マイナーチェンジした「アルピナ B4 GT/B3 GT」をサーキットで試す

純アルピナ最後のモデル「B4 GT」「B3 GT」に試乗して痛感した「FR的キャラとAWD的キャラ」

おそらくブッフローエ発の最後のアルピナとなるであろう、B4 GTとB3 GTの国際試乗会に参加してきた。マイナーチェンジ版とはいえ、その走りは大いに進化していた。
おそらくブッフローエ発の最後のアルピナとなるであろう、B4 GTとB3 GTの国際試乗会に参加してきた。マイナーチェンジ版とはいえ、その走りは大いに進化していた。
アルピナの中核モデルB4グランクーペおよびB3リムジン/ツーリングがマイナーチェンジを果たした。車名に新たに「GT」を冠した2モデルはエンジン出力とシャシーの向上が図られている。B4 GTグランクーペを中心にインプレッションをお届けしよう。(GENROQ 2024年9月号より転載・再構成)

BMW Alpina B4 GT / B3 GT

ブランド最後の純度100%モデル

2025年を持ってBMW傘下となるドイツの高級ブランド、アルピナ。今回フェイスリフト版のB4グランクーペ、B3リムジン/ツーリングの試乗することができた。
2025年を持ってBMW傘下となるドイツの高級ブランド、アルピナ。今回フェイスリフト版のB4グランクーペ、B3リムジン/ツーリングの試乗することができた。

未だに信じられない気持ちもあるが、アルピナの商標権は2025年の末にBMWへと渡り、その傘下で高級ブランドとしての展開が始まる。6月頭に発表された「B3 GT」「B4 GT」は、だからブッフローエ発の最後のアルピナとなるはず。その国際試乗会の舞台はドイツ・ザクセンリンク。ピットレーンにはB3 GTとそのツーリング、B4 GTの3台が並んでいた。今回のモデルはこれまでのB3とB4のフェイスリフト版ということになる。

B3/B4からの変更箇所は内外装、機関など多岐にわたる。一見してわかるのはホイールやエンブレムがオロ・テクニコという深みのあるゴールド仕上げになっていること。性能面ではS58型3.0リッター直6ツインターボの最高出力が495PSから529PSまで高められたことが印象的。この出力向上に合わせフロントスポイラーの端にカナードも追加された。

それ以外にもB3 GTではフロントストラットにドームバルクヘッドレインフォースメントが装着されている。またリヤダンパー取り付け方法が強固になったことを受け、リヤのスタビライザーを一段階細くしている。B4 GTの場合は逆に前のスタビを細くすることで、フロントタイヤからのフィードバックが高められているという。

34PS出力が向上した珠玉のS58ユニット

グレーに塗られたB4 GTは定番のブルーやグリーンに引けを取らないくらいエレガントな印象だった。B4とB3はボディ形状が違うだけではなく、出発点が異なるとアンドレアス・ボーフェンジーペン社長は言う。BEVのi4との関係性によりグランクーペの方がリムジンよりフロアの剛性が高いのだという。このためB4 GTの方がよりハードなスプリングとダンパー、そしてB5譲りのタイヤを許容している。

実際にB4 GTで走りはじめたとき、ボディ剛性よりも印象的だったのはリヤタイヤだった。B3では265幅だが、B4の場合は285幅まで拡幅されている。ちなみに両車ともフロントは255幅、駆動はAWDなのだが、それでも動的質感が異なるのは当然だろう。

B4 GTのドライブフィールはFR的、より極端な言い方をすると911ターボ的なのだ。コーナーへのターンインを慎重に行って向きを変え、リヤ2輪に目いっぱいのパワーをかけ脱出する感じ。その際の電制LSDの締結の強さも強烈だ。

限界走行は大いに刺激的だが、それより幾分穏やかにB4 GTを走らせると、アルピナらしいスタビリティの高さが際立ってくる。529PSのクルマを200km/hオーバーで走らせていても、ちゃんとコントロール下にあると確信でき、パワーやスピードが半分くらいに感じられる。アルピナが掲げる305km/hという巡航最高速度は、ドライバーのリラックス感まで含めてそれを可能にするという意味なのだろう。

対照的な2モデル

B3 GTには写真のツーリングとリムジンの2タイプのボディが設定される。走り味はどち らも酷似しているという。
B3 GTには写真のツーリングとリムジンの2タイプのボディが設定される。走り味はどちらも酷似しているという。

一方のB3 GTはB4 GTと比べるとはるかにAWD的。荷重移動を意識せずに踏んでいけるキャラクターに仕上がっていた。トラックDSCを選びコーナーで少々無理をしても、テールがよく粘る感じもBMW Mとは対照的。リヤスタビの仕様変更+フロント補強の効果は、ステアリングからのフィードバックを増やしつつ、リヤはこれまでと同等のしなやかさを確保した感じだろう。最高出力が高まっているにも関わらず、むしろピーク付近が穏やかで扱いやすいと感じられたのだ。

B3 GTツーリングでもリムジンとは違う専用のダンパー、スプリングを採用しているが、ボディ形式の違いをほとんど感じさせないドライブフィールに仕上げられていた。

随所に配されるレザーの質感

パドックで話を聞くことができたエンジニアのトビアス・ウィーガーによれば、物理的な変更はもちろんだが、それは一要素に過ぎないという。彼を含む10人のチームが1年ほどの時間をかけ「アルピナらしさ」を追求した電子制御のキャリブレーションが重要なのだと力説していた。

また試乗会に同席していたピレリのエンジニアにアルピナの良さを聞くと悪戯っぽく「ニュルでテストしないから(笑)」と一言。最終チェックでニュルを走る以外は公道や一般的なトラックで煮詰めている点が、アルピナの味を生みだすようだ。

最終モデルまで一貫した開発姿勢とその仕上がりに、派手さはないが実直なブッフローエ・アルピナの本懐が感じられたのである。

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/Alpina Aumotobiles
MAGAZINE/GENROQ 2024年9月号

SPECIFICATIONS

アルピナB4 GTグランクーペ

ボディサイズ:全長4800 全幅1850 全高1440mm
ホイールベース:2856mm
車両重量:1965kg
エンジンタイプ:直列6気筒DOHCターボ
総排気量:2993cc
最高出力:389kW(529PS)/6250-6500rpm
最大トルク:730Nm(74.4kgm)/2500-4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前255/35ZR20 後285/30ZR20
0-100km/h加速:3.5秒
巡航最高速度:305km/h
車両本体価格:1660万円

アルピナB3 GTツーリング

ボディサイズ:全長4725 全幅1827 全高1438mm
ホイールベース:2851mm
車両重量:1945kg
エンジンタイプ:直列6気筒DOHCターボ
総排気量:2993cc
最高出力:389kW(529PS)/6250-6500rpm
最大トルク:730Nm(74.4kgm)/2500-4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前255/35ZR20 後265/30ZR20
0-100km/h加速:3.5秒
巡航最高速度:305km/h
車両本体価格:1670万円

【問い合わせ】
ALPINA CALL
TEL 0120-866-250
https://www.alpina.co.jp/

BMW アルピナは、大幅なパフォーマンスアップを実現した「B3 GT ツーリング」と「B3 GT リムジン」、そして「B4 GT グランクーペ」を発表。日本への導入をスタートする。

パフォーマンスを高めたBMW アルピナ「B3 GT」と「B4 GT」がデビュー「最高出力529PS」【動画】

BMW アルピナは、中核モデルのB3とB4に改良を実施、新型モデル「B3 GT」と「B4 GT」を発表した。強力な動力性能とドライビングパフォーマンスを持つ「B3 GT リムジン」「B3 GT ツーリング」「B4 GT グランクーペ」は、現在予約オーダーを受け付け中。日本への導入時期は2024年末を予定している。

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著者プロフィール

吉田拓生 近影

吉田拓生

1972年生まれ。趣味系自動車雑誌の編集部に12年在籍し、モータリングライターとして独立。戦前のヴィンテ…