「BMW XM Label」対「BMW i7 M70 xDrive」1000Nmオーバーの世界を味わえる2台

驚異の1000Nmオーバー対決「BMW XM Label」対「BMW i7 M70 xDrive」は想像を超えた展開に

M専用モデルとして登場したXMに追加された最強グレード「Label」。SUVながらシステム最大トルク1000Nmの大台に到達したスーパーSUVだ。かたやBMWのBEVフラッグシップセダンとして1015Nmの実力を誇るi7 M70。SUVとセダンとカテゴリーは異なるものの1000Nmオーバーの世界を比較してみた。
1000Nmオーバーを体現するBMWのスーパーSUVとスーパーBEVを比較してみた。
M専用モデルとして登場した「XM」に追加された最強グレード「Label」。SUVながらシステム最大トルク1000Nmの大台に到達したスーパーSUVだ。かたやBMWのBEVフラッグシップセダンとして1015Nmの実力を誇る「i7 M70」。SUVとセダンとカテゴリーは異なるものの1000Nmオーバーの世界を比較してみた。(GENROQ 2024年6月号より転載・再構成)

BMW XM Label
X
BMW i7 M70 xDrive

ついに登場した1000NmオーバーのスーパーSUV

1000Nmを超えるBMWのPHVとBEVセダンを比較した。

BMWの頂点SUVであるXMをベースに、さらなる高みを目指したXMレーベルは、197PS/280Nmというモーターや総電力量29.5kWhのリチウムイオンなどの電動システムはそのままに、パワーの源となる4.4リッターV8ツインターボを96‌PS/100Nm上乗せ。その結果として、システム出力は実に748PS、そして同トルクはついに大台の1000Nmに達している。

XMレーベルがターゲットとするのは、もちろんSUV世界最速リーグに属するクルマたちだ。具体的には、アストンのDBX707、フェラーリ・プロサングエ、ランボルギーニ・ウルス・ペルフォルマンテ、ポルシェ・カイエンターボGTの4台。これらはどれも最高速度300km/h以上、0-100km加速(ゼロヒャク)3.3秒を豪語するが、すべて純エンジン車で、そのトルクはDBX707の900Nmが最大だ。

さらに視野を広げても、最大トルクで1000Nmの大台に乗せている量産パワートレインは、ほかにAMGのEパフォーマンスくらい。これもXMと同じくプラグインハイブリッドである。かつてのブガッティ・ヴェイロン、あるいは最近だとケーニグゼグなど、世界には純エンジンで1000Nm超えの例もなくはないが、量産車でそれを実現するには、さすがに最新の電動技術が不可欠といっていい。いずれにしても1000Nmとはいまだに特別である。

モダンな加飾とセンスがピカイチのXMレーベル

というわけで、1000Nm超の世界をあらためて味わうべく、XMレーベルに加えてもう1台の特別なBMWを連れ出すことにした。それは、XMと双璧の頂点BMWといえるi7 M70 xドライブ。i7はいうまでもなく純電気自動車(BEV)で、前に258PS/365Nm、後に489PS/650Nmのモーターを配して、システム出力は659PS、そして同最大トルクはこちらも大台の1015Nmを謳う。

まずはi7で走り出す。このMを冠する大型BEVサルーンは、その威圧的な体躯と物騒なスペックとは裏腹に、アクセルペダルを乱暴に扱わないかぎりは、その走りは驚くほど上品で快適、そして静かだ。しかし、マイモードをスポーツ(スポーツプラスが用意されないのは、ひとケタ数字のMではないからか)に設定して、右足を一気に踏み込むと、見えない巨人に背中を蹴っ飛ばされたかのような衝撃に見舞われる。

これほどのトルクを瞬時に解き放つと、普通はアンダーかオーバーのどちらかに足どりが乱れそうなものだが、i7は一瞬タイヤが音を上げそうな兆候を感じさせつつも、走行ラインはぴたりと安定したままだ。これはBEVならではの電光石火かつ超精密な4WD配分によるものだろう。また、これほどのレスポンスでも、ギヤのバックラッシュショックをまったく感じさせないのも、BMWが培ってきた駆動制御の賜物か。

いずれにしても、静かで上品な乗り心地なのに、右足を動かすごとに襲いかかるGと、目まぐるしいほどの景色の流れだけは尋常ならざる・・・という不思議な感覚は、まさに超高性能BEVならではの世界だ。

静かで上品な振る舞いが魅力のi7 M70

これと比較すると、XMレーベルの1000Nmは、良くも悪くも内燃機関の息吹を感じさせる。なにせ内燃機関部分だけでも585PS、750Nmと、M謹製のV8ツインターボは世界でも屈指の高性能エンジンといって差し支えない。エンジン単体性能では冒頭の4台にわずかにゆずるが、そこに電動システムを絡めることで、一気に1000Nmの大台に載せるのがBMW流である。

そんなXMレーベルの最高速度は290km/h、ゼロヒャクが3.8秒。ゼロヒャクは通常のXMを0.5秒、X6Mコンペティションを0.1秒凌ぎ、BMW製SUV史上最速となる。ただ、最高速はともかく、ゼロヒャクが最速SUVの称号である3.3秒に及ばないのは、それら4台より300〜400kg重いウエイトのせいか。重量だけは、いまだ電動パワートレインのアキレス腱というほかない。ちなみに、i7 M70のそれはXMレーベルより0.1秒速い3.7秒。さすがBEVだ。

ただ、リアルワールドで体感する動力性能では、XMレーベルはこれら4台に引けを取らない……どころか、右足のわずかな力加減にもピタリと吸いつくトルクデリバリーは純エンジン車とは別次元で、電動ならではの美点というほかない。

もっとも、ドライブモードを最高のスポーツプラスにして全デバイスをフル稼働させたXMレーベルの振る舞いは、ほぼ純エンジン車だ。山坂道ではいかにもFRベースらしい回頭性を見せるが、油圧多板クラッチによる4WDも、電動アシストによる電光石火のレスポンスにもまるで後れを取らないのは大したものだ。ただ、アクセル操作と変速タイミングによっては、ときおりパワートレイン全体が盛大に揺れる瞬間があるのは事実。これはBEVのi7には見られなかった現象で、高出力エンジンと大トルクモーターが相まった1000Nmのすさまじさを、あらためて思い知らされる。

XMレーベルの世界をぜひ味わってみてほしい

1000Nmオーバーといえども両者それぞれ異なる世界観を持っているのがとても興味深い。猛獣のようなXMレーベルに対し、i7 M70は紳士的な振る舞いだ。

4WDに加えて、可変ダンパーにアクティブスタビ、四輪操舵など、BMWが培ってきたダイナミクス技術が総動員されたXMレーベルは、1000Nmを余すところなく路面に叩きつける。それをひとしきり走らせた時に全身を襲う疲労感は、純エンジンスポーツカーのそれとはまた別物だ。2.7t以上の物体を、電動パワートレインならではの息をもつかせぬ1000Nmで走らせる……。今はXMレーベルでしか味わえない世界は、やはり尋常ではない。

REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
MAGAZINE/GENROQ 2024年 6月号

SPECIFICATIONS

BMW XM Label

ボディサイズ:全長5110 全幅2005 全高1755mm
ホイールベース:3105mm
車両重量:2730kg
エンジンタイプ:V型8気筒DOHCターボ
総排気量:4394cc
最高出力:430kW(686PS)/6000rpm
最大トルク:750Nm(76.5kgm)/1800-5400rpm
モーター最高出力:145kW(197PS)/6000rpm
モーター最大トルク:280Nm(28.6kgm)/1000-5000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前275/35R23 後315/30R23
航続距離(WLTCモード):─
車両本体価格:2420万円

BMW i7 M70 xドライブ

ボディサイズ:全長5390 全幅1950 全高1545mm
ホイールベース:3215mm
車両重量:2760kg
エンジンタイプ:─
総排気量:─
最高出力:─
最大トルク:─
モーター最高出力:485kW(659PS)
モーター最大トルク:1015Nm(103.5kgm)
トランスミッション:1速固定
駆動方式:AWD
サスペンション:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前255/40R21 後285/35R21
航続距離(WLTCモード):570km
車両本体価格:2198万円

【問い合わせ】
BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
https://www.bmw.co.jp/

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