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Porsche 963
10位から大逆転を果たしたトヨタ8号車
WEC最終戦バーレーン8時間レースは、序盤からエキサイティングで、予測不可能な展開となった。最初の大きなドラマは10周目、ポールポジションからスタートした「トヨタ GR010 ハイブリッド」8号車のセバスチャン・ブエミが、LMGT3に参戦する「シボレー コルベット Z06 LMGT3.R」に追突されてスピン。順調にレースをリードしていた8号車は、7番手にまで順位を落としてしまう。
その後、レース中盤まで「フェラーリ 499P」51号車(アレッサンドロ・ピエール・グイディ、ジェームス・カラ、アントニオ・ジョヴィナッツィ)が首位を快走。レース後半は2度セーフティカーが導入され、18台のハイパーカーが僅差でひしめく中、残り1時間でレースが再開された。
最終スティントを任されたトヨタ GR010 ハイブリッド 8号車のブエミは、10番手から驚異的な追い上げを披露。次々とライバルをオーバーテイクし、最後のピットストップ終了時点で2番手まで順位を上げる。ブエミは残り30分を切った段階で、首位の「ポルシェ 963」5号車(マット・キャンベル、ミカエル・クリステンセン、フレデリック・マコヴィッキィ)をパスし、ついにトップに立った。 ブエミは残されたラップで確実にマージンを稼ぎ、トップフィニッシュ。2位のフェラーリ 499P 51号車に27秒539差、3位のポルシェ 963 5号車に29秒177差をつけてシーズン2勝目を獲得した。
トヨタは、ドライバーズ選手権の可能性を残していた7号車(マイク・コンウェイ、小林可夢偉、ニック・デ・フリース)が燃料ポンプトラブルによりリタイアに終わったものの、8号車の勝利によって、WECマニュファクチャラーズ選手権6連覇を決めた。逆転勝利を持ち帰ったブエミは、次のようにレースを振り返った。
「おそらく私のキャリアで、最高の走りだったと思います。序盤の接触で後れを取ってしまいましたが、レースは長丁場ですし、私たちの戦略はレース終盤に向けてタイヤを温存することにありました。最終スティントの段階で、10番手まで順位を下げていたので、正直、挽回は不可能だと思っていました。それでも、タイヤのアドバンテージもあり、最終的にはすべてが完璧にうまくハマりました」
フィニッシュ後、フェラーリの51号車にタイヤ使用規定違反の裁定が下り、4分55秒のペナルティが課されることになった。この結果、51号車は14位に降格。代わってポルシェ 5号車が2位、プジョー 9X8 93号車(ミケル・イェンセン、ニコ・ミュラー、ジャン-エリック・ベルニュ)が3位を得ている。
ポルシェ 6号車がドライバーズ選手権を王座
ポイントリーダーとして最終戦に挑んだ、ポルシェ 963 6号車のエストレ、ロッテラー、ヴァントールは、ポイント圏外の11位でフィニッシュ。しかし、ライバルのトヨタ 7号車とフェラーリ 50号車(アントニオ・フォコ、ミゲル・モリーナ、ニクラス・ニールセン)をポイントで上まわり、ドライバーズ選手権の栄誉をポルシェへと持ち帰った。
6番グリッドからスタートしたポルシェ 963 6号車は、序盤の厳しい展開で15番手まで順位を下げてしまう。それでも、8位でフィニッシュすれば、ライバルの結果に関係なくタイトルが確定するため、無理なレース戦略を採らず、安定したペースで走行を続ける。結果的にトヨタ 7号車が燃料ポンプトラブル、フェラーリ 50号車が1周目でポイント圏外まで順位を下げたことで、無理をすることなく11位でフィニッシュ。ドライバーズタイトルを決めた。
今シーズン初めてポイント圏外でレースを終えたヴァントールは、次のように喜びを語った。
「まったく、ひどいレースでしたね(笑)。今シーズンはあまりミスを犯さなかったのですが、今日は1年分のミスを喫してしまいました。それでも、素晴らしい戦略と素晴らしいクルマがあり、コンスタントにポイントを積み重ねてきたことで、世界チャンピオンの座を手にすることができました」
「あらためて、本当に素晴らしい1年でした。チームメイト、メカニック、エンジニア、こんなに素晴らしいチームと仕事をしたことは、これまでありません。今日は私の人生で最高の1日になりました。正直、まだ実感が湧いていませんが、この喜びはきっと一生忘れないでしょう]