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Porsche Carrera GT
10年の時を経て最新タイヤを供給
2003年のデビュー当時「カレラ GT」は市販車として最速の部類に属する1台だった。ポルシェはル・マン24時間レース用の自然吸気V型10気筒エンジンをベースに、排気量を5.5リッターから5.7リッターに拡大。わずか1380kgという車重にも関わらず、最高出力612PS(450kW)、最大トルク590Nmを発揮した。最高速度は330km/h、0-100km/h加速は3.9秒を誇る。
カレラ GTの生産終了から約20年の時を経た2024年、ポルシェはミシュランと共同で、カレラ GT用として新たな超高性能タイヤを発表した。最新のタイヤ技術を駆使し、ゴムの配合と構造を最適化することで、ウエットコンディションでもドライコンディションでも性能向上を実現した。
ポルシェのブランドアンバサダーであり、開発ドライバーを務めるヨルグ・ベルクマイスターは、ミシュラン「Pilot Sport Cup 2」を装着したカレラ GTのテストに参加しており、「カレラ GTはまさに夢のクルマです。この伝説のスーパースポーツのパフォーマンスを新たなレベルへと引き上げる、新タイヤの導入を本当に嬉しく思います」と、コメントした。
カレラ GTは、当初からミシュランが開発した専用タイヤを装着。デビュー時は「Pilot Sport PS2」、最初のアップデートは2013年に実施され、このタイミングで装着タイヤも「Pilot Super Sport」に変更された。今回、導入された「Pilot Sport Cup 2」にもポルシェ専用タイヤであることを示す「N」マークが入り、最初のロットには「N0」マークが記されている。
ニュルブルクリンクでのテストを実施
様々なカテゴリーのモータースポーツ参戦経験を持つベルクマイスターが、カレラ GT用タイヤの開発に参加。彼自身、ポルシェとミシュランが20年以上も前にデビューしたスーパースポーツのため、新たなタイヤ開発を行ったことに、「20年前のクルマのために、新しいタイヤを開発するのは非常に珍しいことです」と驚きを隠さない。
カレラ GT用新タイヤの開発目標は、ウエットでもドライでも、走行性能と安全性をさらに向上させることにあった。これを達成するため、トレッドには2種類の異なるゴム化合物(バイコンパウンド・テクノロジー)が導入されている。
「私たちは、内側のショルダーと内側のトレッドブロックにケイ酸を使用することで、ウエットグリップに最適なコンパウンドを実現しています。タイヤの外側のショルダーと外側のトレッドブロックのコンパウンドは、ドライグリップ用に設計されています。ここで最も重要な材料のひとつがカーボンブラックです」とポルシェ製スポーツカー用タイヤの開発を担当するミシュランの開発エンジニアのマシュー・グレコは説明した。
ドライグリップのレベルを最適化するため、タイヤの外側のショルダーとトレッドブロックのコンパウンドに新設計を導入。ドライビングダイナミクスとハンドリングの徹底的なテストにより、接地部分を最適化。テストはニュルブルクリンク・ノルドシュライフェでも実施されている。
ベルクマイスターは「ニュルブルクリンクでのテストでは、エンジニアたちが限界域でのフィードバックを改善したことに感銘を受けました。 タイヤがグリップを失い始めるポイントがより明確に感じられるでしょう」と振り返る。
制動距離の大幅な短縮を実現
「Pilot Sport Cup 2」を装着したカレラ GTは、ドライビング時のバランスが大幅に改善。これにより走行性能が向上し、ニュルブルクリンクなどのサーキットにおけるラップタイムがさらに速くなった。その進化のほどをベルクマイスターは次のように指摘した。
「新型タイヤはカレラ GTを速くするだけでなく、安全に高速走行が行えるようになりました。これはタイヤ開発が常に前進していることを示していると言えるでしょう。モータースポーツにおけるタイヤ技術の進化は、市販タイヤにダイレクトにフィードバックされます。レースはタイヤにとって、開発ラボとも言える存在なのです。『Pilot Sport Cup 2』も、レースからの技術移転により、大幅な性能アップを実現しました」
走行時のパフォーマンスアップに加えて、急ブレーキ時の停止距離が短縮。100km/hから完全停止までの制動距離は2.5mも短縮された。200km/hからの制動では、従来より12mも早く停止することができるという。「専用開発されたタイヤは、常にドライバーに大きな利点をもたらします。それはパフォーマンスだけでなく、安全性においても顕著です。特に制動距離に関するデータは非常に印象的でした」とベルクマイスター。
カレラ GT用の新しいミシュラン「Pilot Sport Cup 2」は、ミシュラン、ポルシェクラシック、ヴァイザッハのポルシェ開発センターが緊密に協力して開発。ポルシェ・クラシックパートナー、もしくはポルシェセンターにおいて、オーダーが開始された。