プジョーのスクーターはズバリ、カッコいい。ツイート125GT試乗レポート

バイク製造125年を迎えたフランスのプジョーは、日本国内では四輪車のメーカーという印象が強いと思います。しかし世界的には、二輪車メーカーとしても広く知られています。そして2023年、二輪車メーカーというブランドの原点に回帰するとともに、新しい時代を築く旗手となる「ニュージェネレーションライン」を発売しました。その中の1台がツイート125GTです。

PHOTO●山田俊輔(YAMADA Shunsuke)
協力●プジョーモトシクル輸入販売元 aidea株式会社 https://aidea.net/

プジョー・ツイート125GT……390,500円

ニュージェネレーションラインがプジョーブランドを主張

1890年に世界初の量産四輪車を世に送り出したプジョーは、1898年のパリモーターショーで二輪車を発表。翌1899年から発売を開始しました。つまり、現存する世界最古の二輪車メーカーでもあるのです。そして今年、「プジョーモトシクル」は125周年を迎えました。このアニバーサリーイヤーに、二輪車メーカーというブランドの原点に回帰すると同時に、新たな時代を築く旗手となるべく発売されたのが「ニュージェネレーションライン」シリーズです。 ニュージェネレーションラインは、連綿と受け継がれてきたプジョーブランドのDNAを具現化したモデルで、プジョーブランドのアイデンティティである「ライオンズクロー(ライオンのかぎ爪)」の意匠が共通の特徴になっています。 「ライオンズクロー」はすべての四輪車に採用されていて、二輪車にも導入してデザインの共通化を図ることで、プジョーブランドの独自性と存在感を高めることを目指しています。

 プジョーモトシクルのラインナップは従来、小型スクーターが中心となっていました。しかし新たに登場したのは、小型二輪カテゴリーとなるスクーターやロードスターを含めたモデル群です。そうした中から今回、ツイート125GTという原付2種スクーターをロードインプレッションしてみました。

 エッジの立ったシャープなボディラインが新時代のモデルらしさを表現しています。フロントカウルには、プジョーブランドのアイデンティティである「ライオンズクロー」を模したLEDのデイタイムランニングライトがあしらわれています。さらに、LEDのテールランプにも同様の意匠が採用されていて、個性的かつ特徴的なデザインを実現しています。  ツイートにはこの125と200があるのですが、ボディは200がベースになっているようで、原付2種としてはやや大柄です。都市部での移動が中心の用途ではマイナスの要素になるかもしれません。しかし休日にちょっと遠くまで足を延ばしてレジャーを楽しみたいという人にはちょうどいいサイズだと思います。

足つき性(ライダー身長:178㎝)

200と共通のボディは125㏄の原付2種としてはやや大柄。そのためポジションにはゆとりがあって快適に走行できる。欧州モデルらしくシート高は790㎜と高めの設定。著しく足つきが悪いわけではないが、同カテゴリーのスクーターと比較すると足は着けにくい。だがステップスルーのフラットフロアは乗降しやすく、利便性は高い。足置きの自由度が大きいのもありがたい

乗車するとやはりポジションにゆとりがあります。前後16インチタイヤを装着し、シート高も790㎜あるので、足つき性が抜群というわけにはいきませんが、ステップスルータイプのフラットフロアは乗降性が良く、気軽に乗れるというスクーターの特色がしっかり感じられます。

スクエア形状のLCDメーターは日中でも見やすく、スイッチ類の操作性にも違和感はありません。またフロント部にはキー付きグローブボックス、USBソケットが装備してあるので、日常の使い勝手は良さそうです。もちろんシート下はヘルメット1個が収納できるトランクになっています。

セルスイッチ操作で始動した空冷SOHC2バルブ単気筒エンジンは、気になる振動もなく安定したアイドリングをしてスタートするのを待ちます。排気音は日本製スクーターに比べたやや大きめですが、早朝の出発にもそれほど気を遣わずにすみそうです。スタートすると、わずかなタイムラグがあってトルクが立ち上がってきます。極低速でのレスポンスにやや緩慢なところがあって、アクセル開度と実際の加速に少しの差がある感じです。しかし通常のスピードである20km/h辺りからはアクセルに連動した加速性を発揮してくれます。全回転域でパワフルな印象はないのですが、スムーズなパワーフィーリングで疲労感のない走行ができるのが特徴だと感じました。スポーティというよりコンフォータブル、そんなスクーターだと思います。これなら休日のツーリングに最適です。

ツイート125GTには前後16インチタイヤが装着してあります。これは欧州に多い石畳の道での走行に配慮したもので、実際に荒れた路面での走破性は、小径タイヤのモデルに比べて高いです。さらに1330㎜とホイールベースも長めなので、直進安定性は高いと感じました。

こうした高い安定性を維持しつつも、ハンドリングは素直で軽快です。106㎏と車重が軽いこともあって取り回しに優れているだけじゃなく、この軽量ボディが軽快な走行性に貢献しています。前後サスペンションの動きも良く、総体的に乗り心地が良かったのが印象的です。

ブレーキは前後シングルディスクで、CBS(前後輪連動ブレーキ)を採用しています。制動力に関してはまったく不足はなく、かなり強力な効きを発揮してくれました。軽量ボディの効果もあるはずです。余談ですが、170㏄エンジンを搭載したツイート200GTも同じ車重なので、高速道路を走る機会が多い人にはそちらが最良だと思います。ちなみに200のほうは、ブレーキはABS装備となっています。

プジョー・ツイート125GTの販売価格は390,500円。同クラスの日本製スクーターとほとんど変わりません。なので、スクーターといえどもラージホイールがいい、他とは異なる個性派に興味がある。そうした考えを持っている人の選択肢になるのではないでしょうか。

前後16インチタイヤとロングホイールベースによって、直進安定性、コーナリング安定性ともに高い。走行性だけで見れば、ロードスポーツバイクだ
106㎏の軽量ボディは取り回し性に優れるだけでなく、軽快なハンドリング特性にも貢献している。さらに軽量なことでサスペンションの作動性も高まり、荒れた路面でも姿勢変化の少ない安定した走りが可能だ
心臓部には空冷SOHC2バルブ単気筒エンジンを採用。日本製スクーターの水冷エンジンと比較すると、最高出力、最大トルクともに下回るが、日常使用でパワー不足を感じる場面は少ない。ただし、極低速でトルクの線が細く、出足が遅れるのが気になるポイント。パワーフィーリングは全体にスムーズなので、長距離移動にも疲労しにくいし、ストレスの少ない走行が楽しめる
16インチアルミキャストホイールにシングルディスクブレーキを装備。軽車重ということもあって、制動力は高い
LEDヘッドライトはステアリングマウントなので進行方向を照らしてくれる。フロントカウルにはプジョーブランドのアイデンティティである「ライオンズクロー」を模したLEDのデイタイムランニングライトがあしらわれている
ハンドルはカバードタイプとしていて、スイッチ類はカバーに装備される
快適なタンデム走行が可能な大型ダブルシート。グラブバー兼用のリアキャリアも標準装備する
買い物に便利なユーティリティハンガー、キー付きグローブボックス、USBソケットを装備。どれも使い勝手が良い

リアにもシングルディスクブレーキを装備する。ABSは採用せず、前後輪連動のCBSとしている
LEDテールランプ/ストップランプも「ライオンズクロー」デザインが取り入れられている
スイッチは必要最小限にとどめられていてシンプルだ
キー操作で開くシートの下部はヘルメット(型による)1個が収納できるトランクスペースとなっている。このあたりの利便性に関しては、スクーターならではといったところだ
スピード表示はもちろん、距離、ガソリン量、時刻、外気温を表示するLCDメーター。昼夜を問わず、走行中も表示情報が見やすい

主要諸元

全長×全幅×全高:2,020×725×1,165 mm
ホイールベース:1,330mm
シート高:790mm
車両重量:106kg
エンジン:空冷4ストロークSOHC 2バルブ単気筒
排気量:125cc
最高出力:8.4kW/8,500rpm
最大トルク:10.3Nm/6,500rpm
燃料供給方式:インジェクション
始動方式:セルフ式
燃料タンク容量:5.5L
変速機:無段変速
懸架方式:フロント:テレスコピック
懸架方式:リア:ユニットスイング(ツインショック)
タイヤ:フロント:110/70-16
タイヤ:リア:110/70-16
ブレーキ:フロント:ディスク(CBS)
ブレーキ:リア:ディスク(CBS)
カラー:グラファイトグレー
希望小売価格(税込):¥390,500
保証:2年間走行距離無制限

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著者プロフィール

栗栖国安 近影

栗栖国安

TV局や新聞社のプレスライダー、メーカー広告のモデルライダー経験を持つバイクジャーナリスト。およそ40…