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ヤマハ・YZF-R15 ABS……550,000円(2023年10月16日発売)
ハンドリングはYZF-R125と基本的に同質であり、よりイージーに扱える
YZF-R15は、R125と同じ2008年に登場した。初代からスチール製デルタボックスフレームを採用しており、2011年の2代目でスイングアームがアルミ製に。2017年にはフロントフォークが倒立式となり、2021年9月のモデルチェンジで現在のR7フェイスとなった。ちなみに2012年と2013年には、YSPを通じて国内販売されたこともある。
ちょうど1年前、バイク館イエローハット主催のプレス向け試乗会で、筆者はインド仕様のYZF-R15に試乗している。インドでは標準仕様の「R15 V4(バージョン4、第4世代の意)」と、クイックシフターを標準装備する上位仕様の「R15M」があり、私がテストしたのは後者だ。教習所というタイトなコースではあったものの、同じ軽二輪枠のYZF-R25よりもスーパースポーツに近いハンドリングを有していたことに感心。加えて、2チャンネル式のABSやオン/オフ可能なトラクションコントロール、スマホとの連携機能であるY-コネクトを搭載するなど、兄貴分顔負けの装備にもうれしくなった記憶がある。
今回試乗したのは、インドネシアで生産され、日本仕様として販売される正規ラインナップモデルだ。インド仕様との大きな違いは標準装着タイヤで、日本仕様はIRCの定番銘柄であるロードウィナーRX-01を履くのに対し、インド仕様は国内の大手タイヤメーカーであるMRF製を選択。しかも、リヤはRX-01のバイアスに対してラジアルを採用しているのだ。
まずはハンドリングからお伝えしよう。基本的にはR125と同質であり、倒し込み初期から積極的に旋回しようとするさまは限りなくスーパースポーツ的だ。これはオールマイティに扱えるYZF-R25よりも切れ味が鋭いといっていいだろう。試乗車は積算距離500km未満の新車ということもあり、サスペンションの動きにやや渋さは残っていたものの、リヤはリンク式なので深く沈んだ際にしっかりと踏ん張ってくれ、これが小排気量車ながら上質さを感じさせる要因となっている。
わずか31ccとはいえ、R125よりも排気量が大きい分だけ低回転域でのトルクが厚く、コーナーの手前で2速にシフトダウンするか、それとも3速のままで進入しようか迷うような場面で、R15はシフト操作をサボっても力強く立ち上がれるというイージーさがある。一方、R125はパワーバンドを自然とキープしたくなるような小排気量車ならではの醍醐味があり、楽しさにおいては甲乙付けがたいというのが正直なところだ。
低~中回転域のトルクが増すだけでなく、パルス感も強まるエンジン
続いてはエンジンについて。R125との違いはボア径で、φ52mmからφ58mmへと拡大し、排気量を124ccから155ccへ。合わせて圧縮比を11.2:1から11.6:1へと高めており、最高出力は4psアップの19psとなっている。なお、レッドゾーンの始まる回転数はR125と同じ1万1000rpmだ。
R125から乗り換えると、エンジンの始動時から違いが分かる。アイドリング時の排気音のボリュームはさほど変わらないものの、R15の方が体へ伝わる振動が大きめなのだ。ローにシフトしてスタートすると、5,000rpm付近までのトルクがR125よりも厚く、スロットルの動きに対してキビキビと反応してくれる。ちなみに、R15は排気量が大きい分だけロングレシオになっており(ドリブンスプロケットをR125の52Tから48Tへ)、具体的には100km/hでの回転数が500rpmほど下がる。これの影響もあってか、定地燃費もWMTCモード値もR125よりデータがいいのだ。
可変バルタイ機構VVAがローカムからハイカムへと切り替わるタイミングは、R125と同じ7,400rpmとなっている。ワインディングロードにおいて、R125は自然とハイカム領域をキープしたくなるのに対し、R15はローカム領域でもしっかりトラクションがかかってくれるので、一つ上のギヤでも走れてしまうところに余裕を感じさせる。一方、ネガティブな要素というほどでもないのだが、巡航時に感じる振動はR125よりもやや硬質で、これをパルス感と捉えるか、それとも疲労を増長させる要因と捉えるかは人それぞれだろう。
とはいえ、車体の潜在能力とエンジンパワーとのマッチングという点では、R15の方が明らかに上で、バイブレ製キャリパーによる優れたブレーキ性能も含め、全てがスポーティな方向でまとめられている。日本仕様はY-コネクトこそ省略されているものの、それでも装備に関しては軽二輪クラスにおいて上位にあり、コストパフォーマンスは非常に高い。前傾姿勢がきついのでロングツーリング向きではないが、街乗りだけでなくたまにサーキットでいい汗をかきたいという人にとっては最良の選択になるだろう。