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Audi RS 3
ニュルにおいて3年前の記録を7秒更新
アウディ RS 3の心臓部に収められるのは、アウディ・スポーツが開発した2.5リッター直列5気筒TFSI直噴ターボエンジン。最高出力400PS(294kW)、最大トルク500Nmを発揮し、0-100km/h加速が3.8秒、最高速度290km/hというスペックを誇る。今回のフェイスリフトではシャシーセットアップが最適化され、コーナーリング性能が大幅に向上することになった。
2021年、アウディはRS 3に「トルクスプリッター」を初導入。ドライバビリティの高い直列5気筒ターボエンジンと組み合わせたことで、サーキットにおけるパフォーマンスアップを実現した。アウディスポーツのワークスドライバー兼開発ドライバーを務めるフランク・スティップラーがニュルブルクリンク・ノルドシュライフェにおいてタイムアタックを実施し、コンパクトクラスにおける当時のラップレコードを樹立している。
それから3年間、アウディスポーツは継続的な技術開発を実施。エンジンのスペックは同一ながらも、再びスティップラーがステアリングを握り、ニュルブルクリンク・ノルドシュライフェにおいて3年前の記録を7秒以上、従来のクラスレコードを5秒以上も更新する、7分33秒123という脅威的なラップタイムを叩き出した。
リヤのトルク配分をアクティブに調整
RS 3に搭載される「トルクスプリッター」は、2基の電子制御湿式多板クラッチによりリヤアクスルの左右トルク配分をアクティブにコントロールするシステム。カーブにおいてリヤの外輪により多くのトルクを配分することでアンダーステアを軽減し、俊敏なコーナリングを実現した。
ストレートでは左右リヤホイールへと均等にトルクを配分。巡航時にはリヤのクラッチを開放することで、フロントアクスルのみにトルクを伝え、燃料消費を抑制する。RS 3のテクニカル・プロジェクトマネジャーを務めるマーヴィン・シュワッターは、トルクスプリッターの改良について次のように説明する。
「トルクスプリッターは、後輪間のトルク配分を完全に制御することで、横方向のダイナミクスが新たなレベルに到達しました。これはまさに革命的とも言えるシステムです。ただ、私たちはシステムに改善の余地を見出し、細部にわたって調整を加えました。その結果、RS 3はさらに俊敏になり、特にコーナーリング時のパフォーマンスが大幅に向上したのです」
より素早いコーナーリングが可能に
RS 3改良新型は、トルクスプリッターのトルクベクタリング機能と、ブレーキに微調整を加えたことで、コーナー進入時のアンダーステアを低減。より積極的なコーナーリング制御を実現した。
コーナーリング時、トルクスプリッターは外側の後輪へとトルクを供給する一方で、内側の後輪にはわずかだがブレーキが掛けられる。繊細なブレーキ介入を行うことで、RS 3はカーブの曲率をより正確にトレース。コーナーのエイペックスにおいて素早くポジションが確定し、ドライバーはコーナーの出口に向けてより速く加速することが可能になった。
開発テストでは、スペインのモンセラット山脈のワインディングロードや、バルセロナ北西部のパルクモートル・カステリョリ・サーキットにおいてセッティングに微調整が加えられた。全長約4kmのサーキットは、高低差のあるタイトコーナーを含む変化に富んだレイアウトが特徴であり、改良型トルクスプリッターは、その効果をいかんなく発揮したという。