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Porsche 963
入念な準備を経てテストに挑んだベッテル
ベッテルにとっては、世界耐久選手権(WEC)を戦うLMDh規定ハイブリッドプロトタイプでの本格的なサーキット初テストとなった。この後、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツは、6月15~16日に開催されるWEC第4戦ル・マン24時間レースに向けて、再びモーターランド・アラゴンで耐久テストを行う予定だ。
既報のとおり、ベッテルはハイブリッドプロトタイプでのロングランテストに向けて、入念な準備を行った。3月14日はマンハイムにあるポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのファクトリーを訪問。その翌日、フラハトにあるポルシェ・モータースポーツ・センターで大規模なシミュレーターセッションを行い、ポルシェ 963の専用機能や複雑なコントロールの習熟を行っている。
その後、3月21日にはヴァイザッハ開発センターのテストコースで963での初走行を実施。実際のドライブフィーリングを掴むことになった。
F1グランプリの2倍におよぶ距離を走行
迎えたモーターランド・アラゴンでの本格的なテストは、路面温度20~25℃、気温10~13℃のドライコンディションのなかで行われ、F1チャンピオンはグランプリのほぼ2倍に相当する距離を問題なく走破した。テストを終えたベッテルは、笑顔を見せながら次のように振り返った。
「私自身、他のモータースポーツカテゴリーにも目を配っていますし、WECやル・マンで活躍しているドライバーもたくさん知っています。あるとき、私の好奇心は抑えきれないほど大きくなり、自分で試してみようと思いついたのです。そして、ポルシェは、963という現行ハイパーカーをテストする機会を与えてくれたというわけです」
「シート調整、シミュレーターセッション、そしてヴァイザッハでの初走行を終えて、すでに良いフィーリングを得ていました。ここアラゴンで963をドライブするのが、本当に楽しかったです」
「まずはすべての操作に慣れて、自分自身のリズムを見つける必要がありました。頭上にルーフがあるだけでドライビング体験はかなり異なりますし、車重とタイヤへの対応も違います。ただ、ポルシェのワークスドライバーたちはとても親切で、何が特別なのか、何に慣れる必要があるのかを丁寧に説明してくれました。それもあって、リラックスしたテストになりました」
ベッテルがもたらした貴重なフィードバック
アラゴンで行われたロングランテストには、ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのWECワークスチーム全員が参加。ポルシェ 963は、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の開幕戦デイトナ24時間レース、さらにWEC開幕戦カタール1812kmレースで優勝を飾った。チームはWEC第4戦として開催されるル・マン24時間レースでは、20回目の総合優勝を目指している。
ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのマネージングディレクターを務めるジョナサン・ディウグイドは今回のテストの目的を次のように説明する。
「アラゴンはヨーロッパでも数少ない24時間走行が可能なサーキットです。それもあって、今回のようにル・マン24時間に向けて、36時間の連続テストを行うことができます。かなり長いバックストレートは、サルト・サーキットにおける300km/h以上のトップスピードをシミュレートすることも可能なのです」
「セバスチャン・ベッテルのテスト参加は、チームにとってまたとないチャンスとなりました。彼は4度のF1ワールドチャンピオンですし、ハイブリッドシステムと高性能レーシングカーに関する膨大な経験を持っています。フレッシュでユニークな視点からクルマの現状を把握し、我々のシステムやパフォーマンスに多くのフィードバックをもたらしてくれました。それに、彼が笑顔でクルマから降りてきたことも、嬉しかったですね」