ロータス製フル電動4ドアGT「ロータス・エメヤ」に試乗

ロータスのフル電動4ドアGT「エメヤ」に試乗 「最高速の250km/hまでストレスなしという衝撃」

EVメーカーになることを宣言した新生ロータスがSUVの「エレトレ」に続き4ドアGTの「エメヤ」を発表。このカテゴリーではポルシェ・タイカンやメルセデスEQSといった強力なライバルが先行するが、果たしてエメヤの武器とはいかに。
SUVの「エレトレ」に続くロータス製EVの第2弾。4ドアGTの「エメヤ」に試乗した。
EVメーカーになることを宣言した新生ロータスがSUVの「エレトレ」に続き4ドアGTの「エメヤ」を発表。このカテゴリーではポルシェ・タイカンやメルセデスEQSといった強力なライバルが先行するが、果たしてエメヤの武器とはいかに。(GENROQ 2024年9月号より転載・再構成)

Lotus Emeya

ノーマル、「S」「R」の3グレード展開

ホイールベースが3069mmもあるおかげでプロポーションはのびやか。なお、全モデルがアクティブエアサスペンションおよびアダプティブダンパーを装備している。
ホイールベースが3069mmもあるおかげでプロポーションはのびやか。なお、全モデルがアクティブエアサスペンションおよびアダプティブダンパーを装備している。

中国のジーリーに買収されるやいなや、2028年までに完全なEVメーカーに転身することを発表した「ロータス」。そんな彼らに失望したというファンは少なくないはず。なにしろ、ロータスといえばライトウエイトの盟主。その伝統的なハンドリングを、現代のEV技術で再現できるとは到底、思えないからだ。

そんな思いをよそに、彼らはこの方針に従い、2019年にハイパーEV「エヴァイヤ」を発表。そして2021年には“ロータス最後のエンジン車”となる「エミーラ」がベールを脱いだ。さらに2021年にはSUVの「エレトレ」を、2023年には4ドアGTの「エメヤ」をリリース。純然たるEVであるこの2台は、プレミアム・アーキテクチャーという共通の技術を採用している。

このうち、私がステアリングを握ったことがあるのはエミーラのみ。その完成度はすこぶる高かったが、彼らの計画に従えば、どんなに長くてもエミーラは2028年までの運命。「では、ロータスが造ったEVは、本当にその名に相応しいモデルなのか?」そんな疑問を拭えずにいた私は、先ごろドイツとオーストリアを舞台に開催されたエメヤの国際試乗会に招かれることとなった。

前述のとおり、4ドアGTのEVであるエメヤは前後にモーターを搭載する4WDで、最高出力はエメヤとエメヤSが612PS、エメヤRが918PSとされている。エメヤとエメヤSは装備に差が付けられているのが最大の違いで、いうまでもなくエメヤSのほうが豪華仕様。一方のエメヤRは最高出力が300PS以上も上乗せされているが、これはすべてリヤモーターのパワーアップによって実現されたとのこと。また、これに伴い、エメヤRのみ2速ギヤボックスを採用しているのも特徴的だ。そしてエメヤSではオプション設定となるカーボン・セラミックブレーキ、アクティブアンチロールバー、4WSなどがエメヤRでは標準装備となる点も注目される。

800Vシステムを用いるバッテリーの容量はいずれも102kWhで、航続距離はエメヤRの435kmからエメヤの610kmまでと発表されている(いずれもWLTP)。

重さを感じさせない俊敏さはいわずもがな

運転支援関連のデバイスは、ライダーを4基、レーダーを18基、カメラを計12基装備。各国政府の対応さえ決まればOTAアップデートによりレベル4の自動運転を実装することも可能だ。
運転支援関連のデバイスは、ライダーを4基、レーダーを18基、カメラを計12基装備。各国政府の対応さえ決まればOTAアップデートによりレベル4の自動運転を実装することも可能だ。

最初に試乗したのはエメヤS。走り出しの印象は、車重が2.5tに迫ることが信じられないほど軽やかで、操舵力が軽いステアリングを操れば、全長が5mを超え、全幅が2.1m(デジタル・サイドミラー仕様の場合)もあることが信じられないくらい、軽々とノーズの向きを変えてくれる。それは、タイムラグや重々しさといった言葉とは一切無縁の、軽快でレスポンスに優れたハンドリングといえる。

しかも、そうしたレスポンスのよさを、トルクベクタリングなどのテクノロジーに頼っていないところが素晴らしい。実際には、エメヤにはブレーキ式トルクベクタリングが採用されているのだが、その動作が意識されることは一度もなく、あくまでもドライバーの自然な感覚に沿った、自然でリニアリティの高い反応に終始したのである。

そんなエメヤSがワインディングロードで心地いい走りを披露してくれたのは当然といえる。ロール剛性は高めでも、穏やかなピッチングが感じ取れるシャシー・セッティングにより、自然な荷重移動を生み出しながらレスポンスのいいコーナリングを堪能できる点が最大の見どころ。しかも、ロードホールディングは良好で、多少コーナーを攻めた程度では限界の片鱗さえ見えない。とはいえ、エメヤは純粋なスポーツカーではなく、あくまでもグランドツアラーなのだから、せいぜい限界の6〜7割くらいの領域で、ゆったりと走らせるのが本来の姿だろう。

超高速域と充電の性能は?

EVメーカーになることを宣言した新生ロータスがSUVの「エレトレ」に続き4ドアGTの「エメヤ」を発表。このカテゴリーではポルシェ・タイカンやメルセデスEQSといった強力なライバルが先行するが、果たしてエメヤの武器とはいかに。
超高速域でも直進性は模範的、しかも静粛性は極めて良好。改めてEVが優れたグランドツアラーになりうる可能性を秘めていることに気付いた次第。

そうそう、GTなのだから高速性能についても語らなければなるまい。タウンスピードでも優しい乗り心地のエメヤは、アウトバーンを飛ばしてもフラットな姿勢を崩さず、実に快適。それ以上に驚いたのが高速域での動力性能で、速度無制限区間で200km/hまで加速するのは、まさにあっという間の出来事。注目すべきはその先で、230km/hを超えても240km/hを超えても加速の勢いは鈍らず、ドライバーにまったくストレスを感じさせることなく最高速度の250km/hに到達したのだから驚くしかない。これほど公道で簡単に250km/hに到達できたモデルは、私にとってエメヤが初めてである。

ここで心配になるのが航続距離と充電性能だろう。航続距離のカタログ値は前述のとおりだが、800Vシステムを用いるエメヤは充電性能も優れていて、アウトバーン沿いにあった350kWの急速充電器につなぐと、160〜180kWでぐいぐいと電力を受け止め、およそ30分で50‌kW以上をバッテリーにため込んだ。これだけの充電性能があれば、長距離ドライブも難なくこなせるはずだ。

一方のエメヤRもハンドリングや乗り心地の傾向はエメヤSに準じる。ただし、全開加速ではリヤバイアスなトルク配分が浮き彫りとなり、フロントが浮き上がるような感触が伝わってくる。おそらく、エメヤRはサーキットで走らせた方が、その魅力を満喫できるだろう。

いうまでもなく、エリーゼやエキシージとエメヤは別のクルマだ。しかし、たとえジャンルは違っても「意のままに操れるドライバーズカー」という点において、エメヤはロータスの伝統を正しく受け継いでいるように思う。そしてまた、電動化を推進し、より多くの販売台数が望めるクルマ造りに着手しなければ、この不透明な時代をロータスが生き延びることも難しかったはずだ。

ジーリーはロータスを骨抜きにした重罪人なのか? それともロータスの名を残すことに成功した救世主となるのか? その答えは時がもたらしてくれることだろう。

PHOTO/Lotus Cars Ltd.
MAGAZINE/GENROQ 2024年9月号

SPECIFICATIONS

ロータス・エメヤS

ボディサイズ:全長5139 全幅2123 全高1459mm
ホイールベース:3069mm
車両重量:2490kg
モーター最高出力:450kW(612PS)
モーター最大トルク:710Nm(72.4kgm)
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/40ZR21 後305/35ZR21
最高速度:250km/h
0-100km/h加速:4.2秒

【問い合わせ】
ロータスコール
TEL 0120-371-222
https://www.lotus-cars.jp

フル電動4ドアスーパーGT「ロータス エメヤ」のエクステリア。

ロータスが初のフル電動GT「エメヤ」の価格と仕様を発表「中国に続き欧州と英国で販売開始」

ロータスはフル電動GT「エメヤ」の欧州における価格と仕様を発表した。ベースモデルの価格は英国が9万4950ポンド、EU圏内では10万6400ユーロから。エメヤは2024年1月18日から中国で発売がスタートしており、英国とヨーロッパにおいては2024年第3四半期にデリバリーが開始される。

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著者プロフィール

大谷達也 近影

大谷達也

大学卒業後、電機メーカーの研究所にエンジニアとして勤務。1990年に自動車雑誌「CAR GRAPHIC」の編集部員…