熟成に熟成を重ねた「BMW M4 コンペティション M xドライブ クーペ」

今、駆け抜ける歓びを最も感じられるBMW「M4 コンペティション M xドライブ クーペ」に試乗

BMW M4コンペティションM xドライブクーペがマイナーチェンジ。最高出力が20PS向上するなど、進化を遂げている。
BMW M4コンペティションM xドライブクーペがマイナーチェンジ。最高出力が20PS向上するなど、進化を遂げている。
BMWの「駆けぬける歓び」を体現するモデルとして人気のM4クーペがマイナーチェンジ。エンジンの最高出力が20PSアップしたほか、ボディ前後のデザインをリファインした。完熟の域に達したM4クーペをワインディングで味わってきた。(GENROQ 2024年12月号より転載・再構成)

BMW M4 Competition M xDrive coupe

4シリーズのマイナーチェンジに併せてM4もアップデート

4シリーズのマイナーチェンジに併せて小変更が施された新型M4コンペティション。インフォテインメントOSがアップデートされたほか、最高出力が530PSに引き上げられている。
4シリーズのマイナーチェンジに併せて小変更が施された新型M4コンペティション。インフォテインメントOSがアップデートされたほか、最高出力が530PSに引き上げられている。

「M4」のマイナーチェンジモデルが上陸した。現行M4といえば、2021年初頭に国内発表されて以降も、高出力モデルのコンペティションや4WD(M xドライブ)の追加、カブリオレやツーリングの登場、さらにはインテリアの年次改良(カーブドディスプレイの採用)等々、トピックには事欠かず、そのたびに本誌で取り上げてきた。しかし、これらはあくまで枝葉の話(?)で、今回こそがBMWでいうところの「LCI(ライフサイクルインパルス)」=モデルライフの折り返し地点となるマイナーチェンジなのだ。

モデルライフ途中で最大イベントといえるLCIとはいえ、その内容は拍子抜けするほど軽微。内外装の変更点はベースの4シリーズのLCIに準じるもので、外観はヘッドライトとテールランプの内部デザインのみ。標準の鍛造ダブルスポークホイールにも変更はない。

内装もしかり。主だった内容は、ダッシュ中央部分が(最近のBMWによく見られる)空調吹き出し口が目立たないデザインに変更されたことと、新デザインのステアリングホイール、そして車内インフォテインメントOSが8.5(従来は8)にアップデートされたことくらい。あと、ステアリングホイールにオプションでヒーターが内蔵できるようになったことも、地味だがありがたい。

さらにモダンになった室内

今回は同時に日本仕様のラインナップも整理された。LCI直前のM4では、標準仕様+FR+6速MTの、いわゆる素M4もカタログに掲載されていた。しかし、今回からは、高出力エンジン+4WD+8速ATの「コンペティションM xドライブ」の一択となってしまった。ドイツ本国では、今でも従来のほぼすべての選択肢が残されているようだが、日本ではM3の6速MTもファイナルエディションと銘打って販売終了を宣言、M4に今後6速MTやFRが用意されるかはよく分からない。

走りにまつわる変更点も、少なくとも明確にアナウンスされているのは、エンジンだけだ。もはや名機と呼んでも差し支えない3.0リッター直列6気筒DOHC直噴ツインターボ=S58型ユニットそのものは今までどおりで、最高出力が510PSから530PSに引き上げられている。650Nmの最大トルクに変わりないのだが、その発生回転数が2750〜5730rpmと高回転側に拡大(従来は2750〜5500rpm)している。つまり、大きなトルクがより高回転まで維持できるようになって、最高出力もアップさせられた。

さて、今回の試乗車にはオプション価格73万円のMカーボンバケットシートが追加されていたが、少なくとも今回のような2ペダル仕様には秀逸なイスだ。とにかく姿勢の安定性が高く、スライドにシートバック角度、座面高だけでなく、サイドサポートまで電動調整できるのは重宝する。表皮は本革だが、座面サイドとシートバックにある大きな軽め穴のおかげか、夏場でも意外なほど蒸れない。先に2ペダル仕様には……と条件をつけたのは、3ペダルMTだと体格によってクラッチ操作の邪魔になるくらいに、座面のサイドサポートが強力だからだ。

20PSの向上がもたらせたもの

表向きの走りの進化は20‌PS上乗せされた最高出力だけで、シャシーやボディには手が入っていない……ということになるが、実際には、これまでに乗ったM4やM3(のカタログモデル)で最も完成度が高い1台とと思ったのはウソではない。

出力アップといっても、500PS超のうちの20‌PSでは、目を見張るような変化はない。最高速や加速タイムも従来と変わりない。しかし、実際にトップエンドで回した時の「最後のひと伸び」は、これまで体験したことのない類の快感だった。

シャシーも変更がないはずなのに、ダンパーをソフトなコンフォートモードにセットした時の乗り心地が、いかにも丸みを帯びたと感じるのは気のせいではないだろう。もちろん、明確に硬くなった・柔らかくなったのではなく、可変ダンパー制御が常にピタリと決まり続ける……とでもいえばいいだろうか。これまでにあった良くも悪くも鋭い突きあげが、ほとんど感じ取れなくなった。

今回のような箱根のワインディングで走る時は、以前だと路面の荒れ具合やコーナーの大小によって、最も硬いスポーツプラスと真ん中のスポーツモードを臨機応変に使い分けるのが、気持ちよく走るコツだった。しかし、新しいM4は箱根のほぼ全域で、スポーツプラスがドンピシャだった。どんな路面でもぴたりと姿勢が安定して、跳ねずに接地してくれる最新のスポーツプラスと比較すると、スポーツモードは高速道路など、もう少しリラックスした場面で使いたくなる。こうしてシレッと熟成されているあたりは、さすがはMだ。

可変ダンバーの制御が実に秀逸だ

シャシーの変更のアナウンスはないが、あきらかにマイナー前よりも突き上げがマイルドになっている。可変ダンバー制御がピタリと決まっているのがよくわかる。
シャシーの変更のアナウンスはないが、あきらかにマイナー前よりも突き上げがマイルドになっている。可変ダンバー制御がピタリと決まっているのがよくわかる。

さて、最近は宿敵AMGだけでなく、Mの新型モデルも電動化が急である。そんな中で、このような純内燃機関のハイパフォーマンスカーが生き続いているだけでも奇跡か!? LCIが実施されたとなれば、現行M4のモデルライフも後半戦ということかもしれない。次期M4がどんなクルマになるかは分からないが、今回あらためて、1日も長く生き長らえてほしいと思った。

REPORT/佐野弘宗(Hiromune SANO)
PHOTO/佐藤亮太(Ryota SATO)
MAGAZINE/GENROQ 2024年12月号

SPECIFICATIONS

BMW M4コンペティションM xドライブクーペ


ボディサイズ:全長4805 全幅1885 全高1400mm
ホイールベース:2855mm
エンジン:直列6気筒DOHCツインターボ
総排気量:2992cc
最高出力:390kW(530PS)/6250rpm
最大トルク:650Nm(66.3kgm)/2750-5730rpm
トランスミッション:8速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
車両本体価格:1458万円

【問い合わせ】
BMWカスタマー・インタラクション・センター
TEL 0120-269-437
https://www.bmw.co.jp/

日本導入が開始された「BMW M4 カブリオレ」改良新型の走行シーン。

新型「BMW M4 クーペ」「M4  カブリオレ」の販売をスタート「日本市場はコンペティションを導入」

ビー・エム・ダブリューは、「BMW M4 クーペ」と「BMW M4 カブリオレ」改良新型の販売を、全国のBMW正規ディーラーにおいて開始した。デリバリーは2024年7月からを予定している。

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