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Hyundai IONIQ 5 N
はて? 自分は何に乗っているのだろう
「はて? 自分は何に乗っているのだろう……」。ヒョンデのNブランド初のハイパフォーマンスEV、アイオニック5N試乗中の感想だ。アイオニック5のAWDモデルの最高出力305PS(RWDは217PS)を倍以上に高めた最強グレードであり、前後モーターはフロント238PS、リヤ412PSで、システム最高出力650PS、同最大トルク770Nmを発揮し、2.2tの重量級ながら、0-100km/h加速3.4秒、最高速260km/hを誇る。このスペックは10秒間だけ使えるNグリンブーストを使用した数値で、通常時は最高出力609PS、最大トルク740Nmというが、これでも十分だろう。なおNグリンブーストは10秒の後に再使用できる。
写真ではサイズ感が伝わりにくいがデカい。フォルクスワーゲン・ゴルフより約400mm長く、150mm幅広く、160mm高いといえば理解してもらえるだろうか。だから乗り込むと座面高はクロスオーバーSUV然とした高さだ。ヒョンデの電動車プラットフォーム、E-GMPは総電力量84kWhのバッテリーがフロアに敷き詰められるため、高床式となるのはやむを得ない。
巧みな音と振動の演出
だが、走り出せば、大きさや重さを感じずにまるでスポーツモデルを走らせているような印象だ。BEVならではの低重心だけでなく、冒頭書いたような自分が今、EVに乗っているのか、内燃機関車に乗っているのか、わからなくなる音と振動の演出が大きい。まずNeシフトと呼ばれる8速DCTのような操作感覚の仮想変速機が面白い。エコ、ノーマル、スポーツ、Nと用意される各モードで、スポーツ以上を選ぶとタコメーターが表示され、6750rpmのレッドゾーンに当たると、きちんとフューエルカットしているような音と振動を再現する。
この音響効果が抜群で、アクセルオフの際のバックファイヤまで完全に再現されたサウンドが車内に轟く。EVなのに? このNアクティブサウンド+と呼ばれる効果音は室内8個のスピーカーで再現されたものだ。「はて?」と思わずにはいられない。
その挙動はミッドシップ
今回の試乗会ではサーキットや散水車によるウエット路面で少しずつ、限界域の挙動も確認できた。見た目は横置きエンジン搭載のホットハッチだが、その挙動はミッドシップだ。定常円ではフロントエンジンのような御しやすさはなく、先読みしないといけないシビアさがあった。ホイールベース間のフロアに重量物を敷き詰めたことが大きい。
だがそれらのシビアさや楽しさも、変幻自在な前後駆動力配分を使えば、擬似エンジンサウンド同様にどうとでも調整できる可能性がある。アイオニック5Nの試乗は、電動化のさらなる可能性を改めて示してくれた大きな一歩と感じた。
REPORT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/Hyundai Mobility Japan、GENROQ
MAGAZINE/GENROQ 2024年7月号
SPECIFICATIONS
ヒョンデ・アイオニック5N
ボディサイズ:全長4715 全幅1940 全高1625mm
ホイールベース:3000mm
車両重量:2210kg
モーター
タイプ:永久磁石同期
フロント最高出力:175kW(238PS)
フロント最大トルク:370Nm(37.7kgm)
リヤ最高出力:303kW(412PS)
リヤ最大トルク:400Nm(40.8kgm)
システム最高出力:478kW(650PS)
システム最大トルク:770Nm(78.5kgm)
バッテリー
電力量:84.0kWh
トランスミッション:1速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後マルチリンク
タイヤサイズ(リム幅):前後275/35R21
電気消費率:8.6km/L
最高速度:260km/h
0-100km/h加速:3.4秒
車両本体価格:900万円(予定価格帯)
【問い合わせ】
ヒョンデ カスタマーセンター
TEL 0120-600-066