目次
Fiat 600e
一充電あたりの走行距離は493km
日常に彩りを与えてくれる華やかでキュートなコンパクトクロスオーバーBEV……フィアットが1年半振りに日本市場に投入する「600e」(セイチェントイー)を目の前にして、そんな印象を強く持った。
600eはシトロエンC4やプジョーe-2008などのB〜Cセグメント用にスティランス(厳密に言えばグループPSA)が開発した、CMPプラットフォームを採用する電気自動車だ。54kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し、前輪を駆動するFWDモデルで、一充電あたりの航続距離は493kmとBEVとして必要十分な足の長さを誇る。ちなみにバッテリー充電は200Vの普通充電とCHAdeMO急速充電に対応する。
初代600の影響を強く受けたインテリア
デザインは老若男女問わず誰もが“カワイイ”と感じる丸みを帯びたボディフォルムが特徴だ。そのデザインは、1955年に登場したフィアット最初のリヤエンジン車「初代600」からインスピレーションを受けているという。確かに600eは、ぱっちりとした丸っこい眼のようなLEDヘッドライトや丸型メータークラスター、2本スポークのステアリングなど、初代600のアイコンをうまく現代的に昇華させている印象を受ける。
600eのボディサイズは全長4200mm×幅1780mm×全高1595mmと、日本の道路事情でも非常に使いやすいサイズ感と言える。荷室も360Lと十分な積載性を持つ5ドアクロスオーバーなので、個人的には500eよりも、魅力的に感じたのは事実だ。
アイボリーを基調にターコイズのステッチをアクセントに加えた、洒落たエコレザーシートに着座し、横浜・みなとみらい周辺を試乗してみた。まず驚いたのは600eは実に軽快な走りを披露するという事実だ。スペックシートを見て驚いたが、最近のBEVとしては非常に軽く、車両重量は1580kgしかない。高速のコーナリングから街中の交差点に至るまで、実に軽快に曲がっていく様は、BEVに乗っていることをついつい忘れてしまうほどだ。
広大なラゲッジスペースに夢が広がる
走りのフィーリングはとても“フィアットらしい”。ステアリングはスローな味付けで、舵をきった分だけ素直に曲がってくれる。サスペンションは豊かなストローク量を持ち、路面の轍や凹凸をしっとりと吸収してくれる。スローな味付けのステアリングとゆったりとした乗り心地、これが実にフィアットらしさに溢れているのだ。
また、例えスポーツモード選択時に、ラフにアクセルペダルを踏んでも、ヘッドレストに頭を打ち付けるような乱暴な所作は一切みせない。リニアな加速フィールもイマドキのBEVとして好感が持てるものだった。試乗後、試しに後部座席に座ってみたが、身長175cmの筆者でも前席と頭上に拳ひとつぶん程度の余裕があった。
実にフィアットらしい仕上がりの600e。万人に受け入れられる可能性を秘めた魅力的なBEVモデルの誕生だ。
REPORT/石川亮平(Ryohei ISHIKAWA)
PHOTO/市 健治(Kenji ICHI)
MAGAZINE/GENROQ 2024年12月号
SPECIFICATIONS
フィアット600e
ボディサイズ:全長4200 全幅1780 全高1595mm
ホイールベース:2560mm
車両重量:1580kg
モーター
最高出力:115kW(156PS)/4070-7500rpm
最大トルク:270Nm(27.5kgm)/200-1677rpm
トランスミッション:1速固定
駆動方式:FWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後トーションビーム
ブレーキ:前ベンチレーテッドディスク 後ディスク
タイヤサイズ:前後215/55R18
一充電走行距離:493km(WLTC)
車両本体価格:585万円
【問い合わせ】
チャオ・フィアット
TEL 0120-404-053
https://www.fiat-auto.co.jp/