目次
1,マンホールや道路の継ぎ目はスリップしやすい
まず、気をつけたいのが、路面にあるマンホールのふたや、橋や道路にある金属の継ぎ目。これらが雨で濡れている時は、それらの上を走るとタイヤがとても滑りやすい。特に、交差点やカーブなどを曲がる際に、スピードを出し過ぎていたり、車体をかなりバンクさせたりしていると、スリップして転倒する危険性はかなり高くなる。
ただでさえ、濡れた路面が滑りやすい雨の日は、速度を抑え、カーブなどは車体を起こし気味にして通過したいもの。また、マンホールのふたは、できればその上を通らないラインを意識して走る方がいい。一方、橋などにある継ぎ目は、道路を横切っている場合がほとんどなので、上を通らない訳にはいかないため、雨の日は特にゆっくりと走りたい。
ちなみに、特に、バイク初心者などで、雨の日にそうしたところを走ったことがないライダーは、リラックスして走ることも大切だ。転倒が怖いことで、上半身に力を入れすぎてしまうと、ハンドルをこじってしまうなどで、逆に転びやすくなる。
雨の日でも、普段と変わらず、ニーグリップなど必要なこと以外は体の力を抜いていた方が、もし車体やタイヤなどに挙動変化が起きても対処しやすい。あくまで、雨の日は、速度をできるだけ落とし、コーナーやマンホール、継ぎ目などでは車体を起こし気味にし、力を抜いて楽に走ることが重要だ。
2,意外に滑る濡れた白線
車線の中央や左側、交差点の横断歩道などにある塗装されたラインも、濡れていると滑りやすい。例えば、渋滞路でクルマの左橫をすり抜けようとするとき。車線左側にある白いラインの上にタイヤがのってしまうと、かなり滑りやすい。
特に、スイスイとすり抜けをしていて、渋滞しているクルマの影から歩行者などが出てきたことで、慌てて急ブレーキをかけたとき、思わず白いラインにタイヤがのってしまうと最悪。速度をさほど出していなくても、フロントタイヤがスリップして転倒したり、歩行者をまきこんだ人身事故につながる危険性もかなり高い。
すり抜け走行をおすすめできないのは雨の日だけではないが、特に路面が濡れている際はやめた方がいいだろう。
3,雨の降り始めはホコリなどが浮き出て滑りやすい
雨の降り始めに「濡れないよう急いで帰ろう」などと、速度を上げたりすることも危険だ。路面があまり濡れていない状態でも、路上にホコリやゴミが浮き出てくることで、逆に滑りやすくなっていることが多いからだ。
これは、一般道だけでなく、例えば、ツーリング先で高速道路などを走っているときも同様。雨が降り始めたハーフウェットの路面状態でも、スピードは控えめにし、コーナーでは車体を起こし気味にすることが大切だ。また、雨天時は、制動距離も晴れの日より長くなるため、先行車との車間距離を十分に取ることも重要だ。
4,ハイドロプレーニング現象にも注意
雨がかなり降った状況では、ハイドロプレーニング現象にも注意したい。これは、タイヤと路面の間に水の膜ができることで、ハンドル操作やブレーキが効かなくなってしまう現象だ。そうなると、ハンドルを取られたりして制御不能となるし、止まろうとしても止まれなくなる危険性がある。
特に、高速道路など速度がある程度高い道路で起こりやすい現象だといわれているが、一般道でも起こる可能性はある。ハイドロプレーニング現象は、特に、道路に水溜まりがあるような場所で起こりやすいので、高速道路であればそうした場所をできるだけ避けて走りたい。また、一般道の場合で、水溜まりなどを避けられないケースでは、十分に速度を落とす(できれば徐行する)必要がある。
いずれにしろ、何度も言うが、雨の日は、スピードを控えめにすることが一番だといえる。
5,タイヤが減っているのも危険
かなり摩耗した状態のタイヤは、雨が降っていなくてもグリップ力は低い。タイヤは、接地面(トレッド面)と路面が擦れるときの摩擦力で前に進んだり、コーナーで踏んばるためだ。
路面が濡れて、ただでさえ滑りやすい雨の日では、余計に危ない。また、摩耗で溝の減ったタイヤは、前述のハイドロプレーニング現象も起こりやすいといわれている。
さらに、ゴムが経年劣化したタイヤは、もし溝があったとしても危険。これは、雨の日だけではないが、劣化して亀裂や傷があると、そこから空気が抜けて、走行中に適正な空気圧を保たない状態になってしまうことや、最悪はバーストしてしまう危険性もある。
タイヤは、ハンドリングやブレーキングなど、さまざまな走りに大きな影響を与えるものだ。特に、2輪だけでバランスを取りながら走るバイクは、4輪があるクルマ以上に走行安定性や制動力などに関係してくる。梅雨時期だけに限らず、摩耗したり、ゴムが劣化したタイヤは、早めに交換したいもの。また、摩耗や劣化のないタイヤでも、走行前に空気圧の点検をきちんとすることは、梅雨の時期でも安全に走行するための第一歩だといえる。
6,ヘルメットやレインウェアで注意したいこと
雨の日に安全な走行をするためには、身に着けるアイテムにも注意したい。まずは、ヘルメットのシールド。雨の日は、かなり視界も悪くなるため、前方ができるだけ見やすくなるような工夫やメンテナンスを事前にやっておきたい。
例えば、シールドの表面に撥水コーティングなどを施せば、水滴をはじくことで視界を確保しやすくなる。バイクには、クルマのフロントウインドウのようにワイパーがないので、これはかなり有効だ。
また、雨の日は、シールドの内側が曇りやすい。そのため、曇り止めスプレーなどを使うことも効果がある。最近は、ピンロックシートなど、シールドの内側に装着することで曇りを抑えるアイテムも各ヘルメットメーカーなどから販売されている。筆者も愛用しているが、雨の日はもちろん、冬場の寒い日なども曇りがほぼ出ないため、一年中装着できることで重宝している。
ちなみに、筆者のように、メガネをかけているライダーは、シールドは曇らなくても、メガネが曇ってしまうこともある。そのため、メガネ自体に曇り止めのスプレーやシートなどを施すことも有効だ。
あと、ヘルメットを脱いでいた時、急な雨により髪が濡れてしまったら、そのままヘルメットを被ると、やはりシールドが曇りやすい。そうした場合は、乾いたタオルなどで髪を一度拭き、水分をある程度除いてからヘルメットを装着するほうが曇りがでにくい。
なお、レインウェアは、ワンサイズ上を選んだ方がいいだろう。ツーリング先で急に雨が降ってきたときなど、ライディングウェアの上から着ることも多いからだ。また、長年使って防水効果がなくなってしまったレインウェアは、できれば新しいモノに買い替えたい。雨の中に走行していて、内側の服が濡れてしまうと、体温を奪われてしまい、疲労しやすくなるからだ。特に、ツーリング時は集中力がなくなり、危険でもある。
ほかにも、雨用のグローブやブーツカバーを使うなど、とにかく、雨の走行では、できるだけ体が濡れないようなアイテムを使ったり、工夫をすることが大切だ。
7,泥はね運転は交通違反
最後は、走行中のマナー。路面にある水溜まりなどに入ってしまい、歩行者に雨水や泥をかけないように注意したい。これは、雨が降っている時だけでなく、止んだ後にまだ水溜まりなどが残っているときも同様だ。そして、もし、やってしまうと法律違反にもなってしまう。
道路交通法第71条の1には、
「ぬかるみ又は水たまりを通行するときは、泥よけ器をつけ、又は徐行する等して、泥土、汚水等を飛散させて他人に迷惑を及ぽすことがないようにすること。」
といった規定がある。法律が定める「運転者の遵守事項」のひとつだ。
もし違反してしまうと「泥はね運転違反」となり、2輪車では6000円、原付では5000円の反則金も課せられる。違反点数こそないものの、れっきとした歩行者への迷惑行為だし、そもそもマナーとしてもよろしくない。雨の前後は、くれぐれも歩行者と安全な距離を保ち、泥はねなどもしないような走行を心がけたい。
豪雨時は危ない場所に近づかない
以上は、あくまで「普通の雨」が降ったときの注意点だ。近年、大きな被害をもたらしている線状降水帯などによる豪雨時は、かなり危険なのでバイクに乗ることはできるだけ避けたい。
もし、出先や旅先で豪雨に遭遇してしまったら、安全が確認できるまで避難するのはもちろん、豪雨がさった直後も危ない場所には近づかないようにしたい。例えば、水量が増している河川や、雨水が溜まりやすいアンダーパス、土砂崩れの危険がある場所などだ。くれぐれも命を最優先にした行動をこころがけることが重要だ。