「アストンマーティン DB12」を日本の制限速度100km/hまでで試乗

最高速325km/h「アストンマーティン DB12」を日本の制限速度100km/hで試せるだけ試した

優雅なラインを見せる+2の「アストンマーティン DB12」。
優雅なラインを見せる+2の「アストンマーティン DB12」。
アストンマーティンのラインナップで主力となるのがDB12。オープンのヴォランテが先に上陸していたが、ようやくクーペの試乗が叶った。優雅なラインを見せる+2のクローズドボディと680PSのV8ツインターボはどのような走りを見せてくれるのか。(GENROQ 2024年11月号より転載・再構成)

Aston Martin DB12 Coupe

グランツーリスモのあるべき姿を再定義

アストンマーティンのラインナップで主力となるのがDB12。オープンのヴォランテが先に上陸していたが、ようやくクーペの試乗が叶った。優雅なラインを見せる+2のクローズドボディと680PSのV8ツインターボはどのような走りを見せてくれるのか。
オープンのヴォランテが先に上陸していたが、ようやくクーペの試乗が叶った。

2023年5月に発表された「アストンマーティン DB12」が、ようやく日本に到着した。昨年8月に発表されたヴォランテはすでに本誌でも取材済みだが、先に発表されたクーペを首を長くして待ち焦がれていた。

DB12は、一見してアストンマーティンのDBモデルとわかる、伝統を守ったスタイリングだ。内に秘めたパワーやパフォーマンスが漲るような、大胆な力強さ。それでいてDB75年の歴史を背負いながらブラッシュアップされただけではない。DB12は、グランツーリスモのあるべき姿を再定義したのだという。それが、世界初の「スーパーツアラー」ということだ。

DB11よりさらにワイド&ローなプロポーション、より拡大されたフロントグリル、マッシブな造形、アグレッシブなディテール、そして力強さの中にもエレガンスが感じられ、圧倒的な存在感を発するDB12は、明らかに「新しさ」が感じられる。

落ち着いた雰囲気を醸し出す室内

ボディカラーは馴染みのあるブリティッシュ・レーシンンググリーンではなく、明るいイリデッセントエメラルドを纏い、ドアを開けるとタンレザーのインテリアとのコントラストが美しい。ドライビングシートに収まると、低いヒップポジションで包み込まれるような感覚。そして、室内はカーボンとレザーのマテリアル、ブラックとタンのカラーが、上質ながらも華美ではなく、グランドツーリングカーに相応しい、落ち着いた雰囲気を醸し出している。

コクピット周りのインターフェースも最新世代のものに刷新された。センターコンソール上部には10.25インチのタッチスクリーンがレイアウトされ、インフォテインメントが提供される。完全デジタルはアストンマーティン史上初とのこと。一方、その下には物理スイッチが並び、シフト操作からエアコン調整、走りの機能スイッチまで、直感的に操作することができる。デジタルとアナログの融合により利便性、操作性、さらにはデザイン性が高められている。

そして、グランドツーリングに欠かせないのが「サウンド」。15基のスピーカー、ダブルアンプ、1170W出力のBowers&Wilkinsオーディオシステムを搭載する。そのゴキゲンな音質は、目的地がなくても音楽を聴くためだけにドライブしたいとさえ思わせる。

心地よく響くエンジンサウンド

残念ながら今回の試乗は都心部のみで“グランドツーリング”ではないが、クルマが動き出した途端、思わず「えっ」と声が漏れそうになったほど驚いた。サルーンカーのように懐深く豊かな乗り心地だったからだ。最新のアダプティブダンパーが装備された新しいサスペンションシステムが採用されているとのことだが、それにしてもハイパフォーマンスのスーパースポーツでここまでコンフォート性能を高められるとは。まさに「ウルトラ・ラグジュアリー」と呼ぶに相応しい快適性。足元には専用開発のミシュランパイロットスポーツS5を履く。そして、カーボンセラミックブレーキの採用でバネ下重量が27kg軽量になったのも洗練されたフットワークに貢献しているだろう。わずか20〜30km/hで受けた衝撃はその後の試乗を通しても印象が覆ることはなかった。

高速道路に乗り、高速域も試してみた。といっても、最高速325km/hのDB12にしてみれば、100km/h程度はパフォーマンスのホンの一部に過ぎないが……。4.0リッター V8ツインターボエンジンは、最高出力680PS、最大トルク800Nmを発揮する。高速のゲートを入り加速していくと、エンジンサウンドが耳に心地よく響く。こういう瞬間「やっぱりピュアエンジン車良いなー」と思ってしまう。

限られたステージでの試乗であっても

アストンマーティンのラインナップで主力となるのがDB12。オープンのヴォランテが先に上陸していたが、ようやくクーペの試乗が叶った。優雅なラインを見せる+2のクローズドボディと680PSのV8ツインターボはどのような走りを見せてくれるのか。
680PSのV8ツインターボを搭載するDB12。

DB12は5つのドライブモードを備え、デフォルトはGTモード。高速でのフラット感を求めるならスポーツモードの方がオススメ。そしてもっとも俊敏性の高いスポーツ+も試してみると、路面の粗さが手に取るようにわかるほどダイレクト感が増す。(そう、DB12はステアフィールも洗練されている)でも、常に路面とのコンタクトは安定している。乾いたエンジンサウンド、そしてアクセルレスポンスも高まり、テンションが上がる。機会があれば次回はぜひ、峠でのハンドリングも堪能してみたい。限られたステージでの試乗ではあったが、それでもGTの再定義の意味、スーパーツアラーのポテンシャルを知るには十分だった。

そして9月初旬、フラッグシップモデルの新型ヴァンキッシュが初披露された。これで、アストンマーティンの次世代スポーツカーのポートフォリオが完成した。さらなるパフォーマンスとウルトラ・ラグジュアリーを備えるであろうスーパーツアラーとの対面が待ち遠しい。

REPORT/佐藤久実(Kumi SATO)
PHOTO/田村 弥(Wataru TAMURA)
MAGAZINE/GENROQ 2024年11月号

SPECIFICATIONS

アストンマーティンDB12クーペ

ボディサイズ:全長4725 全幅1980 全高1295mm
ホイールベース:2805mm
車両重量:1788kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:4000cc
最高出力:449kW(680PS)/6000rpm
最大トルク:800Nm(81.6kgm)/2750-6000rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前ダブルウィッシュボーン 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ:前285/40ZR22 後315/35ZR22
最高速度:325km/h
0→100km/h加速:3.6秒
車両本体価格:2990万円

【問い合わせ】
アストンマーティン・ジャパン・リミテッド
TEL 03-5797-7281
http://www.astonmartin.com/ja

東京・青山でワールドプレミアと同時に公開された新型ヴァンキッシュ。

アストンマーティンの3代目フラッグシップ「ヴァンキッシュ」がデビュー「優雅なボディにお約束のV12」

2代目が生産を終えてから、しばらくラインナップから姿を消していた「ヴァンキッシュ」がついに復活した。さらに優雅なボディにはお約束のV型12気筒を搭載。まさにアストンマーティンのフラッグシップにふさわしいスーパーラグジュアリースポーツである。

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