【BETA試乗】4ストモデルの中堅「RR4T 430」は、扱いやすいパワー感でトレール車のように余裕感たっぷりで乗れちゃう!

オフロードバイクで名を馳せるイタリア、BETA試乗の第五弾! 全日本ライダーのソードーによるレポートのラストを飾るのはRR4T430だ。棲み分け的にいうとどのカテゴリーだろうか? エンデューロマシンとしても、ラリーマシンとしても、そして公道走行といろんな使い方が出来てしまう気がして「迷ったらこれだ!」と思わせてくれた。
取材協力:BETA motor Japan
REPORT:濱原颯道
PHOTO:山田俊輔

BETA・RR4T430 MY24/155万1000円

4スト車こそBETAの本領!

モーターサイクルの歴史が古いイタリアには多くのバイクメーカーが存在しています。日本にも世界的なビッグメーカーが4つ揃っていますが、長い歴史を振り返ればはるかに多い。その中でもオフロードバイクに特化したメーカーがあります。それがBETAモーターサイクルです。とくにトライアル選手権で有名で幾度も世界タイトルを獲得し、エンデューロレースでも世界タイトルを獲得している重鎮なのですが、日本ではまだまだ馴染みが薄いメーカーかもしれません。知る人ぞ知るって感じですね。

過去のレポートでもお伝えしましたが、BETAのエンデューロバイク(ED)は2ストローク仕様のラインナップがとても多い印象です。ですが、同社が初めに作ったのは4ストローク車のようで歴史も長いみたいです。なので今回紹介する4ストの「RR4T 430」こそ真骨頂と言っても過言ではありません!

このRR4Tシリーズは、350、390、430、480と排気量別で細かに刻まれており、各排気量でキャラクターが異なります。大別するならクランクケースを共通とする350と390、そして430と480に二分されます。

国産車とは明確に差が!? 本当に4ストなのか!

まず乗って思ったこととしては、全てのRR4Tシリーズに言えるのですが、本当にエンストしにくい! 2ストに比べると4ストはエンストしやすいと思っていましたが全くそんな事はなく、とにかく粘ってくれます。低回転で「これでもか!」って位にギリギリで半クラをキープしても無問題! これはデュアルインジェクターにすることで、その辺りをコントロールしていると感じました。

あと4ストで懸念されるポイントは水温問題でしょうか。ラジエターの形状とラジエターキャップが新作の「MY24」から変更されていて、ハードエンデューロ的な遊び方(速度域が低く走行風でラジエターを冷やせない状況)でも水を噴くことがなく驚かされました! あまり他のバイクの評価を下げるような言い方はしたくはないですが、国産の450ccエンデュランサーだととっくにラジエターから水が噴いてるような状況でもこのRR4T 430は問題なし!

4stツインカムエンジンにやや小さめのクランクを採用。ツインカム特有のトルク感の薄さを感じさせないエンジンフィーリングで乘りやすかった。エキパイもコンパクトに曲げてあるので障害物などに当たる心配も少ない。

これは圧縮比を12.33:1と低めに留めているのが大きな要因だと思います。圧縮比の低さにより低回転でも粘り、エンストのしにくさにつながっているはずで、こういった部分はエンデューロにも適したエンジン特性ですね。ボア×ストロークはボア95mm、ストロークが60.8mmなので若干ショートストローク気味かな?と思ったのですが、圧縮比を落としているのも奏功しているのかもしれません。とても自然なフィーリングかつ、トルクもあるのでリヤタイヤをグリップさせやすく「アレ、乗るのが上手くなったんじゃない?」って錯覚してしまうほどでした(笑)。

また、4ストでは私的に気になる点があります。それは“クラッチレバーの具合”です。RR4T 430はブレンボ製の油圧クラッチを採用していて、RR2Tシリーズと変わらない位にクラッチが軽くて非常に操作がイージーです。

乘り味はシリーズで別物! エンジンと車体の相性抜群!

RR4TシリーズとRR2Tシリーズの250/300はフレームやサスペンションなど、車体(シャーシ)にまつわるものは共通です。サスの味付け等の差は当然ありますが、装着しいるものはザックス製。ですがエンジンブレーキの特性や以前紹介したRR2T 300より3kgほど車重が重いこともあってか、RR2Tシリーズで感じていた“ブレーキタッチの強さ”を感じませんでした。

BETAのブレーキは前後ともNISSIN製で比較的かけ初めの初期から効いてくれます。RR4T 430とか排気量が大きくなってくると、使い方もハイスピード域になりがちなのでむしろこのくらい初期で効いてくれて丁度良い塩梅でした。

RR4T430にはマップの切り替えスイッチ(ドライ路面用のハイパワーモードとウエット路面用のローパワーモード)の他にトラクションコントロールシステムが搭載されている。高回転域では作用せず低回転域ではしっかりアシストしてくれる。滑りやすいコンディション時にウエットモードでトラコンを切ると驚くほど出力が抑えられる!

サスペンションもスタンダードセッティングで試乗したところ、下り坂でアクセルを開け込んで行った時の安定感もありますし、途中で根っこや石を踏んでもハンドルが取られる事はほとんどありませんでした。エンジンに対してフレームやブレーキのバランスはRR4Tシリーズの方がマッチしているのかもしれません。実際にエンデューロコースで走らせてみるとスロットル中間域でのエンジンのスムーズさがとても心地良く『パワーがあるのに疲れない』という印象でした。

ハイパワーでコンパクト。排気量が大きいのに扱いやすい不思議

RR4T 430のシート高は約930mmと、ほかの海外メーカーよりも20mmほど低く、ホイールベースも1477mmとややショート。BETAの特徴であるコンパクトな車格はRR4Tシリーズでも変わりありません。

ボクが感心したのは、それこそアスファルトだったり、フラットに近いようなダートの部分を長距離走るようなラリー的な使い方ができそうと感じたから。RR4Tシリーズ各車ともナンバー取得が可能なので、ストリートでもかなり高いポテンシャルを発揮できるんじゃないかな? ともかく“長く走る競技”にはとても相性が良い一台です。

ディテール解説

NISSINのブレーキシステムやタカサゴエキセルリムなどの日本メーカーを採用してくれるのは日本人にとって誇らしいところ。サスペンションは前後ともドイツ・ザックス製をチョイス。ノーマルに比べローフリクションだから本来の動きを出すことができた。

リヤのタイヤサイズは140/80-18。エンデューロGPでも優勝したことがあるマキシス製(M7324)なので性能はお墨付きだ。

RR4T430の燃料タンク容量は9ℓで、RR2Tシリーズとは異なる。リザーブタンクは2.3ℓの設定だがインジェクション車なので燃料コックはない。

無駄なものは省略した個性的なテール周りはソリッドな雰囲気。良い意味で試作パーツ感満載な見た目だ。排気音はとても静かで、単気筒にありがちな“バツバツ感”のあるエキゾーストノートではないのがマル。

主要諸元

エンジン
トランスミッション 6速
スターター セルスターター
排気量 430.9cc
ボア 95mm
ストローク 60.8mm
クラッチ 湿式 多板
ジェネレーター Kokusan
スパークプラグ NGK LKAR 8A-9

●シャーシ
乾燥重量 108.4
燃料タンク容量 9(リザーブタンク2.3L)
フロントブレーキディスク径 260mm
リアブレーキディスク径 240mm
フロントブレーキ NISSIN 油圧式ディスクブレーキ
リアブレーキ NISSIN 油圧式ディスクブレーキ
ドライブチェーン 520シールチェーン
フロントサスペンション ザックス
リアサスペンション ザックス
フロントサスペンションストローク 295mm
リアサスペンションストローク 290mm
最低地上高 320mm
最高地上高 1270mm
全長 2172mm
ホイールベース 1482mm
ステップ高 407mm
シート高 930mm

ライダープロフィール

濱原颯道(はまはら そうどう)

1995年1月17日生まれ。身長191cm、体重約90kgとオートバイレーサーとしては規格外の体躯を持つ。2017年に全日本ロードレース選手権(JSB1000)デビュー、2021年にはランキング2位を獲得。鈴鹿8耐や全日本スーパーモト、エンデューロレースの参戦経験、ミニバイク誌のインプレ寄稿など豊富な経験を活かし、多方面で活躍する「モータースポーツ総合エンターテイナー」。

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著者プロフィール

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佐藤恭央