アルピナによる既存の開発・製造体制は2025年末まで維持

BMWグループ、「アルピナ」ブランドの商標権を取得

アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社を立ち上げた、ブルカルト・ボーフェンジーペン(中央)と、現在アルピナのビジネスを展開する、息子のアンドレアス(左)とフローリアン(右)。
アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社を立ち上げた、ブルカルト・ボーフェンジーペン(写真中央)と、現在アルピナのビジネスを展開する、息子のフローリアン(同左)とアンドレアス(同右)。
BMWグループは、アルピナ(ALPINA)ブランドの商標権を取得したことを発表した。BMWグループがアルピナ・ブランドの権利を獲得したことで、ラグジュアリーカーラインナップにさらなる多様性をもたらすことになる。2025年末以降、「アルピナ」の名前を冠したモデルがBMWから発売されることが予想されている。

2025年末までブーフロー工場での製造を継続

BMWグループが、アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社から、「アルピナ」ブランドを取得した。
BMWグループが、アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社から、「アルピナ」ブランドを取得。2025年末までは本拠地であるブーフロー工場での製造が決まっている。

BMW AGと、アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン有限合資会社(ALPINA Burkard Bovensiepen GmbH + Co.)は、長期的なブランド存続を確保すべく、アルピナ・ブランドの商標権売買契約を締結。この決定を受けて、アルピナ製モデルの開発と生産は、2025年末まで現在の本拠地であるブーフローで継続される。

2020年末に5年間延長されたBMW AGとアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社の長期的な協力関係は、2025年12月31日をもって終了。BMW AGはアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社の株式は取得せず、両社は財務的な詳細を開示しないことにも合意している。

BMW AGのカスタマー&ブランド・セールス担当取締役のピーター・ノータは、今回のアルピナ・ブランドの取得について次のように説明した。

「現在自動車産業は持続可能なモビリティ実現に向け、大きな変革の真っ只中にあります。そのため、既存のビジネスモデルを定期的に見直す必要があったのです。アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社は50年以上にわたって、細部にまでこだわった最高品質の車両を提供してきました。BMWグループもまた、想像力をかきたてるクルマに対する、変わらない情熱によって動かされています」

「だからこそ私たちは今、長年のパートナーシップを次の段階へと進めようとしています。アルピナの商標権を取得することで、私たちはこの伝統あるブランドの長期的な方向性を示すことができるようになります。あらためて、アルピナ・ブランドをBMWファミリーに迎えることができて、大変うれしく思います」

困難な電動化や内燃機関への規制への対応

1965年の創業以来、BMWをベースにチューニングモデルを開発してきたアルピナ。急激なビジネス環境の変化に対応すべく、ブランドの売却を決めた形だ。
1965年の創業以来、BMWをベースにチューニングモデルを開発してきたアルピナ。急激なビジネス環境の変化に対応すべく、ブランドの売却を決めた形だ。

現在、急激な電動化と世界的な内燃機関に対する規制強化により、小規模メーカーは従来通りの事業継続が困難な状況に陥っている。排ガス規制、高度なソフトウェア開発、運転支援・安全システムの搭載など、その開発リスクはかつてないほどに拡大。これを受けて、アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社は、長期的なビジネス継続に向けてこれらの問題に取り組んできた。

BMWとアルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社の協力関係は2025年末まで継続されるが、それ以降はこれまでとは異なる形になるという。2025年末まではこれまで通り、BMWの市販モデルをベースにドイツ・ブーフローの同社ファクトリーにおいて、エンジン、トランスミッション、シャシー、エアロダイナミクス、インテリアなどの最終的なアップデートが行われる予定だ。

アルピナ製の現行モデル、そしてヒストリックカーの車両のサービス、パーツ、アクセサリー事業は、長期的にブーフローの拠点で継続。既存のアフターセールス協力体制に変更はない。今後、両社の戦略的協力関係の一環として、BMWをベースとした開発プログラムがブーフローにおいてさらに拡大される予定だ。また、ブルカルト・ボーフェンジーペン社が、独自に展開するワイン事業も継続される。

アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社の副社長を務めるアンドレアス・ボーフェンジーペンは、今回の商標権売却について、次のように説明した。

「私たちは、自動車産業が直面している課題に関して早くから認識し、アルピナ・ブランド、そして私たちのファミリービジネスであるブルカルト・ボーフェンジーペン社のために、正しい道を選ぶ必要がありました。これは新しい章の始まりとなります」

「アルピナ・ブランドと私たちの会社は、どちらも非常に魅力的な存在です。そして、BMWとアルピナは、何十年にもわたって共に働き、互いに信頼し合ってきました。だからこそ、アルピナ・ブランドが将来的にBMWグループによって管理されることは、戦略的に正しい判断なのです」

現在の従業員はBMWグループへの転職も

2025年末をもってブーフロー工場での開発・生産体制が縮小されることを受けて、現在の従業員はBMWグループ、関連企業への転職が斡旋されることになる。
2025年末をもってブーフロー工場での開発・生産体制が縮小されることを受けて、現在の従業員はBMWグループ、関連企業への転職が斡旋されることになる。

2021年は、アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社の歴史上、最も成功した1年となった。この強固な経営基盤をベースに、ファミリービジネスは今後、自動車業界の技術的変化や様々な法規制に対応するため、戦略的に再編成を進めていく。

BMWグループへの商標権売却と、それに伴う2025年末に予定されている既存のアルピナ・プログラムの終了は、ブーフロー工場において既存の従業員に大きな影響を与えることになる。BMWは今後数年間にわたり、同工場の従業員に必要とされるケアを行うべく、ブルカルト・ボーフェンジーペン社へサポートを行っていく。

2025年末までの期間、BMWはブルカルト・ボーフェンジーペン社と協力し、ブーフロー工場での勤務を継続できない従業員に、BMWグループやサプライヤー、開発パートナーなどに新たな職務を提供するという。

アルピナ・ブルカルト・ボーフェンジーペン社のコ・マネージングディレクター、フローリアン・ボーフェンジーペンは、今回の決定を受けて次のようにコメントしている。

「私たちは父(創業者のブルカルト・ボーフェンジーペン)のライフワークを引き継ぎ、同じく有名な『ボーフェンジーペン』の名前に投資を続けていきます。私たちの専門知識と高い品質基準で、将来的には新たな説得力のあるモデルをマーケットに投入できるでしょう」

「アルピナのサクセス・ストーリーは、クリエイティブで高い能力を持つ忠実な従業員なくしては実現し得なかったでしょう。私たちは、会社、チーム、そして家族の強さに頼って、適切な時期に適切な判断を行っています。同時に、私たちはBMWグループとともに、従業員に対する社会的責任を認識し、この再編成による潜在的な影響をやわらげるために最善を尽くしていきます」

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ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…