スーパースポーツ+グランドツアラー「マクラーレン GTS」に試乗

“ゴルフバッグも積める”グランドツアラーを自認する異色のスーパースポーツ「マクラーレン GTS」に試乗

2023年末に「GT」の後継車として発表された「GTS」。
2023年末に「GT」の後継車として発表された「GTS」。
スーパースポーツカーメーカーのマクラーレンのラインナップで異色とも言える存在が「GT」だ。その名のとおりグランドツアラーを自認するモデルだが、そこに内外装と性能に改良が施されたモデルとして「GTS」が追加された。その乗り味を試乗で確かめた。

McLaren GTS

やや趣が異なるGTSのポジション

より大きなダウンフォースを生み出すために大型化されたリヤディフューザー。
より大きなダウンフォースを生み出すために大型化されたリヤディフューザー。

マクラーレンは、2019年に発表した「GT」に改良を加え、2023年末にその後継車となる「GTS」を発表した。マクラーレンのモデルポートフォリオの中でも、このGT系のモデルはマクラーレンというブランドから想像する卓越したパフォーマンスのほかに、GT(グランドツーリング)という新たな魅力を加味したモデル。

さらにこのGT系の上級モデルを探すのならば、そこにはアルティメットシリーズのスピードテールがあるということになるが、ともあれマクラーレンのシリーズモデルの中でも、ややその趣が異なる最新のGTSが、どのような走りと楽しみをカスタマーに与えてくれるのかは大きな楽しみだ。

一新されたフロントバンパーのデザイン

GTSのボディデザインは、それまでのGTのコンセプトをそのまま継承し、かつそのディテールではさらなるエアロダイアミクスの向上を求めてさまざまな改良を施したものだ。シャークフィンと呼ばれるフロントバンパーのデザインは一新され、そこに備わるエアインテークもより大型の新デザインに。リヤフェンダー上にはこれまでの沈み開口式エアインテークに代わり、視覚的にも大きなアイキャッチとなるエアインテークが新たに設けられることになった。

リヤセクションの変化も激しい。こちらもより大きなダウンフォースを生み出すためのディフューザーがサイズを大型化した採用されたほか、リヤフェンダーのデザインも一新。全体的な流麗なライン構成はそのままに、さらに見た目の第一印象から、それまでのGTからさらにパフォーマンスを高めてきたことを想像させる、じつに効果的なマイナーチェンジが実施されているのだ。

フロントバンパーとエアブレード、そしてリヤフェンダー上のエアインテークでグロスビジュアルカーボン仕上げを選択できるようになったのもGTSの特徴。試乗車にはまだそれは装着されていなかったが、10スポークの新デザインを採用した軽量鍛造アロイホイール、「ターバイン」が新設定されたのも大きな話題だ。スタッドボルトも従来のものに対して35%軽量なチタン製となる。

全身を突き抜けるかのパワーフィール

こちらも重量感がほとんどないディヘドラルドアをオープンして、ドライバーズシートに身を委ねる。タッチスイッチと物理スイッチが効果的に使い分けられるキャビンの操作性は、電動シートのアジャストに慣れるまでに時間がかかることを除けば十分に満足できるものだ。

ミッドにはそれまでのGT用から点火タイミングを見直したことなどでさらに15PSのエクストラを得た、635PSの最高出力を発揮する4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンが搭載されるが、このエンジンは高速域での全身を突き抜けるかのようなパワーフィールはもちろんのこと、630Nmの最大トルクが生み出す、実用域でのフレキシビリティも大きな魅力だ。参考までにその車両重量はDIN値で1520kg。ストリートではほとんどストレスを感じさせることはないし、高速道路上でのフル加速は、この日本においては合法的にはほんの一瞬の楽しみにすぎない。

マクラーレンが「モノセルⅡ-T」と呼ぶGTSのカーボンモノコックの剛性感は、さすがに圧巻のフィーリングだ。サスペンションには連続可変の電子制御デュアルバルブダンパーを持つ、プロアクティブダンピングコントロールが備わるが、その制御はもちろんのこと、こちらもその剛性感の高さが印象的だ。それによってGTSは車速が高まるにつれて乗り心地にはさらにしなやかな印象が生まれ、また感動的な安定感が生み出されるのだ。

エンジンの上部に設けられたリヤコンパートメントにラゲッジを出し入れするためのリヤハッチは、前後方向にはかなり長いサイズだ。だがオープン、クローズともに電動によるオートマチック機構が備わるため、心配はいらない。マクラーレンによればここにゴルフバッグの搭載も可能だというが、じっさいの容量が420Lであることを知れば、その言葉にも十分な信頼性が生まれてくる。さらにフロントには150L分のラゲッジルームが用意されるから、短期間の旅行程度ならば、その荷物は簡単に積み込める。

正確無比なステアリング

GTとしてきわめて優秀なラグジュアリー性と機能性を持つGTS。最後にやはり触れておかなければならないのは、マクラーレンのスーパースポーツとしてのDNAを受け継ぐ、その走りの魅力だろう。GTSでもシャシーとパワーユニットを独立して、「コンフォート」「スポーツ」「トラック」の各モードを選択できるが、快適なことこのうえないコンフォートモードからスポーツモードへと移行すると、GTSは一気にそのキャラクターを変える。最大で100kgのダウンフォースを生み出すボディは高速域での安定性に大いに役立ち、巧みにロールが抑えられたサスペンションは、正確無比なステアリングとともに、コーナリングの楽しさを満喫させてくれる。

今回は試すチャンスはなかったが、トラックモードならば本格的なサーキット走行さえ魅力的にこなす実力を秘めていることは間違いないのだろう。マクラーレンのプロダクトポートフォリオにおいて、GTSはやや特別な位置にポインティングされるモデルであるのかもしれない。しかしその完成度は、幅広いカスタマーに歓迎されるべき。多くの魅力を兼ね備えたものにほかならなかったのである。

PHOTO/篠原晃一(Koichi SHINOHARA)

SPECIFICATIONS

マクラーレン GTS

ボディサイズ:全長4683 全幅2045 全高1213mm
ホイールベース:2675mm
車両重量:1466kg
エンジン:V型8気筒DOHCツインターボ
総排気量:3994cc
最高出力:586kW(635PS)/7500rpm
最大トルク:630Nm(64.2kgm)/6500rpm
トランスミッション:7速DCT
駆動方式:RWD
サスペンション形式:前後ダブルウイッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク(カーボンセラミック)
タイヤサイズ(リム幅):前225/35R20 後295/30R21
車両本体価格:2870万円

ミッドシップ・グランドツアラー「マクラーレン GTS」のエクステリア。

「マクラーレン GT」の後継車「GTS」がデビュー「最高出力が15PSアップで635PSに」「走行性能と使い勝手を両立」

マクラーレン・オートモーティブは、ミッドシップグランドツアラー「GT」の後継モデル「GTS」を発表した。エクステリアデザインを刷新し、大型化されたフロントのエアインテークなど、よりアグレッシブなフォルムを採用。2024年のデリバリー開始を予定しており、ヨーロッパにおける受注がスタートした。

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著者プロフィール

山崎元裕 近影

山崎元裕

中学生の時にスーパーカーブームの洗礼を受け、青山学院大学在学中から独自の取材活動を開始。その後、フ…