。764mmを公称するホンダ・PCXよりは腰高な印象だが、とはいえ足着き性は及第点レベルだ。スズキ3兄弟の中では唯一、足を前方へ伸ばせるフロアデザインなので、距離を延ばすほどにこのシットインポジションのありがたみを実感できる。