スポーツ派の頂点 新型「ポルシェ・カイエンGTS」に試乗

新型「ポルシェ カイエン GTS」に試乗「日本導入モデルの最強グレードの実力をチェック」

マイナーチェンジ版「ポルシェ・カイエンGTS」。
マイナーチェンジ版「ポルシェ・カイエンGTS」。
デビュー以来順調にバリエーションを拡大し続けるマイナーチェンジ版カイエンに、新たなモデルが加わった。スポーツ性を大きく高めた「GTS」だ。気になるのはラインナップのすぐ下に位置するカイエンSとの違いだろう。同じ4.0リッターV8ツインターボを搭載するが、果たして……。なお、このGTSはSUVとクーペの両車に用意される。(GENROQ 2024年9月号より転載・再構成)

Porsche Cayenne GTS

カイエンSとの差別化はいかに?

咋年、大幅な改良を受けて登場した「ポルシェ カイエン」のラインナップに新たに加わったのが「カイエンGTS」である。かつては自然吸気エンジンを積む最高峰モデルとして設定されたGTSだが、全エンジンがターボ化された今では、とりわけオンロードのパフォーマンスに最適化されたモデルと位置付けられている。

気になるのは、新型ではカイエンSも従来のV型6気筒2.9リッターツインターボユニットに代わってV型8気筒4.0リッターツインターボエンジンを搭載していることだ。そちらのスペックは最高出力474PS、最大トルク600Nm。対するGTSは、同500PS、660Nmと、確かに差は付けられているものの、体感できるかというと正直難しいところだろう。

ではGTSは一体何で差を付けるのか。まずルックスの面では、いつものように開口部の大きな専用のフロントマスクが与えられ、灯火類はダークティンテッド化。各部にハイグロスブラックがあしらわれている。ホイールアーチエクステンション、サイドスカートなど従来はボディ同色だった部分があえてブラック化されているのは、GTSのキャラクターをより強く打ち出すためだろう。

インテリアも定番の仕上げ。Race-Texを表皮に用いた360mm径のステアリングホイールやGTSスポーツシートなどを採用し、ブラック基調でまとめられている。

ターボGT譲りのパーツを導入

4.0リッターV8ツインターボは先代に比べ最高出力で40PS、最大トルクで40Nmそれぞれ増加。8速ATも変速時間を短縮するなどの改良が。
4.0リッターV8ツインターボは先代に比べ最高出力で40PS、最大トルクで40Nmそれぞれ増加。8速ATも変速時間を短縮するなどの改良が施されている。
ホイールは21インチのRSスパイダーデザイン。試乗車のタイヤはピレリPゼロだった。偏平率が緩和され乗り心地が良化したことも◎。
ホイールは21インチのRSスパイダーデザイン。試乗車のタイヤはピレリPゼロだった。偏平率が緩和され乗り心地が良化したことも◎。

そして専用のシャシーだ。アダプティブエアサスペンション、PASM、PTV Plusが標準装備となり、車高は10mmダウン。PASMが伸び・縮みの減衰力をそれぞれに制御できる2バルブタイプとされ、エアスプリングが従来の3チャンバーから2チャンバーに改められているのは、他グレードと同じだ。

注目はフロントアクスルピボットベアリングをカイエンターボGTから流用することで、0.58度大きいネガティブキャンバーが付けられたことである。オンロードのコーナリング重視という姿勢が、端的に現れたポイントといえるだろう。

こうした専用チューニングにも関わらず、快適性は何ら失われてはいない。今までのGTSモデルもその点は秀でていたが、新型は更にカドが丸められた印象である。

車体の姿勢は常にフラットに保ちながら、あらゆる入力をしなやかにいなす。新型カイエンSでも同様に感じたが、リファインされたサスペンションの恩恵は明らかだ。また細かい部分を見れば、フロントの場合で従来の40偏平から45偏平とされるなど、タイヤ外径が拡大されエアボリュームが増していることも、乗り心地に貢献しているのは間違いない。

走りのタッチはまさに背の高いスポーツカー

4WDのトランスファーボックスにはターボGT譲りとなる独立した水冷回路を追加。タフなサーキット走行までを視野に入れている。
4WDのトランスファーボックスにはターボGT譲りとなる独立した水冷回路を追加。タフなサーキット走行までを視野に入れている。

肝心のフットワークは、まさに打てば響くという感覚。試乗車はオプションのリヤアクスルステアリング、PDCCを装備していたので、それを踏まえての印象となるが、すべての操作に対してダイレクトに、けれど決して過敏ではなく、正確無比のレスポンスを示す。

特にSPORTモードの、適度に締め上げられた設定でコーナーに挑む際などは、狙ったラインをどんぴしゃりでトレースできて、まるで修正が要らない。それだけでも快感度は高い。ネガティブキャンバー増大の効果だけを取り出して語ることはできないが、それを含めたトータルでの走りの取りまとめが、きわめてハイレベルなのである。

パワートレインの印象も似通っていて、何よりアクセルを踏み込んだ瞬間、欲しいだけのパワーとトルクをすぐに得られるレスポンスの良さが快感だ。高速道路の合流、コーナーの出口、追い越しの際と、あらゆる場面でクルマとの一体感が高い。速さも増してはいるが、それこそがGTSの真骨頂といえるだろう。

実は新型カイエンでは、先代にあったターボGTは騒音規制などの問題で日本に導入されず、非ハイブリッド系ではこのGTSが最高峰モデルとなる。しかし心配は無用である。この走りに、それだけの実力が十分に備わっていることは間違いない。

PHOTO/Porsche AG

SPECIFICATIONS

ポルシェ・カイエンGTS

ボディサイズ:全長4930 全幅1983 全高1674mm
ホイールベース:2895mm
車両重量:2190kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3996cc
最高出力:368kW(500PS)/6000rpm
最大トルク:660Nm(67.3kgm)/2100-4500rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前285/45ZR21 後315/40ZR21
最高速度:275km/h
0-100km/h加速:4.4秒
車両本体価格:1868万円

【問い合わせ】
ポルシェ コンタクト
TEL 0120-846-911
https://www.porsche.com/japan/

新型「カイエン GTS」および「カイエン GTS クーペ」のエクステリア。

「ポルシェ カイエン GTS」「カイエン GTS クーペ」の日本販売開始「4.0リッターV8ツインターボの最高出力は500PS」

ポルシェジャパンは、オンロード性能を重視した、新型「カイエン GTS」と「カイエン GTS クーペ」の日本導入を開始。4月22日から日本全国のポルシェ正規販売店において、予約受注をスタートした。

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著者プロフィール

島下 泰久 近影

島下 泰久

1972年神奈川県生まれ。走行性能だけでなく先進環境安全技術、ブランド論、運転など、クルマ周辺のあらゆ…