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2024 PEUGEOT 9X8
厳しい戦いを強いられた2023年シーズン
2022年シーズンからハイパーカー規定で開発されたプロトタイプレーシングカー「9X8」で、FIA世界耐久選手権復帰を果たしたプジョー。あえてリヤウイングを排した独自の設計思想で開発された9X8は、2023年に初めてフルシーズン戦いを終え、ル・マン24時間レースでは一時首位を走行、さらに第5戦モンツァ6時間での初の3位表彰台を獲得した。しかし、勝利を収めることはなく、マニュファクチャラーズ選手権では5位に終わっている。
2024年シーズン、ハイパーカークラスにはBMWやランボルギーニが参戦し、9メーカー19台のプロトタイプがエントリー。非常に競争の激しいコンペティションが繰り広げられているハイパーカークラスにおいて、勝利を目指すべく、プジョーは9X8に大規模なアップデートを施した。
そもそも9X8は、2020/2021年に策定されたテクニカルレギュレーションに適合する仕様で設計されている。しかし、マシン完成間近だった2022年夏、テクニカルレギュレーションが変更。特にエアロダイナミクスの性能向上の可能性が出てきた。そのため、ポテンシャルを最大限に引き出すべく、いくつかの設計変更が行われることになった。
ボディワークの90%をリニューアル
プジョー・スポールのテクニカルディレクターを務めるオリビエ・ジャンソニーは、9X8の大幅な設計変更について、「私たちは、もはや正しい選択とはいえない選択をしてしたのです。このパフォーマンス差は2023年のBoP (Balance of Performance:性能調整)では十分に埋め合わせることができませんでした」と説明した。
「今回、リヤウイングを装着するなど、ライバルのマシンと同じようなデザインに戻して、BoPで同等の扱いを受けることを考えました。また、前後31cmの同一タイヤ幅をやめ、フロント29cm・リヤ34cmのタイヤを装着することにしました」
「2024年仕様は、厳密に言えば、シャシーは同じなので新車ではありませんが、多くのアップグレードが施されています。そして、タイヤを効果的に機能させるために9X8の重心を変え、空力バランスを改善するべく、空力荷重の再配分も検討する必要がありました。この結果、ボディワークの約90%を再設計し、リヤウィングを追加することになったのです」
「それ以外にも2024年仕様は、新しいホモロゲーションを活用して、信頼性と性能のアップデートを行っています。選手権において、考えうる最高のチャンスを獲りにいくことに決めました」
第2戦からはプジョーを象徴する「ライオン」をベースにデザインされた新カラーリングも導入。ブラック、グレー、ホワイト、クリプトナイトのライオンが散りばめられた2024年型9X8は、93号車をミケル・イェンセン、ニコ・ミュラー、ジャン=エリック・ベルニュ、94号車をポール・ディ・レスタ、ロイック・デュバル、ストフェル・バンドーンがドライブする。