目次
1959 Porsche Type754 T7
356の後継車となる新プロジェクト「T7」
旧態化した356に代わる新世代2+2GTとして、1959年に完成したプロトタイプ。そのプロジェクト名から「T7」と呼ばれることもある。
1950年の初輸出以来、北米で好評を博していた356だが、市場からの声に応え排気量アップ、パワーアップを順次行っていったものの、リヤに搭載したフラット4 OHVに限界があるのは明らかだった。
そこでポルシェが1957年にスタートさせたのが、356の後継となる新型車のプロジェクト「T7」である。
シャシーとエンジンを新規開発
市場から要望の多かったリヤシートの居住空間やラゲッジスペースの拡大、モアパワーの声に応えるため、フェリー・ポルシェはシャシーとエンジン双方の新規開発を決意。シャシーはホイールベースを2400mmに延長し、居住性と直進安定性の向上を図るとともに、フロントサスペンションをマクファーソンストラットに変更することで、ラゲッジスペースの容量アップを実現した。
あわせてエルヴィン・コメンダと若きフェルディナント・アレキサンダー(ブッツィ)・ポルシェによってデザインされたボディは、フェリーの意向を受けグリーンハウスの広いノッチバック・タイプの2+2とされた。
6気筒エンジンの開発をスタートしたが・・・
一方エンジンは、パワー不足が露呈していた従来のフラット4に代わり、フェリー・ポルシェの指示のもとクラウス・フォン・リュッカートの手で全く新しい6気筒エンジンの開発がスタートしていた。
これは356のフラット4に2気筒を継ぎ足したような構造の空冷水平対向6気筒OHVで、排気量は80mm×66mmのボア×ストロークをもつ1991ccとなっていた。また左右のバンクそれぞれに、空冷軸流ファンを備えていることと、サイドドラフト式のソレックス32PBICを6基装着していたことも特徴だった。
「Type745」と名付けられたエンジンは開発に手間取り、シャシーからかなり遅れた1962年に完成すると、早速「Type754」のボディに搭載(それまでは356 カレラ2の2.0リッターフラット4 DOHCを搭載していた)されテストが行われた。その結果、最高出力120ps、最大トルク170Nmとパフォーマンスはまずまずだったものの、盛大なメカニカルノイズ、サイドドラフト式キャブレターの横幅の広さ、重い4ベアリングのクランクシャフト、耐久性の低さなどが問題となり、開発は早々に打ち切られてしまった。
Type754の試行錯誤が911に繋がる
最終的に生産型の911では、「Type754」の特徴であったノッチバック・スタイルがなだらかなルーフラインとなり、エンジンもダウンドラフト・キャブレターを備えた2.0リッターフラット6 SOHCに変更されることになるが、「Type754」での様々な試行錯誤が911の開発に多いに役立ったことは、改めて説明するまでもないだろう。
現在ポルシェ・ミュージアムに保管されているのは、当時4台製作されたといわれる「Type754」の中で唯一現存する1台。エンジンルームには356B カレラ2用の2.0リッターフラット4 DOHCユニットが搭載されているが、リヤパネルに他のマフラー用と思われる切り欠きが残されていることから、当時「Type745」フラット6を搭載しテストされた個体のようだ。
「Type754」のボディを製作したのはロイター。プロトタイプとは思えないほどしっかりとしており、ドアの立て付けや細部の仕上げなどの完成度も高い。インパネは左に燃料計とコンビのスピードメーター、右に油圧計とコンビのレヴカウンターを配置。このデザインは、901の初期プロトタイプにまで踏襲されることとなる。
【SPECIFICATIONS】
ポルシェ Type754 T7
年式:1959年
エンジン形式:空冷水平対向4気筒DOHC
排気量:1498cc
最高出力:190hp
最高速度:250km/h
TEXT/藤原よしお(Yoshio FUJIWARA)
投稿 【ポルシェ図鑑】「ポルシェ Tyep754 T7(1959)」356と911を繋ぐ画期的なプロトタイプ。 は GENROQ Web(ゲンロク ウェブ) に最初に表示されました。