ニュル7分33秒123の実力を誇る新型「アウディ RS 3」海外試乗記

ニュルブルクリンクでクラス最速を奪還した「アウディ RS 3」のパフォーマンスをサーキット試乗で体感

アウディRS 3スポーツバック/セダンがマイナーチェンジを遂げた。中でも注目はノルトシュライフェ最速タイムを奪還した走りの中身だ。
アウディRS 3スポーツバック/セダンがマイナーチェンジを遂げた。中でも注目はノルトシュライフェ最速タイムを奪還した走りの中身だ。
Cセグメントのトップパフォーマンスモデル「アウディ RS 3スポーツバック/セダン」がマイナーチェンジ。ダイナミックな造形により磨きをかけたほか、より高いコーナリング性能を実現した。(GENROQ 2025年1月号より転載・再構成)

Audi RS 3

よりインパクトのある顔つきに進化

今回のマイナーチェンジでよりエッジの立った六角形シングルフレームグリルや専用のシグネチャーを備えたLEDを採用。より精悍な顔つきとなっている。
今回のマイナーチェンジでよりエッジの立った六角形シングルフレームグリルや専用のシグネチャーを備えたLEDを採用。より精悍な顔つきとなっている。

8月に本国ドイツで発表された「アウディ RS 3」のマイナーチェンジモデルに、スペイン・バルセロナ近郊の一般道とサーキットで試乗した。電動化を推進するアウディだけに、現行世代で5気筒ターボを搭載するモデルは最後になると噂されているが、果たして今回の改良でどれほどの進化を遂げたのだろう。

新型RS 3は、これまでと同様にセダンとスポーツバックをラインナップ。エクステリアは、よりエッジの立った六角形のシングルフレームや、左右の縦のブレードが特徴的なサイドエアインテークを持つ新デザインのフロントバンパー、RS専用シグネチャーを備えた新しいLEDヘッドライト、新デザインのリヤコンビランプ、オーバル形状のテールパイプと一体デザインの大型リヤディフューザーなどにより、一層ダイナミックなルックスに進化している。

インテリアも、12時の位置にレッドのマーカーを備えた、上下がフラットな新ステアリングホイールや、カーボンパネル、RSバケットシートなど、さらにスポーティな空間に仕立てられている。12.3インチのアウディバーチャルコクピットプラスは、新たにレブカウンター表示が加わり、出力とトルク、Gフォース、加速度、ラップタイムの表示も追加された。また6速MTモデルではシフトインジケーターがグリーン、イエロー、レッドの順に点灯するレーシングカースタイルとなるなど、楽しさが増している。

ノルトシュライフェ7分33秒123の実力

伝統の2.5リッター直5ターボは、最高出力が400PS、最大トルクは500Nmと従来どおりだが、エキゾーストシステムのフラップ制御を最適化し、よりエモーショナルなサウンドを実現している。最も進化したのはシャシー面だ。新型は、ブレーキトルクベクトリングとリヤ左右の駆動トルクを最適に配分するトルクスプリッター、電子制御スタビリティコントロール、RSスポーツサスペンションのアダプティブダンパーの統合制御を実現したのだ。

これにより、新型はコーナリング性能が向上。コーナリング初期のアンダーステアを抑えることで、エイペックスにより理想的なアングルで、より車速が乗った状態でアプローチ可能になり、コーナー脱出速度も向上した。その結果、新型はノルトシュライフェで、従来モデルを7秒上回る、7分33秒123というラップタイムを記録。クラス最速の座を奪還したのである。

今回の試乗は生憎の雨模様だったので、あまり断定的なことは言えないが、ひとつはっきりと言えるのは、今回新たに設定されたオプションタイヤ(ピレリPゼロR)のウエットグリップ性能が、相当に高いということ。路面に川ができてしまうような状況でも、優れた排水性能を発揮してくれるので、ワインディングロードを安心して走ることができた。

ドライビングに集中できるコクピット

そしてサーキットでは、新しいシャシー統合制御の恩恵をはっきりと感じることができた。今回走行したバルセロナ郊外の山間にあるパルクモートル・カステリョリは、アップダウンがキツく、下りながらのS字など、アンダーステアが出やすいコーナーがいくつもあるのだが、かなり攻めたスピードでコーナーに進入しても、ステアリングを切り込んだ分だけ、グイグイとノーズがインを向き、スムーズにエイペックスを捉えることができる。確かにアンダーステアはあるのだが、それが極限まで抑えられていて、ニュートラルステアにかなり近づいた印象である。

さらには、ステアリングを深く切り込めば、容易にオーバーステア状態に持っていくことも可能になり、これまで以上にハンドリングの自由自在度が高まっている。絶体的な速さも魅力的だが、とにかく運転してより楽しいクルマに仕上がっている。

ハッチバックとセダンの差は

ボディタイプは従来通り、セダンとスポーツバックをラインナップする。
ボディタイプは従来通り、セダンとスポーツバックをラインナップする。

スポーツバックとセダンの走りの差は、ほぼないと言っていい。リヤ周りの剛性や、重心高に微妙な違いはあるのだろうが、よほど鋭敏な感覚を持っているドライバーでなければ判らないだろう。実際車両重量は、どちらも1565kgで、0-100km/h加速は3.8秒、最高速度は290km/hとなっている。

ドイツにおける価格は、19%の付加価値税込みで、スポーツバックが6万6000ユーロ(約1090万円)、セダンはその2000ユーロ(約33万円)高だ。ちょっと高く感じるかもしれないが、その実力を鑑みれば十分にリーズナブルである。

REPORT/竹花寿実(Toshimi TAKEHANA)
PHOTO/AUDI AG.
MAGAZINE/GENROQ 2025年1月号

SPECIFICATIONS

アウディRS 3スポーツバック


ボディサイズ:全長4390 全幅1850 全高1435mm
ホイールベース:2630mm
車両重量:1565kg
エンジン:直列5気筒DOHC
総排気量:2480cc
最高出力:294kW(400PS)/5600-7000rpm
最大トルク:500Nm(51.0kgm)/2250-5600rpm
トランスミッション:7速AT
駆動方式:AWD
サスペンション形式:前マクファーソンストラット 後マルチリンク
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤサイズ:前265/30ZR19 後245/35ZR19
0-100km/h加速:3.8秒
最高速度:250km/h
車両本体価格:830万円

【問い合わせ】
アウディ コミュニケーションセンター
TEL 0120-598-106
https://www.audi.co.jp/

欧州でのデリバリーが開始された「アウディ RS 3」改良新型。進化型「トルク・スプリッター」を搭載し、走行性能の大幅アップを果たした。

ニュル新記録達成した改良新型「アウディ RS 3」の秘密「アップデートされたトルクスプリッターとは?」

アウディは「RS 3 スポーツバック」と「RS 3 セダン」改良新型のヨーロッパにおけるデリバリーをスタートした。デビューから3年を経たRS 3、内外装のリフレッシュに加えて、シャシーセットアップに広範囲に及ぶアップデートを実施。特にトルクスプリッターの改良により、サーキットでの走行性能が大幅な進化を果たしている。

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著者プロフィール

竹花 寿実 近影

竹花 寿実

1997年に美術大学卒業後、自動車雑誌『driver』スタッフとして業界入り。自動車情報サイト『Hobidas Auto…