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Lamborghini Revuelto
新世代ランボルギーニの要素
ランボルギーニにとって初の量産プラグインハイブリッド(PHV)スーパースポーツ、レヴエルトを富士スピードウェイで試乗した。ランボルギーニは、ウルスSEやウラカン後継のV8PHVを発表しており、2021年に発表された中期電動化計画「コル・タウリ」の3段階のうち第2段階にある今年、予定どおり全モデル電動化を完遂しようとしている。2026〜30年には第4のモデルとなるフル電動車の市場投入を宣言しているランボルギーニにとって、レヴエルトは新時代を宣言する一里塚の意味もある。
最新フラッグシップとなるレヴエルトだが、V12エンジンをミッドに搭載するランボルギーニ伝統のAWDスーパースポーツという立ち位置は変わっていない。ただし、その中身は前述のコル・タウリに沿って、先代アヴェンタドールから大きな進化を遂げた。レヴエルトを新世代たらしめる要素は、大きく5つだ。まず、先代比10%軽量化しつつ25%ねじれ剛性を向上したというモノフューズレージと呼ばれるCFRP製モノコック。リヤミッドに搭載された新開発のL545型V12自然吸気エンジン。その後ろに横向きに搭載されたモーター内蔵の8速E-DCT。そして左右前輪をそれぞれ駆動するフロントEアクスル、車体中央を貫く電力量3.8kWhのバッテリーである。そのシステム最高出力は1015PSに達し、パフォーマンスは0-100km/h加速2.5秒、最高速350km/hを誇る。
なお、先代まではミッドに積まれたエンジン前に配置されたトランスミッションに出力し、トランスミッションを経由して前後輪を駆動していたが、レヴエルトではエンジン後方にトランスミッションが配置され、前輪はモーターのみで駆動する。つまり前後輪に物理的な接続はない。
レーシングカーばりのダイヤルとスイッチ類
試乗会はあいにく雨だった。サーキットで雨とくれば、タイヤが気になるところだが、装着されていたのはブリヂストン製ポテンザスポーツだった。なんとランフラットタイヤである。結論から述べれば、ランフラットの乗り心地やウエットグリップの不安も今は昔。この日も言われなければ気づかなかったのではないかと思うくらいにしなやかでウエットグリップが高かった。
土砂降りのピットレーンに並ぶレヴエルトは、直線的でありながら筋肉質な有機体を思わせる凝ったデザインだが、Y字に光るデイタイムランニングライトなど、これまでの系譜をきちんと継承しつつも、最新のランボルギーニデザインを感じさせる。シザーズドアを跳ね上げて、指定されたオレンジ色のレヴエルトに乗り込む。シートポジションを合わせようとするが、シートバックがあまり倒れないのが残念だ。全体的にアヴェンタドールのボタン配置は踏襲しているものの、現代のスーパースポーツらしく12.3インチのメーターパネル、8.4インチ縦長センタータッチスクリーン、9.1インチ助手席側タッチスクリーンなど大型ディスプレイを備える点が新しい。
室内でもっとも変わったのはステアリングだろう。レーシングカーばりにダイヤルとスイッチがある。左にドライビングモード、右にハイブリッドモードの2つのダイヤルが備わる。ドライビングモードは、チッタ(EV)、ストラーダ(ノーマル)、スポーツ、コルサ(レース)そしてコルサESCオフの5モード。ハイブリッドモードはパフォーマンス、ハイブリッド、リチャージ(充電)の3モードで、それぞれ個別に設定できる。2つのダイヤルの下に、やや小ぶりなダイヤルもあり、左がフロントリフト、右がリヤウイングの角度調整となっている。なおモードによってシステム出力も変わり、ストラーダでは886PS、スポーツでは907PSにまで高められる。コルサを選択し、ハイブリッドモードでパフォーマンスを選択すると1015PSの4桁出力を堪能できる。
9400rpmまでしっかり回してシフトアップすると
試乗はいつもどおりのカルガモ式で、ストレートを2回通過してピットインする3周1セッションが2回だ。走り始めはチッタ&ハイブリッドモードを選択する。ダイヤルを回した瞬間に静寂が訪れ、静々とタイヤが転がり始める。これがコル・タウリ感か。だが1コーナーでストラーダに切り替えると、いつもの猛々しさにホッとする。とはいえコースは川の流れるコンディションなので今日試せることは少なそうだ。
300Rの川をやり過ごし、コルサとパフォーマンスを選択して1015PSモードにする。先導車ありのカルガモ走行なので最終コーナーは全開ではなく、隊列を整えてからの加速ではあったが、それでも小雨になった第2セッションで、レブリミットの9400rpmまでしっかり回してシフトアップするとコントロールライン付近であっけなく300km/hに達した。淀みなく吹け上がるV12エンジンと強力なモーターから発生する1015PSはこれまでにないポテンシャルを発揮してみせた。体感的には270km/hだったが、大台に達したことに驚いた。
コルサは出力だけではなく、フロントモーターのトルクベクタリングの効果も最大化される。低速コーナーで積極的にアクセルを踏み込むと、わずかにテールが出て気持ちよく向きを変える。メーターをチェックすると、ESCランプが点滅しているが嫌な介入ではなく、制御は最小限だ。アヴェンタドール・ウルティマエ比で10%早められたステアリングギヤ比も相まってコーナーが待ち遠しい。
これまでと別格の一体感
雨のサーキットで遊ぶ分にはテールハッピーで楽しいと思っていたが、2セッション目で乗り換えたグリーンのレヴエルトは、コルサモードでもフロントが逃げてしまい、先ほどとはまったくキャラクターが違った。ピットでタイヤを確認するとオーバーステア志向のオレンジ車がフロント21、リヤ22インチのランフラットなのに対して、安定志向のグリーン車はフロント20、リヤ21インチの非ランフラットだった。遊べるのはオレンジだが、安全にタイムが出るのはグリーンだと感じた。
エンジン同様に感銘を受けたのがDCTだ。変速が速く、これなら高速コーナーでも安心してスムーズに走れる。この画期的なE-DCTは、当然ながらこのレヴエルトのためだけではなく、ピュアスポーツカーのウラカン後継モデルにも採用されると想像すると、今後の展開が非常に期待できる。ブレーキペダルのタッチがいいのもクルマに対して信頼を寄せられるひとつの要因となった。アヴェンタドールよりストロークが短く踏み応えもしっかりしている。
悪天候ながら、望外に楽しめたレヴエルトの試乗を振り返ってもっとも驚いたのは、これまでとは別格と言えるクルマの一体感だ。前輪を電気モーターで駆動するレヴエルトにはプロペラシャフトがない。今までAWDのシャシーの一体感は物理的につながっている方が高いと信じていたが、レヴエルトの走りはアヴェンタドールとはまったく異なるレベルだった。新エンジンと新E-DCTの登場は、コル・タウリがランボルギーニの環境対応戦略ではなく、純粋にパフォーマンスアップのための戦略だということを証明した。
REPORT/吉岡卓朗(Takuro YOSHIOKA)
PHOTO/平野 陽(Akio HIRANO)、Lamborghini Japan、GENROQ
MAGAZINE/GENROQ 2024年9月号
SPECIFICATIONS
ランボルギーニ・レヴエルト
ボディサイズ:全長4947 全幅2033 全高1160mm
ホイールベース:2779mm
車両重量:1772kg
エンジン:V型12気筒DOHC
総排気量:6498cc
最高出力:364kW(825PS)/9250rpm
最大トルク:725Nm(74.4kgm)/6750rpm
トランスミッション:8速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/35ZR20 後345/30ZR21
0-100km/h加速:2.5秒
最高速度:350km/h
車両本体価格:6543万2406円
【問い合わせ】
ランボルギーニ カスタマーセンター
TEL 0120-988-889
https://www.lamborghini.com/jp-en