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ながら運転とはどんな違反?
ながら運転は、「道路交通法第71条第5号の5」で規制されている行為だ。同法の条文によれば、運転中にスマートフォンなどを手に持って通話したり、画面を注視したりすることは禁止。違反すると、以下のような重い罰則や反則金などが課せられる。
●携帯電話使用等(交通の危険)
罰則:1年以下の懲役または30万円以下の罰金
反則点数:6点
反則金:適用なし
*スマホなどの携帯電話の使用など、または手に持って画面を注視し交通の危険を生じさせた場合
●携帯電話使用等(保持)
罰則:6か月以下の懲役または10万円以下の罰金
反則点数:3点
反則金:2輪車1万5000円 原付1万2000円
*スマホなどの携帯電話の使用など、または手に持って画面を注視した場合
では、バイクの運転中に、スマホと接続したイヤホンを耳に入れて音楽を聴くことは、この「ながら運転」に該当するのだろうか?
これについては、クルマやバイクの運転者の安全義務を定めた「道路交通法第70条」が関連してくる。条文には
「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない」
と明記されている。運転をするときは、ハンドルやブレーキなどを確実に操作し、「他人に危害を及ぼさない」ような速度と走行方法をすべきといった意味だ。バイクの場合だは、たとえば、ハンドルを片手で運転する行為なども、この「安全運転義務」に違反する可能性がある。
だが、この条文には、イヤホンについての記述はない。そのため、必ずしもイヤホンを使って運転していたからといって、道路交通法違反になるとは限らない。
ただし、たとえば、イヤホンを耳に入れ、大音量で音楽を聴いていたことで、ほかのクルマや歩行者に気づかずに事故を起こした場合などは、「安全運転義務違反」とみなされる可能性もあるので注意したい。
なお、もし安全運転義務違反で捕まると、最も軽いケースでも
・違反点数:2点
・反則金:2輪車7000円 原付6000円
となる。
都道府県によっては違反になる場合もある
また、都道府県によっては、走行中にイヤホンを使用することについて、一定の制限を設けた条例を設けている地域もある。例えば、東京都の場合、「東京都道路交通細則 第2章 第8条(5)」に以下の規定がある。
「高音でカーラジオ等を聞き、又はイヤホーン等を使用してラジオを聞く等安全な運転に必要な交通に関する音又は声が聞こえないような状態で車両等を運転しないこと」
また、神奈川県でも、「神奈川県道路交通法施行細則 第3章 第11条(5)」には、以下のような規定がある。
「大音量で、又はイヤホン若しくはヘッドホンを使用して音楽等を聴く等安全な運転に必要な音又は声が聞こえない状態で自動車、原動機付自転車又は自転車を運転しないこと」
これら条例は、いずれも、イヤホンなどを使い、大音量で音楽などを聴くことで、「安全運転に必要な交通関連の音や声が聞こえないような状態で走行すること」を禁止したものだ。
もし、捕まった場合、例えば、東京都(警視庁)のケースでは、「公安委員会遵守事項違反」となり
・反則金:2輪車6000円 原付5000円
となる(反則金は適用なし)。
違反とならなくても注意したい点
以上から考察すると、都道府県の条例などにもよるが、イヤホンを使ってバイクを運転すること自体は即違反とはならないが、大音量で音楽などを聴いていると捕まるケースもあるといえる。
ただし、イヤホンは耳を塞いでしまうため、たとえ音量を大きくしなくても、周囲の音が聞き取りずらくなるのは確かだ。また、ついつい音楽に夢中になることで、注意力が散漫になる場合も考えられる。
よく、イヤホンを付けて自転車に乗っている人が、ブラインドの曲がり角から出てきた歩行者などに気づかず、衝突してしまうことと同じだ。筆者も、そんな自転車の運転者に、ただ歩いているだけなのにブツけられたことがある。幸い筆者に怪我はなく、先方も転倒まではしなかった。そのため、その自転車は何も言わずに去って行ったが(まるでひき逃げ)、ちょっと気分が悪くなった。
しかも、バイクの場合は、ヘルメットを被るうえに、エンジン音や風切り音などもあるため、さらに交通に関する音などが聞こえにくくなる。運転中に音楽を聴きたい場合は、細心の注意をすべきだと思う。
音楽を聴きたいライダーにおすすめのアイテム
どうしても、バイクの運転中にスマホの音楽などを聴きたい場合は、たとえば、骨伝導タイプのイヤホンを使う手もあるだろう。耳を塞がないため、一般的なイヤホンよりも、周囲の音は聞こえやすくなるといえる。ただし、製品の形状などによっては、ヘルメット内にセットするのが難しいケースもある。
ほかにも、ブルーツゥースなどでスマホと接続できるバイク用のインカムなどを使う手もある。特に、本体ユニットをヘルメットの外側に装着するタイプであれば、耳を塞がないし、ヘルメットを被るときも楽だ。
もちろん、こうした製品を使う場合でも、大音量はNG。法律で違反となるか否かの前に、あくまで私見だが、かなり危険な走行だと思う。2輪で走るバイクは、不安定になりやすい乗りモノだからだ。
バイクで安全でスムーズに走るには、手足や体などを上手く使うことはもちろん、目や耳から入ってくる情報により、できるだけ早く障害物などを察知し、まさかの時には、可能な限り早期の危険回避などを行うことも重要だ。その意味で、音楽を大音量で聴くことは、周囲からの情報を自ら減らしている行為といえる。
筆者の場合、クルマを運転するときには音楽を聴くが、バイクでは「一切聴かない派」だ。それよりも、加速する際などにエンジンが奏でるサウンドなどを楽しんでいる。また、サスペンションの動きやシフト操作時の作動状況など、バイクから伝わってくるさままざな情報で、愛車のご機嫌(コンディション)もうかがう。バイクのご機嫌が分かれば、その日の走り方も変わってくるし、なにか異常があればすぐに分かる。
そして、周囲の状況に加え、それらバイクの情報をできるだけ多く受け取るためには、筆者の場合、五感の全てを使う必要があり、音楽を聴いている余裕はない。たまに、高速道路のクルーズ中などに気分がいいと、歌いながら走ることはあるけれど。
ともあれ、バイクの走行中に音楽を聴く際は、くれぐれも安全第一で、「適度な音量」を心掛けて頂きたい。