目次
Toyota Land Cruiser “250”
約束された大ヒット
トヨタが世界に誇る「どこへでも行き、生きて帰ってこられるクルマ」であるランドクルーザー・ファミリーの“250”が、正式に国内発売となった。「どこへでも行き〜」という文言は、トヨタが掲げるランクルの基本コンセプト……というか、いわば「掟」である。
ランクルを名乗るクルマには、この250に加えて、頂点の300(の正式商品名は、数字のつかないランドクルーザー)、そして1984年から連綿と造り続けられる最も質実剛健な“70”という3台がある。250は、300と70の間に位置するランクルの真ん中にして、おなじみ「プラド」の後継機種にあたる。
250という車名の由来は型式名による。70系の乗用ワゴンモデルに源流をもつ歴代プラドのそれは、90、120、150と、これまで30ずつ進化(?)してきたのだが、この新型では一気に100の上乗せとなった。その数字は、250がこれまでにない大幅な進化を遂げていると同時に、上級の300との深い関係性を意味していると考えればいい。
質実剛健への回帰を目指した250
ランクルの下まわりは全車が独立フレームだが、これまでのプラドは最上級のランクルとは別系統のフレームを使うのが定石だった。しかし、新型250は300と共通のGA-Fプラットフォームを土台とする。2850mmというホイールベースも300と同寸で、4950mmという全長も、300(の最も短いグレード)のそれと変わりない。
ただ、そのプロポーションは300と明確に違う。(スタビライザーの取り回しまで300から変更して)極限まで切り詰めたフロントオーバーハング、切り立ったAピラーによるロングノーズ、リヤまで一貫して水平基調のベルトライン、台形ホイールアーチ……などのモチーフは歴史的ランクル(?)ともいえるFJ40の現代的解釈なのだそうだ。
これまでのプラドはあえて乗用車的な高級感を目指していたが、250は「ランクルのど真ん中として、質実剛健への原点回帰」を期する。ツール感を強めた直線基調の内外装デザインもその一環といっていい。
国内屈指のオフロードコース「さなげアドベンチャーフィールド」で行われた今回の試乗会には、250を筆頭に、300や70という最新ランクルファミリー、比較用の150系プラドが揃っていた。そして、特設された林間コースやモーグル、そして「岩登り」などを、そのすべてのランクルで走ることができた。
悪路走破性はわずかに300が上か!?
プラットフォームを共有する250と300だが、開発陣によると、極限的な悪路走破性は、わずかにフラッグシップの300が上回るという。サスストロークが300のほうが少しだけ長く取られているからだ。
その他の300と250のメカニズム的な違いは、ディーゼル、ガソリンともエンジンが4気筒(300はV6)に、変速機が8速AT/6速AT(同じく10速AT)になり、電子制御ダンパーの用意がないこと、そして電動パワステやフロントスタビライザーのマニュアル解除機能「SDM」が初搭載された。
今回の試乗コースの難易度は、アマチュアの筆者には限界ギリギリだが、ランクルには序の口レベル。実際、プラドや70ではときに繊細なライン取りや大胆なアクセルワーク、一時後退しての再トライなどが必要だったが、250と300は、まったくイージードライブ。助手席に座る開発スタッフの「ここはタイヤひとつ左、滑ってもアクセルは緩めない」といった指示どおりに操作すれば、見るだけでひるみそうなワダチや岩を、涼しい顔で乗り越えていく。
正直いって、この程度(!)のオフフードでは、250と300の走破性の違いは分からない。それどころか、3.5リッターV6ターボの300より明確に軽い鼻先、軽く安定した電動パワステで、250の方がより自信をもって取り回せたくらいだ。300より小排気量ながら、ジワジワ這いずる速度で足指のわずかな力加減とぴたりシンクロするトルク特性も、見事というほかない。
まじで、ランクルってすげぇ!!
設計年次が250より古く、それこそ地球滅亡前夜(?)でも壊れない信頼性に拘った300は今も伝統的な油圧パワステ(+電動アシスト)を持つが、少なくとも今回の試乗では、250のステアリングフィールに軍配を上げたい。いずれにしても、悪路を何度走らせていただいても「ランクルすげえ」という子供みたいな感想しか抱かせないところに、逆にランクルのすごみがある。
ちなみに、ランクル250の車両本体価格は520万〜745万円。300のそれ(510万〜800万円)と完全に同等だが、すでに3年以上受注停止中状態の300が販売再開されるときは、おそらくマイナーチェンジか一部改良が実施されて、価格帯も明確に格上げされるのだろう。
REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)
MAGAZINE/GENROQ 2024年 7月号
SPECIFICATIONS
トヨタ ランドクルーザー “250”X“ ファースト エディション”
ボディサイズ:全長4925 全幅1980 全高1935mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:2400kg
エンジン:直列4気筒DOHCディーゼル
総排気量:2754cc
最高出力:150kW(204PS)/3000-3400rpm
最大トルク:500Nm(51kgm)/1600-2800rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後トレーリングリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前後265/60R18
車両本体価格:785万円
【問い合わせ】
トヨタ自動車お客様相談センター
TEL 0800-700-7700
https://toyota.jp