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ホンダ・PCX160…….407,000円
排気量アップを伴うモデルチェンジでツーリング性も向上
PCXのモデルチェンジと歩調を合わせて、上位クラスのPCX150もモデルチェンジが行われました。2012年に登場したPCX150は、14年、18年と2回モデルチェンジを受けていますが、PCX同様、今回150もモデルチェンジされ4代目となりました。そして、従来までのモデルチェンジと大きく異なるのは、排気量を149㏄から156㏄へとアップさせた新設計エンジンを搭載したことです。これによって名称もPCX160となりました。
軽量化が図られた新設計ダブルクレードルフレームや、リアタイヤの13インチへの小径化、それにパワークルーザーをモチーフにスピード感を表現したスタイリングデザインなど、従来型から変更された部分の大半は125のPCXと同じです。車体サイズもまったく同一なので、軽二輪クラスとしてはコンパクトなボディを持っているといえます。そこに12kW(15.8ps)のエンジンを搭載しているのですから、パワフルな走りを見せてくれるのは想像に難くありません。
タイヤサイズは前後ともにワイド化され、フロントのみ作動する1チャンネルABSに加えて、Honda セレクタブル トルク コントロール(HSTC)、いわゆるトラコンが新たに装備されました。雨の日など路面が滑りやすい状況の中を走るときには特に心強いですね。このように足回りの強化、高性能化が図られたことで、走行性能はもちろんのこと安全性も高まりました。
中高回転域のパワーアップで高速走行が一段とラクになった
車体は原付二種のPCXとまったく同じなのに、そこに156㏄のエンジンをマッチさせているのですからパワーに不満は感じません。都市部を走らせていても、スタートダッシュは素早いし、軽快な運動性は機動力にあふれています。たとえば通勤の足として使った場合、ムリをしなくてもスピーディな走りができます。エンジン性能の余力がそのまま気持ちの余裕に直結するので、イライラすることなく目的地に向かうことができます。
PCX160は軽二輪クラスになります。そのため原付二種のPCXと比較すると、保険や税金が高めです。おそらく年間に数万円の負担増となるはずです。つまり、おもに通勤や買い物の足として利用するのなら、原付二種のPCXで十分なのです。しかし、そうした実用性や経済性だけじゃなく、ツーリングにも積極的に乗っていきたいという人にはPCX160は最適な選択になると思います。
PCXとPCX160の決定的な差は、高速道路走行の可否です。軽二輪の160は当然、高速道路を走ることができます。つまり遠出しやすいわけです。しかも今回、新エンジンになったことでパワーアップしているので、高速走行性もより高まっているはずです。そこで高速道路へも乗り入れてみました。
最高速チャレンジはもちろんできませんでしたが、中高回転域でのパワーがアップしているようで、本線に合流するための加速がラクになりました。とくに加速車線が短い首都高の合流では、心強く感じました。ギアチェンジ操作のないスクーターではスロットルレスポンスが重要です。素早く回転を上昇させるだけじゃなく、それに伴ったトルクを発生し、要求通りの加速ができることが走りやすさにつながります。PCX160はそうした及第点をクリアしていると感じました。
僕は従来型のPCX150で400㎞ほどの日帰りツーリングを何度かしているのですが、いつも帰りの高速道路を走行しているときに疲労を感じます。それは100㎞/h走行がつらいというのではなく、コンパクトなボディが長身の僕にはライポジがちょっときついからです。PCX160は足元が広くなりました。そのぶんライポジの自由度が高まっています。同じ軽二輪でも250㏄スクーターに比べれば多少窮屈さはあるでしょうけれど、高速走行での快適性がアップしたのは確実です。
コミューターとして高い機動性を発揮してくれるだけじゃなく、高速道路を使ったツーリングも楽しめるのがPCX160の強みです。250㏄スクーターが重たくて大きく感じ始めた人には、まさにピッタリの相棒になってくれるはずです。そういう点からも、多くの人に親しみやすいモデルだといえます。
主要諸元
車名:ホンダ・PCX 160 型式:2BK-KF47 全長(mm):1,935 全幅(mm):740 全高(mm):1,105 軸距(mm):1,315 最低地上高(mm):135 シート高 (mm):764 車両重量(kg):132 乗車定員(人):2 燃料消費率(km/L):国土交通省届出値:53.5(60km/h)<2名乗車時> WMTCモード値(km/L):45.2<1名乗車時> 最小回転半径(m):1.9 エンジン型式:KF47E エンジン種類:水冷4ストロークOHC4バルブ単気筒 総排気量(㎤):156 内径×行程(mm):60.0×55.5 圧縮比:12.0 最高出力(kW [PS] /rpm):12[15.8]/8,500 最大トルク(N・m [kgf・m] /rpm):15[1.5]/6,500 燃料供給装置形式:電子制御燃料噴射装置(PGM-FI) 始動方式:セルフ式 点火装置形式:フルトランジスタ式バッテリー点火 燃料タンク容量(L):8.1 変速機形式:無段変速式(Vマチック) タイヤ(前/後):110/70-14M/C 50P / 130/70-13M/C 63P ブレーキ形式(前/後):φ220mm油圧式ディスク / φ220mm油圧式ディスク 懸架方式(前/後):テレスコピック式 / ユニットスイング式 フレーム形式:アンダーボーン
栗栖国安
業界歴38年のバイクジャーナリスト
ツーリング紀行が得意分野で、専門誌、一般誌を中心に取材執筆活動を展開している。
また、バイクと鉄道を組み合わせた紀行も鉄道関連雑誌で連載中。連載記事をまとめた『バイクで行く廃駅・廃線めぐり』(山と渓谷社)が絶賛発売中