Mの世界観に惚れ込んいるBMWファンにおすすめの「X2 M35i」

現代のホットハッチ「BMW X2 M35 i xドライブ」に試乗して時代の移り変わりに衝撃を受けた

第2世代に進化したX2に速くも最強バージョンのX2 M35i xドライブが追加された。その走りの質感をレポートしよう。
第2世代に進化したX2に速くも最強バージョンのX2 M35i xドライブが追加された。その走りの質感をレポートしよう。
第2世代に進化を果たしたクーペSUV「BMW X2」に最強バージョンが追加された。317PS/400Nmのアウトプットを誇る2.0リッター直4ターボを搭載し、AWDを採用するホットクーペSUVだ。洗練さと獰猛さを併せ持つX2 M35iの走りを堪能してきた。(GENROQ 2024年10月号より転載・再構成)

BMW X2 M35i xDrive

新たなCセグメントのスタンダードはX2が担う?

317PS/400Nmを叩き出す2リッター直4ターボエンジンを積むX2 M35i。
317PS/400Nmを叩き出す2.0リッター直4ターボエンジンを積むX2 M35i。

2世代目に刷新された「BMW X2」。そのメディア的なトピックは同じプラットフォームを使ったBEV、iX2が用意されたことだろう。だがクルマ好きが注目すべきは、スタイリングがバッチリと決まっていることではないだろうか。

バッチリとはつまり、ハッチバック車をリフトアップしたようなスタイルだった初代から、X4やX6といった兄貴分に通じるSUVクーペ風に刷新されたという意味である。今回試乗したのはX2シリーズの上位モデル、M35ixドライブだった。

第一印象はすばらしかった。最新のBMWらしい黒い面積が多めのフロントマスクと、ファストバックのリヤが生み出す存在感は相当なもの。さらに試乗車はフローズン・ポルティマオ・ブルーに塗られており、エンブレムを確認する必要がないほど“Mそのもの”な見た目。BMWファンの心を鷲掴みにするような風体だったのだ。先代にもM35iというモデルが存在していたが、ただただパワーがあるだけで、Mっぽさの演出が希薄だったような記憶がある。だが最新モデルは見た目の迫力はもちろん、室内でも攻撃的な形状をしているフロントのスポーツシートなど、全身からスポーティなキャラクターが感じられ、走り出す前から気持ちを高めてくれる。

的確な音声認識機能に感嘆

4555mmという全長は先代よりも180mmほど長くなっている。これに対するホイールベースの延長は20mmなので、都市部における取り回しのしやすさは変わっていないはず。やはり今回はリヤボディを延長し、滑らかなSUVクーペ感を出したかったということなのだろう。

運転席に座って驚かされたのは、いつもの位置にアレがないことだった。このモデルからiドライブのダイヤルが廃止されたのだ。そのかわりOSが最新世代になり、ボイスコントロールのカバレッジが増しているらしい。実際に音声認識はこれまでよりも素早く的確になっていた。

足元の21インチタイヤを見る限り、ハードな乗り心地を想像していたのだが、実際にそんなことはなかった。柔らかくはないが、まったく不快な乗り心地でもないのだ。ボディの硬さ、そしてフィット感の高いシートとのバランスもいいのだろう。ちなみにシートは背面の形状こそ現代のM的だが、座面は簡潔かつ平面基調でE30のM3のそれを思わせる。

軽くスロットルを開けると溢れ出すパワー

317PS/400Nmのアウ トプットを誇る2 l 直4ターボを搭載す る。試乗車はコンチ ネンタル・エココン タクト6Qを履きこな していた。
317PS/400Nmのアウトプットを誇る2.0リッター直4ターボを搭載する。試乗車はコンチネンタル・エココンタクト6Qを履きこなしていた。

スロットルを軽く踏むだけでパワーがワァッと溢れる。フロントに大き目のキャリパーが奢られたブレーキも軽く踏むと少々唐突にキュッと効く。そして少しだけ路面の轍にタイヤを取られがち。これらの質感は普通のBMWモデルなら荒っぽいネガな印象を抱いてしまいそうだが、Mらしさの演出としては悪くない。街中を普通に走らせているだけで「特別なモデルに乗っている」という感覚が絶えず伝わってくるのだ。

だが首都高速に合流しペースを上げてみると、いくつか気になる点が出てきた。まずSPORTモードでもダンピングが足りない感じがしたし、あとは低速ではきびきびしているように感じられたステアリングからのフィードバックが、スピードに比例して希薄になっていくのも気になった。そして最も残念だったのは、高速コーナーの途中でスロットルオンオフしてみたときの挙動変化がFWD車のそれに近かったことだ。

これがベースグレードの20iなら納得がいくはずだ。けれどM35iは初期転舵の鋭さとか扇情的に高まるパワーとか、色々と思わせぶりなので、いざスロットルでクルマを支配下に置こうと思ったときの手応えが強めに返ってこないと肩透かしを食らった感じになってしまう。

見事なまとまりを見せるスタイリング

SUVのX1とクーペスタイルのX2、同じCセグメントモデルでも好みが別れるところだろう。
SUVのX1とクーペスタイルのX2、同じCセグメントモデルでも好みが別れるところだろう。

スタイリングのまとまりは上々。目いっぱい飛ばさなければ一般道でも高速道路でもBMWらしさに溢れている。でもそこから先は最大でリヤに50%までしか駆動力を割り振れないFWDベースのオンデマンド4駆の限界にあっさりと到達してしまうのだ。個人的にはこれならX2 xドライブ20i Mスポーツでいいんじゃないかと思ってしまった。もちろんキドニーグリル内のパターンとMのバッジとかM専用のミラーとかシートとか、M35iにはツボを抑えたアイテムが散りばめられている。だがクルマ全体から溢れるカッコよさという点では20iでも遜色ない。

好みの問題はさておき、兄弟と肩を並べるSUVクーペとしての前向きな刷新は素直に歓迎したい。

REPORT/吉田拓生(Takuo YOSHIDA)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2024年10月号

SPECIFICATIONS

BMW X2 M35i xドライブ

ボディサイズ:全長4565 全幅1845 全高1575mm
ホイールベース:2690mm
エンジン:直列4気筒DOHCターボ
総排気量:1998cc
最高出力:233kW(317PS)/5750rpm
最大トルク:400Nm(40.8kgm)/2000-4500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
車両本体価格:810万円

【問い合わせ】
BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
https://www.bmw.co.jp/

今やBMWのラインナップで再量販車種の1台となった売れっ子のX1。今回追加されたM35iに早速試乗してみた。

「BMW X1 」のMパフォーマンスモデル「M35i xDrive」に試乗「秀逸なコンパクトSUVが目指すのは?」

その効率的なパッケージと多彩なパワートレインが評価され、昨年度のインポート・カー・オブ・ザ・イヤーを受賞した「BMW X1」に早くもMモデル「M35i」が追加された。その走りを佐野弘宗がリポートする。(GENROQ 2024年7月号より転載・再構成)

キーワードで検索する

著者プロフィール

石川亮平 近影

石川亮平