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BMW M440i xDrive Coupe
ドイツ南部から国境を超えてドライブ
2024年、BMWの「4シリーズ クーペ」「4シリーズ コンバーチブル」そして「Z4」に内外装を含めたアップデートが実施された。フレッシュなデザインと、洗練されたディテールを数多く備えたスポーツモデルは、ドライバーを新たな旅へと誘ってくれる。今回、BMWは3.0リッター直列6気筒ツインターボエンジンを搭載する「M440i xDrive クーペ」と「M440i xDrive コンバーチブル」そして「Z4 M40i」を、美しい山々が連なるバイエルンアルプスへと持ち込んだ。
旅の始まりはバイエルンアルプスの麓、灰色のベールに覆われたドイツ南部のテーゲルン湖。湖の南岸に沿ったルートは、時折吹き荒ぶ突風と鋭い雨に見舞われることになった。シェンゲン協定(EU域内での移動の自由を許可する協定)の導入以来30年近くが経ち、かつての国境検問所を見ることはない。3台はオーストリアとの国境を越える前に、伝統的な温泉の街クロイトを通過した。
このルートにおける最初のハイライトは、アッヘン湖に沿った全長約10kmの湖岸道だ。M440i xDrive クーペとM440i xDrive コンバーチブルが搭載する3.0リッター直列6気筒ツインターボエンジンは8速AT(ステップトロニック・スポーツトランスミッション)が組み合わせられ、最高出力379PSを発揮。一方、最高出力344PSのZ4 M40iには、6速MTが組み合わせられ、ダイレクトなドライビングを楽しむことができる。
マウラッハで右折すると、すぐにイェンバッハに到着。ここからインスブルックへと向かうインバレー・モーターウェイへと直接アクセスできる。しかし、雲の切れ間から日差しが見え始めたため、並行する田舎道にルートを変更した。イェンバッハー・ミュージアムを過ぎた辺りでランナバウトをまわり、M440i xDrive コンバーチブルとZ4 M40iのソフトトップを収納。爽やかなオープンエアを楽しむことにしよう。
スキーのメッカ、インスブルックへ
オーストリアに入り、チロル州の州都インスブルックに到着。ここではアップデートされたクーペ、コンバーチブル、ロードスターのエクステリアを堪能することにしよう。4シーターの2モデルには、特別仕様車「M4 CSL」のスタイルを採り入れたヘッドライトとテールライト、そして新しいエクステリアカラーが導入された。
Z4 M40iは、特別仕様車の「ピュア・インパルス・エディション(Pure Impulse Edition)」がチョイスされており、専用のフローズン・ディープグリーン・メタリック(写真)に加え、7種類のペイント仕上げが用意されている。3台ともハイグロス・ブラックのエクステリアミラー・キャップに加えて、足元にはダークカラーのM軽量アロイホイールが装着された。
インスブルックの市街地を走行していると、郊外にあるベルギーゼル・スキージャンプアリーナが何度も目に飛び込んでくるだろう。このジャンプ台は、毎年開催される伝統のスキージャンプのビッグイベント「4ヒルズ・トーナメント」の舞台として知られており、2002年から2003年にかけて全面的に改修された。設計はイラク出身の建築家、ザハ・ハディッド。日本では新国立競技場のコンペ参加で注目を集めた彼女は、ライプツィヒにあるBMWグループのセントラルビルの設計も担当している。
インスブルックから向かったブレンナー峠の旧道は、時折短いストレートを挟みながらワインディングロードが続き、のんびりとクルージング楽しむには最高のロケーション。オーストリアとイタリアの国境、標高1400m近いブレンナー峠までは約35km、1971年にブレンナー・モーターウェイが全線開通するまで、この旧道がオーストリアとイタリアを結ぶ南北の主要連絡路だった。
この歴史的なルートを辿れば、その途中にあるヨーロッパ橋も眺めることができる。地上190mに位置するオーストリアで最も高い位置に架けられた高速道路橋は、パッチュとシェーンベルク間のヴィップ渓谷に架けられている。
イタリア風情が華やかな南チロルへ
ブレンナー峠を越えるルートは、3ヵ国にわたる今回のドライビングツアーで最もチャレンジングな行程だ。シュテルツィングからメラーノへの最短ルートは、標高2100mのヤウフェン峠も越えなければならない。蛇行するカーブが続く約50kmは、3台の異なるドライビングコンセプトを比較するのにぴったりの舞台となった。
M440i xDrive クーペとM440i xDrive コンバーチブルが搭載する、8速ATは、タイトコーナー手前で急ブレーキをかけた後でも常に適切なギヤに変速し、コーナーの出口からダイナミックに加速。一方、Z4 M40iは理想的なエンジン回転数を得るためにも、ドライバー自身が6速MTを操作し、適切なギヤを選択しなければならない。まさにドライバーの腕の見せ所だ。
ザンクト・レオンハルト・イム・ピッツタールを越えると、いよいよこのツアーの終着点が見えてきた。ヤウフェン街道は、大きくカーブしながらパッセイエ渓谷へと下っていく。国境を超えるとイタリア屈指の人気温泉地、メラーノに到着する。この辺りに入ると、オーストリアからイタリアに入ったと、誰もが感じられるようになる。この地域はサイクリング、ハイキング、登山が盛んであり、地中海文化の影響が街の景観にも現れるようになった。
一行はメラノとボルツァーノを結ぶ幹線道路38号線「MeBo」を進む。このルートはラナ、テルラン、エパンを通過し、エッチタール渓谷を抜けて、南チロルのドロミテへと続く。さて、ここから北へ戻るか、それとも太陽に向かって南下するか……。ソフトトップが開いている限り、その選択に迷うことはないはずだ。