初代600からインスピレーションを受けた最新BEV「フィアット 600e」試乗

たとえ電気自動車になろうとも走りはフィアット濃度200%を感じさせる「フィアット 600e」に試乗

500eでは物足りない人に朗報だ。都市部に住むカップルや小さい子どものいる家族にとって実に使い勝手の良いBEV、フィアット600eが誕生した。
500eでは物足りない人に朗報だ。都市部に住むカップルや小さい子どものいる家族にとって実に使い勝手の良いBEV、フィアット600eが誕生した。
フィアットが1年半ぶりに送り出すモデルがクロスオーバーBEVの「600e」だ。実にフィアットらしい走り味と老若男女から愛されるであろう内外装が大きな魅力。初秋の横浜で、新型600eの実力を存分に味わってきた。(GENROQ 2024年12月号より転載・再構成)

Fiat 600e

一充電あたりの走行距離は493km

ステランティスが開発したCMPプラットフォームを採用する電気自動車、新型フィアット600e。一充電あたりの航続距離は493kmとなる。
ステランティスが開発したCMPプラットフォームを採用する電気自動車、新型フィアット600e。一充電あたりの航続距離は493kmとなる。

日常に彩りを与えてくれる華やかでキュートなコンパクトクロスオーバーBEV……フィアットが1年半振りに日本市場に投入する「600e」(セイチェントイー)を目の前にして、そんな印象を強く持った。

600eはシトロエンC4やプジョーe-2008などのB〜Cセグメント用にスティランス(厳密に言えばグループPSA)が開発した、CMPプラットフォームを採用する電気自動車だ。54‌kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、前輪を駆動するFWDモデルで、一充電あたりの航続距離は493kmとBEVとして必要十分な足の長さを誇る。ちなみにバッテリー充電は200Vの普通充電とCHAdeMO急速充電に対応する。

初代600の影響を強く受けたインテリア

デザインは老若男女問わず誰もが“カワイイ”と感じる丸みを帯びたボディフォルムが特徴だ。そのデザインは、1955年に登場したフィアット最初のリヤエンジン車「初代600」からインスピレーションを受けているという。確かに600eは、ぱっちりとした丸っこい眼のようなLEDヘッドライトや丸型メータークラスター、2本スポークのステアリングなど、初代600のアイコンをうまく現代的に昇華させている印象を受ける。

600eのボディサイズは全長4200mm×幅1780mm×全高1595mmと、日本の道路事情でも非常に使いやすいサイズ感と言える。荷室も360Lと十分な積載性を持つ5ドアクロスオーバーなので、個人的には500eよりも、魅力的に感じたのは事実だ。

アイボリーを基調にターコイズのステッチをアクセントに加えた、洒落たエコレザーシートに着座し、横浜・みなとみらい周辺を試乗してみた。まず驚いたのは600eは実に軽快な走りを披露するという事実だ。スペックシートを見て驚いたが、最近のBEVとしては非常に軽く、車両重量は1580kgしかない。高速のコーナリングから街中の交差点に至るまで、実に軽快に曲がっていく様は、BEVに乗っていることをついつい忘れてしまうほどだ。

広大なラゲッジスペースに夢が広がる

スローなステアリングとゆったりとした乗り心地はまさしくフィアットそのもの。BEV化することでフィアットらしさがより強まった感がある。
スローなステアリングとゆったりとした乗り心地はまさしくフィアットそのもの。BEV化することでフィアットらしさがより強まった感がある。

走りのフィーリングはとても“フィアットらしい”。ステアリングはスローな味付けで、舵をきった分だけ素直に曲がってくれる。サスペンションは豊かなストローク量を持ち、路面の轍や凹凸をしっとりと吸収してくれる。スローな味付けのステアリングとゆったりとした乗り心地、これが実にフィアットらしさに溢れているのだ。

また、例えスポーツモード選択時に、ラフにアクセルペダルを踏んでも、ヘッドレストに頭を打ち付けるような乱暴な所作は一切みせない。リニアな加速フィールもイマドキのBEVとして好感が持てるものだった。試乗後、試しに後部座席に座ってみたが、身長175cmの筆者でも前席と頭上に拳ひとつぶん程度の余裕があった。

実にフィアットらしい仕上がりの600e。万人に受け入れられる可能性を秘めた魅力的なBEVモデルの誕生だ。

REPORT/石川亮平(Ryohei ISHIKAWA)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)
MAGAZINE/GENROQ 2024年12月号

SPECIFICATIONS

フィアット600e


ボディサイズ:全長4200 全幅1780 全高1595mm
ホイールベース:2560mm
車両重量:1580kg
モーター
最高出力:115kW(156PS)/4070-7500rpm
最大トルク:270Nm(27.5kgm)/200-1677rpm
トランスミッション:1速固定
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後トーションビーム
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後215/55R18
一充電走行距離:493km(WLTC)
車両本体価格:585万円

【問い合わせ】
チャオ・フィアット
TEL 0120-404-053
https://www.fiat-auto.co.jp/

全長4200mm、全幅1780mm、全高1595mmでホイールベースは2560mmという、コンパクトボディの「600e」。

新型フル電動SUV「フィアット 600e」(セイチェントe)が日本上陸「4つの運転支援機能を装備」

9月10日、ステランティスジャパンは東京・二子玉川にてフィアットの新型フル電動SUV「600e」(セイチェントe)を発表した。600eという名前からもわかるように、フィアットの看板モデルであるコンパクトカー「500」の上位モデルとなるフル電動車である。

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著者プロフィール

石川亮平 近影

石川亮平

スーパーカー&プレミアムカー雑誌「GENROQ」に在籍しながらも、カジュアルなフレンチカーも大好物な編集…