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Bentley Continental GTC
オープンドライブを味わい尽くす北海道~東京ツーリング
鬱蒼とした森の中から時折木漏れ日が顔を出す。気まぐれな光のシャワーを浴びながら、コンチネンタルGTCのトップを降ろすと、そこには陶然とした世界が待ち受けていた。
ツイスティなワインディングを抜けると、緑の絨毯を敷き詰めたようなすこぶる気持ちの良い高原が姿を現した。青森県は萱野高原。1585mの大岳や高田大岳など10の山々がそびえる北八甲田、櫛ヶ峰をはじめとする6峰が連なる南八甲田からなる八甲田連峰。その麓に広がる萱野高原の空には、忍び寄る秋の気配に抗うかのような真夏の雲が広がっていた。
北海道・札幌市でコンチネンタルGTCを借り出してから350kmくらい走っただろうか。昨日、津軽海峡フェリーに乗って函館から青森に渡り、今僕は青森の大自然の中で、蝉の大合唱をバックミュージックにオープンドライブを楽しんでいる。
トップを降ろすのは驚くほど簡単だ。センターコンソールにあるレバーを引けば、走行中(50km/h以下)でも約19秒でルーフがスムーズに開閉する。
いたってジェントルな4.0リッターV8ツインターボエンジン
高原特有の少し甘ったるい緑の香りを感じながら、わずかにアクセルを開けて豊かなトルクを感じつつ、ひとつ一つのコーナーを抜けていくのは人生においても実に甘美な刹那だ。人の手のぬくもりすら感じるダイヤモンド・イン・ダイヤモンド・キルティングが施された極上のシートに身を委ね、ドライブモードを「ベントレー(オート)」に設定し、丁寧にその作業に没頭していく。
最高出力550ps、最大トルク770Nmを発生する4.0リッターV8ツインターボエンジンは、いたってジェントルだ。2000〜2500rpmで流している限り、オープン時であってもエンジン音はさほど気にはならない。
借り出して2日目にして、ドライブモードを初めて「スポーツ」へと切り替える。ほんの少し身構えて、アクセルを強く踏み込んだ。その瞬間、コンチネンタルGTCは突然牙を剥き出しにした。ジェントルだったエキゾーストはV8ツインターボ特有の野太い咆哮へと変化し、アクセルを踏み込むたびに官能的な雄叫びを上げる。同時にステアリングがクイックな特性となり、次々と迫りくるコーナーを実に軽々とトレースしていく。
“GT”の名に相応しい貫禄と上質さ
素早い変速で逐次適切なトルクを引き出す8速DCTと、カジュアルで軽い吹け上がりながらも770Nmを叩き出すトルキーなV8ユニットとの組み合わせは最高だ。2355kgもの車重をまったく感じさせず、軽快にターンインし、怒涛のトルクでコーナーを脱出するその様は、スーパースポーツといっても過言ではない。
決して道幅が広いとは言えない、十和田湖へと続くワインディングを少し陳腐な言い方だが、「人馬一体」となって駆け抜けていく。W12型エンジンを搭載したコンチネンタルGTを運転した経験もあるが、V8搭載モデルは明らかにノーズが軽い。気がつけば、撮影ポイントから相当離れた場所まで来てしまった。今回の旅の同行者であるSカメラマンを置き去りにしてきてしまったのだ。それほどまでにドライビングに没頭していた。峠道で心地よい汗をかいたのはずいぶん久しぶりである。早くSカメラマンの元に戻らなければ・・・。
再びワインディングを流しながら引き返す最中、冷静さを取り戻しつつあった僕は、昨日の道央自動車道でのコンチネンタルGTCの振る舞いについて回想していた。それはまさに「GT」の名に相応しい貫禄であり、上質さであった。
スーパースポーツの如き走行性能とGTの資質を両立させた稀有なモデル
ルーフを閉めていればまるでクーペの如き静寂に包まれる中、みしりとも言わないボディと3チャンバー式のエアサスが道路の凹凸を吸収し、路面状況が決して良いとは言えない道央自動車道を快適に突き進んでいく。3500rpm以下で作動する気筒休止システム(4気筒休止)はドライバーに一切作動を悟られることはない。的確で安心感の高いADAS(ツーリングスペック・オプションに含まれる)により、300km以上の移動ながら疲れを感じたことはなかった。
スポーティなカーボン地の素材と鮮やかなレッド、そして清潔感溢れるホワイトのレザーでまとめられたインテリアは、非常に質感が高く、長距離ドライブでも乗員を楽しませてくれる。厚みのあるしなやかなレザーシートは心地よくドライバーを包み込み、ゆったりとした時間が車内に横溢していくのだ。
この移動する贅沢こそ、ベントレーの真骨頂とも呼べるものだろう。それはコンバーチブルといえど同じだ。まさにイギリス人たちが目指した海を渡った先にある“コンチネンタル”(ヨーロッパ大陸)を車名に冠するだけのことはある。究極の快適性と上質さを秘め、圧倒的な大トルクで道を突き進むグランドツーリングカー、それがコンチネンタルGTなのだと改めて思い知らされたドライブであった。
Sカメラマンを拾い、目的地の東京へ向けて僕は再びコンチネンタルGTCを走らせる。目的地までの距離は750kmとナビが示している。でもその道程は疲労とは無縁なものになるだろう。まるで路面と対話しているようなステアリングからのインフォメーションと22インチタイヤの確実なグリップを感じながら、優れたドライバビリティを存分に味わえるはずだ。今日はどこに泊まろうか? 旅はまだ終わらない。
REPORT/石川亮平(Ryohei ISHIKAWA)
PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)
MAGAZINE/GENROQ 2022年11月号
ベントレー コンチネンタルGTCを動画でチェック!
SPECIFICATIONS
ベントレー コンチネンタルGTC
ボディサイズ:全長4850 全幅1965 全高1400mm
ホイールベース:2849mm
車両重量:2355kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3996cc
最高出力:404kW(550ps)/6000rpm
最大トルク:770Nm(78.5kgm)/2000-4500rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
最高速度:318km/h
0-100km/h加速:4.1秒
燃料消費量(WLTP):12.5L/100km
車両本体価格:3078万円
【問い合わせ】
ベントレーコール
TEL 0120-97-7797
【関連リンク】
ベントレー公式サイト