ロールス・ロイス4作目のコーチビルド作品「アルカディア ドロップテイル」を発表

最新ロールス・ロイスの「アルカディアドロップテイル」は世界に1台のロードスター「ウッドセクション製作に8000時間」【動画】

世界に1台のみのロードスター「アルカディア ドロップテイル」のエクステリア。
ロールス・ロイスのコーチビルドシリーズ4作目となる、「アルカディア ドロップテイル」が完成した。
ロールス・ロイス・モーター・カーズは「静穏」を表現した世界に1台のコーチビルド車両「アルカディア ドロップテイル」を公開した。アルカディア ドロップテイルはオーナーの型破りな希望を具現、貴重な天然素材をふんだんに使用。ロールス・ロイス史上最も複雑なデザインが内外装採用されている。

Rolls-Royce Arcadia Droptail

古代ギリシャの伝説世界にちなんで命名

世界に1台のみのロードスター「アルカディア ドロップテイル」のエクステリア。
今回、公開されたアルカディア ドロップテイルは「静穏」をテーマに製作。美しい自然と完璧な調和を持った地上の楽園「アルカディア」にちなんでネーミングされた。

建築とデザインを愛するカスタマーから依頼された「アルカディア ドロップテイル」は、その感性と個人的なラグジュアリーさが表現された。

ロールス・ロイスのコーチビルド・コミッションは、古代ギリシャ神話の中で、美しい自然と完璧な調和を持った「地上の楽園」として描かれた伝説の世界「アルカディア」にちなんで命名。カスタマーがアルカディア ドロップテイルに思い描いたのは、素材の深みと触感を特長とし、慌ただしいビジネスライフからの隠れ家のような、無駄を削ぎ落とした平穏な空間だったという。

「静穏」というテーマの本質に迫るため、コーチビルドのデザイナーは、カスタマーが好きな世界各地のデザイン、彫刻、建築を探求。その中にはシンガポール、インドネシア、ベトナムに見られるモダニズムのトロピカルスカイガーデンの緻密さと豊かさ、有機的なフォルムと物質的な誠実さを特徴とする英国のバイオミメティック(生物模倣)建築も含まれている。

スケッチをそのまま現実化することを希望

世界に1台のみのロードスター「アルカディア ドロップテイル」のデザインスケッチ。
ロールス・ロイスにコーチビルド仕様のデザインを依頼したカスタマーは、完成したデッサンを見ると、そのまま現実化することを強く求めたという。

今回、ロールス・ロイスにデザインを依頼した匿名のカスタマーは、手描きのスケッチを見て、すぐにそのスケッチに忠実なコーチビルドの製作を強く希望した。ロードスターというボディタイプに現代的な解釈を加えたその姿がカスタマーの心に強く響いたのである。とりわけ惹きつけられたのは、大胆で低いスタンス、くつろぎを与えるキャビンデザイン、ドラマチックなボディラインだったという。

ロールス・ロイス・モーター・カーズの最高経営責任者を務めるクリス・ブラウンリッジは、アルカディア ドロップテイルについて、次のようにコメントした。

「ロールス・ロイスのコーチビルドは、このブランドの“至上”が表現されています。そして、ラグジュアリー分野における唯一無二のコンセプトだと言えるでしょう。この部門では世界的に大きな影響力のあるお客様が当社のデザイナー、エンジニア、職人と協力しながら、新しいアイデアを実現してきました」

「皆が力を合わせて作り上げる精緻な自動車は、お客様の物語の大切な一部となるだけでなく、ロールス・ロイスの誇り高き歴史に名を連ねることになります。これらの作品はお客様自身があらゆる要素を検討し、ロールス・ロイスが誇る専門チームによって生み出されます。アルカディア ドロップテイルは、このアプローチを実証する存在だと言えるでしょう」

見る環境によって表情を変えるボディカラー

世界に1台のみのロードスター「アルカディア ドロップテイル」のエクステリア。
見る環境によって表情を変えるボディカラーはアルミニウムとガラス粒子を混ぜたソリッド・ホワイトに、多面的で印象深いビスポーク・シルバーが組み合わせられた。

ドロップテイルのフォルムを尊重したいというカスタマーの希望を叶えるため、ロールス・ロイスのコーチビルドデザイナーはコーチワークに落ち着きのある、ナチュラルなツートーンの配色を考案。カスタマーは一見すると無地に見える一方、自然光の下で眺めると不思議な風合いになるよう、時代を超越したホワイトを生み出すことを希望した。

その希望を実現するため、ボディのメインカラーには、アルミニウムとガラス粒子を混ぜたソリッド・ホワイトが採用された。このカラーは光がコーチワークに当たると発泡するようなきらめきを放つだけでなく、よく見ると、ペイントに果てしない深みがあるような錯覚を生み出している。

ロールス・ロイスの職人たちは、より大きなアルミニウム粒子を使用することで、さらに多面的で印象深いメタリックを開発。カスタマーはビスポーク・シルバーについて、色そのものに加えて、明度・彩度もホワイトと対比を成すようにと、細やかなこだわりをリクエストした。

このシリーズの他の3台のコーチビルド・ドロップテイルと大きく異なるのは、ドロップテイルの車体下部を構成するカーボンファイバーを露出させるのではなく、ビスポークのシルバーカラーのみで塗装したことにある。これによりサイドビューを視覚的に持ち上げることで、しなやかでダイナミックな印象を強調している。

歴史あるロールス・ロイスのブライトワークに施された鮮やかな鏡面仕上げへのオマージュとして、エクステリアのグリルサラウンド、ベーンピース、22インチアロイホイールの全域に鏡面研磨がかけられた。

柾目のサントスウッドを使用したインテリア

世界に1台のみのロードスター「アルカディア ドロップテイル」のインテリア。
インテリアには加工が非常に難しいものの、細かい木目が魅力の柾目のサントスウッドを使用。カスタマーの美意識が反映された美しい室内が実現している。

インテリアもカスタマーの美意識が深く映し出され、世界各地の住居やビジネスの空間のためにつくり上げてきた、そのスタイルが反映されている。カラーパレットと素材の仕上げは個性が強調されており、カスタマーの個人的なシグネチャーであることがすぐに分かるように構想されたという。

素材そのものの質感や木目、カラー、豊かさに対して非常に強いこだわりを持つカスタマーにとって、使用される木材の開発が極めて重要だった。今回、建築、住宅、クラシックカーなどの好みや、カスタマー自身のアイデアを多数共有することで、ロールス・ロイス・コーチビルドのデザイナーと素材の専門家にいくつかの指針を与えることになった。

柾目のサントスウッドは、そのユニークな木目模様から生まれる豊かな質感と視覚的な魅力が決め手となり、最も現代的な印象を与えられる素材としてチョイスされた。この高密度な堅木をドロップテイルのインテリアに使用することは、ロールス・ロイスの職人にとって大きな挑戦になったという。ロールス・ロイスで使用される全材種の中で木目が最も細かく、取り扱う際に細心の注意を払わなければ、加工時に簡単に割れてしまう。乾燥プロセスで「チェック(木目に沿って平行に現れるひび割れ)」が生じてしまうのだ。

デリケートな素材であるにもかかわらず、柾目のサントスウッドは、オープンポア単板の木目が正確に55度に配され、空力的な機能を発揮するリヤデッキセクションを含め、ドロップテイルの全域に導入された。複雑な形状を完璧に構成するため、ロールス・ロイスの職人はアルカディア ドロップテイル全体に合計233ものウッドピースを使用し、リヤデッキには76ピースが使用された。

8000時間にも及んだ耐久試験をクリア

世界に1台のみのロードスター「アルカディア ドロップテイル」のインテリア。
暑さを含む過酷な環境下での使用を考慮し、ロールス・ロイスはウッドサーフェス向けに、合計8000時間もの耐久試験を実施した。

アルカディア ドロップテイルは、熱帯気候を含む世界各地の環境下で使用されることを考慮し、エクステリアのウッドサーフェス向けの保護システムを開発。テスト工程においても特別な注意が払われた。

当初はスーパーヨットに使用されるコーティングの採用も検討されたが、定期的なメンテナンスと再塗布が必要となるため見送られている。その代わりに開発されたのが、一度のみの塗布で長期間効果を維持するビスポークラッカーだった。

このコーティングを検証するため、ロールス・ロイスの専門チームは、世界中の極端な天候をシミュレーションできる専用の機械で過酷な耐久試験を実施。この中にはテスト対象のウッドピースを暗闇の中で乾燥させた後、熱や明るい光にさらすまでの間に、水分を断続的に吹き付ける検査も含まれている。

種類の異なるサンプルを使用して、1000時間もの耐久試験を繰り返し、スペシャリストたちはウッドピースの耐久性に納得することができた。ウッドピースと保護コーティングの開発には、合計で8000時間以上を要している。

ホワイトとタンを組み合わせたレザーシート

世界に1台のみのロードスター「アルカディア ドロップテイル」のインテリア。
ラグジュアリーな雰囲気を持つシートは、エクステリアを反映し、ビスポーク・ホワイトとビスポーク・タンが組み合わせられた。

レザーインテリアは、カスタマーの名前にちなんで名づけられた2種類の完全にビスポークの色合いで仕上げられた。メインカラーはエクステリアのテーマカラーを継承した「ビスポーク・ホワイト」、コントラストカラーは厳選された木材を完璧に引き立てるために開発された「ビスポーク・タン」が組み合わせられている。

インテリアには、4台のドロップテイルすべてに共通する精巧なショールパネルも含まれ、ロールス・ロイスが取り入れてきたウッドセクションの中では、最大の大きさとなる。アルカディア ドロップテイルでは、リヤデッキと同じ柾目のサントスウッドのオープンポアベニアを使い、同じ55度の角度でブックマッチングしながら配置。それぞれが異なる形状の縞模様がドアライニングに向かってシームレスに流れている。

インテリアの複雑な湾曲に木材を適応させるため、ロールス・ロイスのエンジニアはいくつかのパーツについて、まったく新しい下部構造を開発する必要があった。ダッシュボード、ドアライニング、センターの片持ち梁式台座アームレストに使われた、表情豊かな幾何学形状には、ウッドピースを配置した後の安定性を確保するため、非常に高い剛性が求められている。

エンジニアたちはレースで使用されるカーボンファイバーの積層技術を応用し、木材を乗せることができる極めて剛性の高い基部を開発。どれほど過酷な環境に置かれても、安定性を保てることを保証している。

開発に2年以上を要した珠玉のタイムピース

世界に1台のみのロードスター「アルカディア ドロップテイル」のタイムピース。
フェイシアに配置される美しいタイムピース(時計)は、ロールス・ロイスが持つ高度な技術を用いて製作された。

柾目のサントスウッドを使ったフェイシアには、ロールス・ロイスのコーチビルドデザイナーと職人が考案と開発を手がけた美しいタイムピースが組み込まれた。オートオルロジュリーの表現により、ロールス・ロイス史上最も複雑なフェイスが完成。この時計の開発には2年以上、組み立て作業には5ヵ月を要している。

タイムピースには金属原石に描かれた精巧な幾何学的ギョーシェ彫りが取り入れられ、119のファセットが施されている。これはロールス・ロイスが創業119周年を迎えた2023年の終わりに、カスタマーがアルカディア ドロップテイルのプレビューを初めて目にしたことに由来する。

特別にデザインされたタイムピースのフェイスには、一部をポリッシュ仕上げ、一部をブラッシュ仕上げにした針と、厚さわずか0.1mmのインデックス(アワーマーカー)を12個配置。タイムピースの視認性を確保するため、専門家たちはそのひとつひとつに充填ブリッジを施し、最大100倍まで画像を拡大できるカメラを用いて、手作業でペイントを施したという。

タイムピースのミニッツマーカーは時計製造の手法として一般的なアルマイト加工の代わりに、長期にわたる安定性と優れた美観を考慮してセラミックコーティング仕上げをチョイス。そのコーティングのごく一部はレーザーで削り取られ、その下のアルミニウム素材の鏡面仕上げが見えるようになっている。

タイムピースのテーマとの統一感を出すために、インストルメントダイアルには共通の素材、技術、仕上げ方法を採用した。同じ連続ギョーシェ彫りに加え、ブラッシュ/ポリッシュ仕上げによるブライトワーク、アルカディア ドロップテイルの配色を彷彿とさせるフロスト・ホワイトのインサートを備えている。

ロールス・ロイス アルカディア ドロップテイルを動画でチェック!

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ゲンロクWeb編集部

スーパーカー&ラグジュアリーマガジン『GENROQ』のウェブ版ということで、本誌の流れを汲みつつも、若干…