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VESPA GTS Classic150……649,000円
ロングセラーモデルには共通点があると思います。それは明確なコンセプトの下で構築されたデザインの基本を何十年も維持し続けているということです。日本が世界に誇るスーパーカブがそうです。そしてベスパもまた同じ道を歩んでいるモデルなのです。時代とともに細部の変更はもちろんありますし、エンジンや足回りなどの主要パーツも新しい技術を取り入れながら進化させています。このようにベスパGTSは伝統と革新を融合させたスクーターだといえるのです。
スムーズなエンジンと素直なハンドリング特性に親近感を抱く
GTSシリーズは現行ベスパを代表するモデルで、ラインナップも豊富です。その中から今回試乗したのは、標準モデルであるGTSのクラシックタイプで、150㏄の水冷単気筒i-getエンジンを搭載したモデルです。 ボディカラーはシックな色合いのグリーンとベージュが用意されていて、クラシックの名にふさわしい印象に仕上がっています。スタイリングもベスパの伝統を継承したエレガントでファッショナブルなデザイン。見飽きることがまったくない見事なフォルムは、ユーザーに大きな喜びをもたらしてくれます。モダンクラシックという呼び方がこれほど似合うモデルも少ないでしょう。
最近は日本製スクーターにも150ccクラスのモデルが増えていますが、それらと比較するとベスパGTSクラシック150のボディはやや大柄です。178cmと長身のボクがシートに跨っても、両足のつま先が着くという状態です。データ上は790㎜のシート高となっていますが、シートやボディの形状が足つきを悪くしているようです。でも専用のローシートが別売されているので、不安のある人は変更するといいでしょう。 独自のスチールモノコックボディを採用しているGTSクラシック150は、それなりに車重もあります。したがって、足つき性を含めて取り回しにはちょっと手こずるところがあります。こんなふうにいうと、なんか大変そうだなぁと思われてしまうかもしれないのですが、あくまでも日本製の同クラスのスクーターと比較した場合の印象で、今回も実際に狭いスペースで向きを変えたりしましたが、取り立てて面倒だとか重たくて大変だったなんていうことはありませんでした。ボディが大きいというのは事実ですが、取り回しがとくに悪いということはありません。 さて、ちょっと大柄のこのボディはネガなことばかりじゃありません。座面が広く座り心地の良いシートに腰を下ろし、広いフロアに足を載せ、そしてフルカバードされたハンドルに手を添えると、上体が直立するなんとも姿勢の正しいライディングフォームとなります。そんなポジションに窮屈さは皆無です。150ccクラスのスクーターの多くは原付二種の125㏄スクーターとボディを共用していることが多く、取り回しはいいけどゆったりと乗れる感覚はない!というのが一般的です。しかしGTSクラシック150は軽二輪クラスと同等の快適性を実現しています。コミューターとして都市部の移動に使うだけじゃなく、休日にツーリングを楽しむなんていう使い方にも見事に対応してくれるのです。しかも、軽二輪スクーターなので高速道路を利用して足を延ばしたツーリングだってできてしまうのですから、まさに1台3役の活躍ぶりです。
最新のGTSクラシック150ではキーレスエントリーシステムを採用しています。そのため専用のリモコンキーを携帯した状態で、メインキースイッチを操作すればイグニッションのオン、オフが行えます。スタイルはクラシカルでもしっかりと最新の技術が導入されているというわけです。 スタートスイッチで始動させると、150㏄のi-getエンジンは静かなエキゾーストサウンドを奏でながらアイドリングします。アイドリング状態での鼓動がなんとも心地よいと感じました。 アクセルを開けると非常にスムーズな加速を見せてくれます。オートマチックCVTなので回転フィーリングが滑らかということもありますが、エンジン特性そのものがフラットなのだと思います。16ps弱の最高出力は排気量に見合った性能で、市街地などの一般道を走っていて特に力不足を感じることはありません。実際、交差点などでの発進加速で他車を一歩リードできる実力があるので不安は感じませんでした。このモデルは軽二輪なので当然、高速道路を走ることもあるでしょう。ということで、首都高ですが1区間だけ走行してみました。加速車線を使って本線の流れに乗ることは問題なく可能です。今回はメーター読みで80km/hほどしか出しませんでしたが、100km/h巡航は問題なくできます。ただし、120km/h区間を走行する場合には前回に近い状態にしなくてはならず、ストレスになるかもしれません。なので、高速道路を使ってロングランもできると、付加価値的な気持ちで臨むほうが無難だと感じました。
乗り心地は悪くありません。大きめのシートはお尻にやさしいし、新しくなった片持ちシングルアーム式の独自のフロントサスペンション、リアのツインショックともに低速走行時にも衝撃をうまく吸収してくれていました。ただしストローク量は大きくないので、ハードライディング向きじゃないことはたしかです。前後シングルディスクブレーキの効きも安定しているし、ABSやトラクションコントロールであるASRも装備しているので、雨の日でも不安なく走れるはずです。 タイヤは前後12インチの小径なので、轍や段差などの影響は受けます。しかしながらホイールベースが長いので直進安定性は高く、フラフラした走りになることはありません。ハンドリングに関してもニュートラルな特性を実現していて、だれにでも違和感のないスムーズなコーナーワークが可能です。 インナーラックはそれほどスペースがありませんが、内部にはUSB端子が装備されていてデバイスの充電に便利だし、シート下のトランクには荷物がラクに収納できます。今回の試乗車にはアクセサリーパーツのウインドスクリーン、リアキャリア&リアボックスが装備してあったのですが、この仕様ならロングツーリングも快適にできます。 このように、長く乗り続けても飽きることのない伝統的なスタイルを継承しながらも、最新技術を随所に取り入れることで快適性をアップさせているのがGTSクラシック150です。価格面ではたしかに日本製スクーターより高価ですが、何年乗り続けて古さを感じさせないので、いつまでも大切にできると思います。良いものを長く所有する。いまの時代に合ったスクーターだと再認識しました。
ディテール解説
主要諸元
エンジン:i-get 4ストローク水冷単気筒 SOHC 4バルブ スタート&ストップシステム 総排気量:155cc 最高出力:15,6 HP/ 8,250 rpm 最大トルク:15 Nm/ 6,500 rpm 燃料供給方式:電子制御燃料噴射システム 始動方式セルフ式 トランスミッション:オートマチック (CVT) クラッチ:自動遠心クラッチ フレーム:スチール製モノコックボディー サスペンション(前):片持ちリンクアーム油圧式サスペンション サスペンション(後):プリロードアジャスタブル ツインショックアブソーバー ブレーキ(前):油圧式 220mm ディスクブレーキ ABS ブレーキ(後):油圧式 220mm ディスクブレーキ ABS タイヤ(前):120/70-12" タイヤ(後):130/70-12" 全長/全幅:1,980mm / 765mm ホイールベース:1,385mm シート高:790mm 燃料タンク容量:7L 車両重量:150Kg